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第1話 不思議な行動と事実 ヴァネッサ視点(1)

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「…………あれ? 今のは……」
「ん? ヴァネッサ、どうしたのだ? あそこに、なにかあるのか?」
「…………はい。シメオンとヨランドが今、走ってあちらに――お屋敷の裏に、二人で消えていったんです。どうしたのでしょうか……?」

 それは、アルーザー子爵邸に到着してすぐのことでした。お父様に続いて馬車を降りていると、視界の隅に幼馴染の姿が映ったのでした。

「シメオン君とヨランド君が、二人だけで? う~む、もうすぐパーティーが始まる時間だ。見間違いではないのか?」
「いいえお父様。確かに、シメオンとヨランドが走っていきました。間違いありません」

 二人の姿が見えたのは、走っていたこともあって一瞬でした。ですがしっかりと見えていて、見間違いではないと断言できます。

「そうか、なら何かしら理由があるのだろうな。シメオン君もヨランド君も、用事が終わったら戻ってくるだろう。ヴァネッサ、我々はユーグ達に挨拶に行こう」
「……………………」
「? ヴァネッサ?」
「……………………すみませんお父様。わたしは二人を追いかけます」

 お屋敷の裏に消えていく際のシメオンの顔は酷く動揺していて、ヨランドの顔はとても怒っていました。
 二人だけの内緒話を覗くのは、いくら幼馴染でもやってはいけないこと。ですがあの様子の二人を放ってはおけず、わたしはお父様と別れてシメオンとヨランドのあとを追いました。

((あの表情、ただごとではありません……。もしかして、パトリスくんかリーズちゃんに何かあったのしょうか……?))

 でもパトリスくんに問題が起きていたら、パトリスくんがいるこのお屋敷は騒がしくなっているし……。リーズちゃんに問題が起きたのなら、ヨランドもレオナルドおじさんもココに来てはいないはず。

((見当が、つきませんね……。どうなっているのでしょうか……?))

 原因が分からないまま追いかけて、

「おっ、落ち着いてくれよっ! ヨランドっ、お互い落ち着こうっ!」

 ちょうど、お屋敷の角を曲がろうとしていた時でした。シメオンの声が聞こえてきて、わたしは足を止めました。

((ここに居たら、二人の声が聞こえますね。いったい……なにがあったのでしょか……?))

 盗み聴きをしてしまって、ごめんなさい。わたしにできることがあったら何でも協力するから、許してください。
 心の中で二人に謝罪を行いながら、次の声が聞こえてくるのを待って――

((………………。え?))

 ――息を殺して聞き耳を立てていたわたしは、おもわず唖然となってしまいます。
 なぜならば…………。


「どうなっているのシメオン!? アナタと婚約するのはっ、わたくしになるんじゃなかったの!?」


 続いて……。
 ヨランドの、そんな声が聞こえてきたからです……。

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