こちら、あやかし村おこし支援課

柚木ゆず

文字の大きさ
50 / 62

第13話 賑 賑?(9)

しおりを挟む
「? 僕に何の用ですか?」

 天地村では満月の日に特別なイベントが開かれる、澄み切った水が美しい月下湖。そこに居る帽子を被った少年に――犯人に対して「天地屋の者です」と声をかけると、彼は不思議そうに目をぱちぱちとさせた。
 まるで、窃盗なんてしていないかのように。

((この目。あの時の子と同じ目をしている……))

 かつてウチのレストランで、お土産コーナーで販売している特製の調味料を盗んだ人が居た。
 その子が盗む様子は、偶々わたしが目撃していた。盗んでいて、その店の人間が確認しにきたのに、動揺ひとつなかったのだ。

((犯罪をしているって自覚がない? それとも、万引きに慣れて罪悪感を抱かなくなってる? いずれにせよ、恐ろしい))

 さっきの大学生とは別のベクトルで危険。村のためだけじゃなく、他の店のためにもどうにかしないといけない。

「?? ??? 皆さん、僕を見てる? 僕がどうかしましたか?」
「単刀直入に言いますね? 天地屋で万引きをしましたよね?」
「僕が!? しっ、してませんよっ! してないです!」
「いいえ、しています。記念硬貨とボールペンをポケットに入れる場面を、ウチのスタッフのひとりが目撃しています」

 一帯を網羅できる目全さんの目は、誤魔化せなかった。
 車の中には記憶紙さんが出してくれたものがあるけれど、残念ながらアレを証拠にはできない。違うやり方で認めさせる。

「な、なにかの間違いです……っ! 天地屋さんにはいったけどっ、何も買わずに出てきましたもんっ! 盗んでなんていませんっ!」
「そうですか。でしたら――」
「盗んでいたらっ、盗んだものを持っているはずですよね!? 調べていいですよ! 隅々まで調べてみてください!」

 少年はかけていたバッグを地面に置き、両手を広げた。

「………………」
「どうしたんですか店員のお姉さんっ! 僕が盗ってるんでしょうっ? 調べてみてくださいよっ!」
「じょ、嬢ちゃん……?」
「もちろん、調べさせていただきます。安倍さんお願いします」

 こういった行為は、同性が行う方がいい。同じ男性である安倍さんにお願いして、バッグの中、ポケットの中、シャツとズボンの中まで調べた。

「あ、明彦。どうだった……?」
「どちらも見当たりませんでした」
「だから言ったでしょ!? 何もやってないのに万引き犯って決めつけるなんてひどいよ! 許せない!! 言い広めてやるからね!!」

 少年の態度が一変。顔を真っ赤にして怒り出し、目を吊り上げながら安倍さんが取り出したスマホを指差したのだった。

「たまたま鳥の声を録音してたおかげで、さっきのやり取りは全部残ってるからね! 言い逃れできないよ!!」
「そう。そうなのね」
「な、なんだよ!! なんでそんなに落ち着いてるんだよ!!」
「なんでかって? 想定内だからよ」

 自信満々に調べさせるから、おかしいと思った。
 自ら隅々まで確認させたのは、盗んだものはとっくに手元を離れていたからだったのね。

「そこにあるバッグにもポケットの中にもないのは、『途中で誰かに渡した』か『途中で隠した』から。そうなんでしょう?」

 驚影さんの証言によると、後者はほぼない。とはいえ、それは100ではない。

「はっ、はあ!?」
「元々そういう計画だったのか、捕まりそうな気配を感じたのか。直近で渡している、そうでしょう?」
「違うよっ!! 誤魔化そうとして適当なことを言ってるんでしょ!!」
「それこそ違う。そんなに否定をするのなら、これからそれを証明してあげるわ」

 あの絶対的な証拠を使えない。少年は否認している上に、攻める隙もない。
 そんな状況下でも、追い詰めることができる。なぜならば――

「? 嬢ちゃん?」

 ――この場には、心問答さんがいるのだから。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

幽縁ノ季楼守

儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」 幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。 迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。 ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。 これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。 しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。 奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。 現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。 異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー 様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。 その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。 幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。 それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。

私の守護霊さん

Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。 彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。 これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。

もっと早く、伝えていれば

嶌田あき
キャラ文芸
 記憶から生まれ、1ヶ月で消える運命のあやかし・憶。鎌倉の古い喫茶店「波音堂」で目覚めた彼が最初に出会ったのは、17歳の高校生・夏希だった。  同じ17歳なのに、夏希には18歳の誕生日が来る。憶には来ない。  憶は、大切な人を失った人々を「記憶の渚」へ導き、故人の記憶と対話する手伝いをしている。言えなかった恋の告白、12年越しのさよなら、認知症の夫への思い――4つの「弔い」を通じて、憶は生きること、死ぬこと、記憶することの意味を知っていく。  そして最後、憶は自分の正体を知る。憶は、夏希の母の記憶から生まれたのだと。 「もっと早く、伝えていれば」と後悔する人々に寄り添いながら、憶自身も夏希との限られた時間の中で、大切な気持ちを伝えようとする。  1ヶ月後、憶は静かに光の粒子となって消えていく。でも憶の存在は、夏希の記憶の中で永遠に生き続ける――。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

あやかし帝都の婚姻譚 〜浄癒の花嫁が祓魔の軍人に溺愛されるまで〜

鳴猫ツミキ
キャラ文芸
【完結】【第一章までで一区切り】時は大正。天羽家に生まれた桜子は、特異な体質から、家族に虐げられた生活を送っていた。すると女学院から帰ったある日、見合いをするよう命じられる。相手は冷酷だと評判の帝国陸軍あやかし対策部隊の四峰礼人だった。※和風シンデレラ風のお話です。恋愛要素が多いですが、あやかし要素が主体です。第9回キャラ文芸大賞に応募しているので、応援して頂けましたら嬉しいです。【第一章で一区切りで単体で読めますので、そこまででもご覧頂けると嬉しいです】。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

紅蓮の鬼神と華印の乙女〜神隠しにあった穢れモノの私が、最愛に出逢うまで〜

五城楼スケ(デコスケ)
キャラ文芸
──人とあやかしたちが混在する、大正時代に似たもう一つの世界。 名家、天花寺(てんげいじ)家の娘である琴葉は14歳の頃、十日もの間行方不明になったことがあった。 発見された琴葉にその間の記憶は一切なく、そればかりか彼女の髪の毛は雪のように真っ白に変わってしまっていた。 そんな琴葉を家族や使用人たちは、人目に付かないよう屋敷の奥深くに隠し、”穢れモノ”と呼び虐げるようになった。 神隠しに遭った琴葉を穢らしいと嫌う父からは使用人より下に扱われ、義母や双子の義姉弟たちからいじめられていた琴葉が、十六歳の誕生日を迎える直前、ある転機が訪れる。 琴葉が十六歳になった時、天花寺家の遺産を琴葉が相続するように、と亡くなった母が遺言で残してくれていたのだ。 しかし、琴葉を狙う義兄と憎む義姉の策で、琴葉は絶体絶命の危機に陥ってしまう。 そんな彼女を救ったのは、どこか懐かしい気配を持つ、妖しくも美しい青年だった。 初めて会うはずの美青年は、何故か琴葉のことを知っているようで……?! 神聖な実がなる木を守護する家門に生まれながら、虐げられてきた少女、琴葉。 彼女が十六歳の誕生日を迎えた時、あやかしが、陰陽省が動き出す──。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...