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第3話 異常 クリストフ視点(8)

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「どうして急に暴露をしたんだ? 皆(みな)はそう思っているだろう? ……その理由は、ふとそこにある鏡を――鏡に映った自分の顔を、見てしまったからだ」

 俺はカフェテリアの隅にある調度品を一瞥し、肩を竦めて見せた。
 は……? 急に、理由を語り始めた……?

「その顔は、酷いものだった。まるで別人かと思ってしまうほどに、醜い顔だったんだ」
『『『『『………………』』』』』
「それで、ハッとなった。こうしてようやく、自分がどれほどのことをしているのかを悟るんだ」

 右の手で頬に触れ、肩をすくめる。そうやって全身を使って自嘲を表した俺は、左手で持っていた書類を一瞥した。

「だから――『このまま最後まで進んでしまえば、お前は完全に堕ちてしまう』『駄目だ、止まれ』『認めて罪を償うべきだ』。あっという間にこういった考えで埋め尽くされて、そう決めたんだよ」
『『『『『………………』』』』』
「全てを白状したら、大変なことになってしまうだろう。けれどそれ以上に、このまま心が『醜悪な化け物』となるのが怖かったんだ」
『『『『『………………』』』』』
「最後の最後で裏切ってしまい、ベルには悪いことしたと思っている。だが、どうしてもこれ以上前には進めなかった。……それが、土壇場で何もかもを白状した事由だよ」

 ……………………そうか。そういうことか……。そういうことなんだ……!

 奇行を正当化させるために! 周囲にあれこれと詮索されないように!

 俺の口は、こうして経緯を言い広めたんだ……!!

((なぜだぁぁ!? なんでこんなことになるんだ!?))

 何度考えても分からない!! 分からないっっ!!

((何がどうなってるんだ!? 俺にそんなつもりはなくて! 罪悪感も微塵も抱いていないのにっ! おかしなものを食べてもいないのにっ!!))

 どうして!? こんなことを言っているん――

「治安局の皆様、お待たせしました。告白は全て終わりましたので、我が屋敷に向かいましょう」

 うああああああああああああああああああ!!
 買収癒着の証拠が見つかったら大変なことになるのに! フルールに関する問題の比にならないことが起きてしまうのに!!
 俺はにこやかに促し、きびきびと治安局の馬車に乗り込んで――

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