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第7話 忘れていた人と、忘れていなかった人 ベアトリス視点(2)

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「ベアトリスの誕生日は、今日。だがこの世に生まれたのは、午前0時47分。だからそのタイミングに合わせて、お祝いをしようとしていたのさ」

 それはあまりに予想外で、イチゴのケーキを見たままで固まっていると――。クラッカーの音色と共に、ユベールの優しい含み笑いがやって来た。

「ベアトリス、18歳の誕生日おめでとう。この日を一緒に迎えられることができて、嬉しくてたまらない」
「……うん、私も……っ。大切な日をユベールと迎えられて、真っ先にお祝いしてもらえて、幸せです」

 私達の国では18歳で成人となるため、18の誕生日は人生の中で重要な日の一つになっている。そんな日に大好きな人が傍に居てくれるのだから、顔が大きく綻んでしまう。

「このケーキって。ユベールの手作り、だよね? いつの間に用意してくれたの?」
「主に、昨日だな。昨日スポンジを焼いて1日寝かせていて、さっき――ベアトリスが入浴している際に、デコレーションを施しておいた」
「……ユベールさんは、相変わらずの手際の早さですね……。私のために頑張って演出してくれて、ありがとうございます」
「これもまた、俺がやりたくてやっていることだ。こちらこそ、俺をそういった気持ちにしてくれてありがとう」

 ユベールは赤面してしまう言葉を当然のように口にし、そうしてくれたあと――。懐に右手を入れて、そこから長方形の箱を取り出した。

「誕生日といえば、ケーキとプレゼント。開けてみてくれ」
「えっ? う、うんっ。え、えっと………………わぁ……っ。綺麗……っ」

 彼からの、誕生日プレゼント。それは、ダイヤモンドが散りばめられたルビーのネックレス。私の誕生石があしらわれた、豪華なアクセサリーだった。

「先日プレゼントを探していた際に見つけ、一目で気に入ったんだ。よかったら受け取って欲しい」
「ユベールの想いが沢山詰まったものだものっ、受け取らせてもらうわっ。……ユベール、お願いします」

 私は大事に箱から取り出し、ネックレスを渡して背を向ける。
 これも私達の国独特の文化で、記念日にアクセサリー類をいただいた時は、その人につけてもらうようになっている。そのため優しい手つきでネックレスをつけてくれて、私の胸元が鮮やかになった。

「このプレゼントは、いつも身につけさせてもらうね。一生大切にします」
「そうしてもらえると、嬉しい。……やはり、ベアトリスに似合うな」

 ユベールの瞳が柔らかく細まり、それによって体内では『幸せ』の感情が更に増えていく。
 ここ数年の誕生日は、思い出したくもない嫌な思い出で。誕生日は嫌いになってたけど、今は違う。大好きで、ずっとずっと忘れられない思い出になった。

「……ユベールは次々と、私を塗り替えていってくれるね。これからも、私を貴方の色で染めていってください」
「ああ、もちろんそうさせてもらう。18歳は――これ以降はいつまでも、いい思い出のみをもたらすと約束しよう。覚悟しておいてくれ」
「んっ。覚悟してます」

 見つめ合っていた私達は同じタイミングで微笑み、今日もう何度もしているけど、したくなるのだから仕方がない。私達は口づけを交わし、幸せな夜を過ごしたのでした――。

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