58 / 62
第14話 急変(6)
しおりを挟む
「――以上が、操形さんの記憶です」
頭に流れ込んできた情報を、そのまま口にした。
「あやかしを吸い込める、日本刀……。その柄は、紫色をしていましたか?」
「はい、紫色でした。安倍さんは、アレの正体を――『封刃(ふうじん)』だと、ご存じなのですね?」
あやかしや幽霊など霊的な存在を斬ると封印できる、平安時代にはすでに存在していた刀。
封刃の力を発動させるには、対象を完全に斬る必要がある。だから操形さんは吸収されずに、あやかしのまま倒れていた。
今のわたしは操形さんの記憶を共有できるおかげで、すんなり理解できた。
「ええ、安倍家に伝わる書物に記されていました。まさか、封刃の封印が解かれていただなんて」
封刃を偶然手にした平凡な少年が強大な怨霊との戦いに勝ったという記録があるように、あの刀には持ち主の身体能力を跳ね上げるという力もある。
その少年は正しく使ったものののちの人間が身体能力の強化に魅了され、堕ちて人斬りになり多くの人が犠牲になったという事件が発生した。その件を重く見て、安倍さんのご先祖様が京のあやかしと仲良くなっていたこともあり、持ち主が京都のとある神社に奉納した――という出来事を、操形さんはその目で見ている。
「神社の継承者が堕ちる性質を持っていたのか、あやかしを悪と判断して滅ぼそうとしているのか。両方なのか? 定かではありませんが、いずれにせよ……」
「皆さんが危ない、ですね」
快楽を求めていても、正義の感情で動いていても、心問答さん達が狙われてしまう。あの男を追いかけて、捕まえないといけない。
「全員の現在地を確認しま――心問答さんからメッセージが届いていました。4グループ全て、役場にいるそうです」
「間に合いましたか。では向かいましょう、その男が来る前に」
器を回収している暇はない。わたし達は車に飛び乗り、心問答さんに連絡をしながら満月が照らす道を進んで――さっきまで自分達が居た、天地村役場に戻ってきた。
「嬢ちゃん!」
「心問答さん、皆さんも、外に出ないでください。あの男の相手は、安倍さんがしてくださるそうです」
安倍さん曰く、みなさんは封刃と相性が非常に悪い。数で上回っているとしても。
今渡り合えるのは、陰陽師の力だけだそうです。
「いやしかし、だな……。お前に何かあったら……」
「皆さんが泣いてくださるでしょうし、せっかく盛り上がってきた村が滅茶苦茶になってしまいます。必ず勝ちますよ」
安倍さんは穏やかに微笑み、ネクタイを緩めて懐からお札を取り出す。そうして夜のとばりの下で、侵入者を待っていると――
「ここか。見つけたぞ」
――やがて、操形さんの記憶で見た男が現れたのでした。
頭に流れ込んできた情報を、そのまま口にした。
「あやかしを吸い込める、日本刀……。その柄は、紫色をしていましたか?」
「はい、紫色でした。安倍さんは、アレの正体を――『封刃(ふうじん)』だと、ご存じなのですね?」
あやかしや幽霊など霊的な存在を斬ると封印できる、平安時代にはすでに存在していた刀。
封刃の力を発動させるには、対象を完全に斬る必要がある。だから操形さんは吸収されずに、あやかしのまま倒れていた。
今のわたしは操形さんの記憶を共有できるおかげで、すんなり理解できた。
「ええ、安倍家に伝わる書物に記されていました。まさか、封刃の封印が解かれていただなんて」
封刃を偶然手にした平凡な少年が強大な怨霊との戦いに勝ったという記録があるように、あの刀には持ち主の身体能力を跳ね上げるという力もある。
その少年は正しく使ったものののちの人間が身体能力の強化に魅了され、堕ちて人斬りになり多くの人が犠牲になったという事件が発生した。その件を重く見て、安倍さんのご先祖様が京のあやかしと仲良くなっていたこともあり、持ち主が京都のとある神社に奉納した――という出来事を、操形さんはその目で見ている。
「神社の継承者が堕ちる性質を持っていたのか、あやかしを悪と判断して滅ぼそうとしているのか。両方なのか? 定かではありませんが、いずれにせよ……」
「皆さんが危ない、ですね」
快楽を求めていても、正義の感情で動いていても、心問答さん達が狙われてしまう。あの男を追いかけて、捕まえないといけない。
「全員の現在地を確認しま――心問答さんからメッセージが届いていました。4グループ全て、役場にいるそうです」
「間に合いましたか。では向かいましょう、その男が来る前に」
器を回収している暇はない。わたし達は車に飛び乗り、心問答さんに連絡をしながら満月が照らす道を進んで――さっきまで自分達が居た、天地村役場に戻ってきた。
「嬢ちゃん!」
「心問答さん、皆さんも、外に出ないでください。あの男の相手は、安倍さんがしてくださるそうです」
安倍さん曰く、みなさんは封刃と相性が非常に悪い。数で上回っているとしても。
今渡り合えるのは、陰陽師の力だけだそうです。
「いやしかし、だな……。お前に何かあったら……」
「皆さんが泣いてくださるでしょうし、せっかく盛り上がってきた村が滅茶苦茶になってしまいます。必ず勝ちますよ」
安倍さんは穏やかに微笑み、ネクタイを緩めて懐からお札を取り出す。そうして夜のとばりの下で、侵入者を待っていると――
「ここか。見つけたぞ」
――やがて、操形さんの記憶で見た男が現れたのでした。
20
あなたにおすすめの小説
幽縁ノ季楼守
儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」
幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。
迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。
ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。
これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。
しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。
奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。
現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。
異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー
様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。
その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。
幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。
それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
私の守護霊さん
Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。
彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。
これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。
もっと早く、伝えていれば
嶌田あき
キャラ文芸
記憶から生まれ、1ヶ月で消える運命のあやかし・憶。鎌倉の古い喫茶店「波音堂」で目覚めた彼が最初に出会ったのは、17歳の高校生・夏希だった。
同じ17歳なのに、夏希には18歳の誕生日が来る。憶には来ない。
憶は、大切な人を失った人々を「記憶の渚」へ導き、故人の記憶と対話する手伝いをしている。言えなかった恋の告白、12年越しのさよなら、認知症の夫への思い――4つの「弔い」を通じて、憶は生きること、死ぬこと、記憶することの意味を知っていく。
そして最後、憶は自分の正体を知る。憶は、夏希の母の記憶から生まれたのだと。
「もっと早く、伝えていれば」と後悔する人々に寄り添いながら、憶自身も夏希との限られた時間の中で、大切な気持ちを伝えようとする。
1ヶ月後、憶は静かに光の粒子となって消えていく。でも憶の存在は、夏希の記憶の中で永遠に生き続ける――。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
あやかし帝都の婚姻譚 〜浄癒の花嫁が祓魔の軍人に溺愛されるまで〜
鳴猫ツミキ
キャラ文芸
【完結】【第一章までで一区切り】時は大正。天羽家に生まれた桜子は、特異な体質から、家族に虐げられた生活を送っていた。すると女学院から帰ったある日、見合いをするよう命じられる。相手は冷酷だと評判の帝国陸軍あやかし対策部隊の四峰礼人だった。※和風シンデレラ風のお話です。恋愛要素が多いですが、あやかし要素が主体です。第9回キャラ文芸大賞に応募しているので、応援して頂けましたら嬉しいです。【第一章で一区切りで単体で読めますので、そこまででもご覧頂けると嬉しいです】。
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
紅蓮の鬼神と華印の乙女〜神隠しにあった穢れモノの私が、最愛に出逢うまで〜
五城楼スケ(デコスケ)
キャラ文芸
──人とあやかしたちが混在する、大正時代に似たもう一つの世界。
名家、天花寺(てんげいじ)家の娘である琴葉は14歳の頃、十日もの間行方不明になったことがあった。
発見された琴葉にその間の記憶は一切なく、そればかりか彼女の髪の毛は雪のように真っ白に変わってしまっていた。
そんな琴葉を家族や使用人たちは、人目に付かないよう屋敷の奥深くに隠し、”穢れモノ”と呼び虐げるようになった。
神隠しに遭った琴葉を穢らしいと嫌う父からは使用人より下に扱われ、義母や双子の義姉弟たちからいじめられていた琴葉が、十六歳の誕生日を迎える直前、ある転機が訪れる。
琴葉が十六歳になった時、天花寺家の遺産を琴葉が相続するように、と亡くなった母が遺言で残してくれていたのだ。
しかし、琴葉を狙う義兄と憎む義姉の策で、琴葉は絶体絶命の危機に陥ってしまう。
そんな彼女を救ったのは、どこか懐かしい気配を持つ、妖しくも美しい青年だった。
初めて会うはずの美青年は、何故か琴葉のことを知っているようで……?!
神聖な実がなる木を守護する家門に生まれながら、虐げられてきた少女、琴葉。
彼女が十六歳の誕生日を迎えた時、あやかしが、陰陽省が動き出す──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる