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第4話 目を覚ましたら、驚きが待っていた ベアトリス視点(1)

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「…………ねえ。ねえ、ユベール」
「ん? どうしたんだ、ベアトリス?」
「…………どうしたんだ、じゃないよ。ここはどこっ!?」

 着いたぞ。起きてくれ、ベアトリス――。そんな声と共に優しく揺すられ、目を覚ました私は馬車から降りた。
 そうしたら目の前にあったのは、

 大豪邸。

 以前住んでたルーンネル邸の、2倍以上。ナルテウス侯爵家邸よりも広い大邸宅が、そこに建っていた。

「8時間も眠ってしまっていて、起きたら大豪邸がある敷地の中。……どなたの所有物なのっ?」

 この建物の作りからするに、今いるのはアンドレがいる国祖国じゃなくて隣国。どこの、誰の邸なの……!?

「これはこの国の侯爵・ライン卿の前邸宅で、今は俺の邸だ。ベアトリスを迎えるために購入し譲り受け、改装を施しておいたんだよ」
「…………え? この建物、ユベールのものなの?」
「ああ。その証拠に、ほら。見知った顔が出迎えてくれているだろう?」

 唖然となっていると玄関部分の扉が開き、マノンさん達――見覚えのあるフィル家の使用人の方々が、「おかえりなさいませ坊ちゃま」「お久しぶりですお嬢様……っ」と挨拶をしてくださった。

「アンドレの問題は、同国内にいた方がやりやすいんだ。そのため解決までは――一週間程度はここで暮らすことになって、解決するまで外出しない方がいい。だから出歩かなくても伸び伸び過ごせるように、用意しておいたのさ」
「………………私のための、住居なのね、これ……。なんか、ごめんなさい……」

 何千万、ううん。何億よね、この邸。
 うちは商会を持っているから、大金や大金が動く話はそれなりに耳にしてきたけど……。こんな使い方は初めてで、なんとなく謝ってしまった。

「俺がやりたくてやったことで、ベアトリスは気にしなくていいんだよ。ああそれと、他にも色々と用意してあるものがあるんだ。今は…………リオン、何時だったかな?」
「午前8時41分でございます」
「ありがとう。では、朝食を摂ってからがいいな。あとで紹介して回るから、楽しみにしておいてくれ」

 彼は嬉しくなってしまうことと再度呆然となることをさらっと告げ、私は手を優しく引っ張られて食堂へと移動する。
 そして――。
 やがて始まった朝食でも、私は驚く羽目になるのでした――。

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