VTuberデビュー! ~自分の声が苦手だったわたしが、VTuberになることになりました~ 

柚木ゆず

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第23話 病院から帰って(1)

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《ごめんなさい。ごめんなさい。声が出なくて、配信ができません》
「美月さんが謝ることはでありませんよ。それに、配信はできなくても問題ありません。ご自身のことを一番に考えてください」

 病院から帰ってすぐ田宮家さんにお邪魔して……。困らせちゃうと分かってたけど、ひとりでに出てきちゃって……。
 ボロボロ泣きながら謝ると、翔くんに首を振って微笑んでくれました。

《でも……。毎回の配信は大事で……。お顔のお披露目配信だって、すごく大事で……》
「美月さんの健康より大事なものなんてありません。配信の予定はどうとでもなりますよ。日を改めればいいだけですから、安心してご自身に意識を向けてください」
《…………はい。ありがとうございます》
「お礼を言うことでも、ありませんよ。……そうだ。せっかく来てくださったのですから、ゆっくりしていってください。ちょうど美味しいお菓子があるんですよ」

 翔くんはもう一回首を振ってくれて、今いる和室を出て、冷凍ミカンを持って来てくれました。

「四国にいる祖父が送ってきてくれたんです。よろしければどうぞ」
《ありがとうございます。いただきます》

 初めて食べる冷凍ミカンは、冷たくて、とっても甘い。
 冷たさと甘さと翔くんの優しさが、身体中に広がっていくのが分かりました。

《甘くて冷たくて、美味しいです》
「それはよかった。まだまだ沢山あります。お好きなだけ召し上げってくださいね」
《ありがとうございますっ。もう一個いただきます》

 お言葉に甘えちゃって2つ目をもらって、もぐもぐもぐ。優しさ、甘さ、冷たさを全身で感じて――

「美月さん、心配要りません。声はすぐ出るようになりますよ」

 ――2個めを食べ終えたとき、でした。翔くんが突然、そんなことを口にしたのでした。

((……………………))
「僕は、気休めで言っているのではありません。確信を持った上で、言っています」
《ど、どうして、そう思うんですか?》

 少し考えてみたけど、理由が分からない。分からないから、お尋ねしてみた。

「美月さん、こちらをご覧ください」
《は、はい》

 テーブルの上に置かれたタブレットを見てみると、『如月タミ』さんの――翔くんのSNSのアカウントが表示されていました。
 ???
 これが……。どうしたの、かな……?


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