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第6話 予想外のラッキー シメオン視点(1)
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「………………な、なんですって……? 父上が、知っている……!? 本当は、俺がヴァネッサではなくヨランドを好きだって!? ば、バカな……。あ、あり得ない……」
だって……。俺は一度も、父上の前で――母上、パトリス、従者、使用人、友人、誰の前でも本心は出してないんだ! 最大級の注意を払っていて、そういった『臭い』すら出していないんだぞ!
なのに、どうやって知れるんだ……?
「わ、分かりません……。しんじ、られません……。なぜ、そんなことに……?」
「…………ふぉっふぉっふぉ。シメオン様に質問ですぞ。ヨランド・サレティスに好意を抱き始めた切っ掛けは、ご自身ではありませんな? ヨランド・サレティスの行動、発言によって、『とても幸せな気持ち』になり、始まったものですな?」
「え、ええ、そうです。……彼女は、彼女だけは俺の実力に気が付き、更には本心で称えてくれた。そこから、気持ちに変化が起きました」
「ではもう一つ。ヨランド・サレティスと二人きりで過ごす機会も、何度もありましたな? その際は、非常に大きな幸せを感じておりましたな?」
「は、はい。家の都合で、あくまで幼馴染として会う機会は何度もありました。その際には、いつも感じておりました」
最愛の人と、誰にも邪魔をされずに過ごせるんだ。そう感じないはずがない。
「原因は、そこですな。貴方様は隠しているつもりでも、喜びを隠しきれていなかった。それによりお父上は、『ヴァネッサ大好きは嘘』――この振る舞いはヨランドと婚約できるようにするための芝居だと、思われていたみたいですなぁ」
「いっ、いやいやっ、それはあり得ない! 計画の露見は失敗に直結しますでしょうっ? 最悪の事態を防ぐべく、必死になって漏れないようにしていた――…………。それが……できて、いなかったのか……」
完璧に隠していたという自負がある。だが、この方の力は本物。ここだけ間違っているはずがないし、それなら納得がいく。
それが、真実……。
「なんてことだ……。ずっと、勘違いをしていた……。俺は手のひらの上で踊らせていたんじゃなくて……。一年間、父上の手のひらの上で踊らされていたのか……」
「残念ながら、そうなってしまいますなあ。ふぉっふぉっふぉ、ですが貴方様は運がよろしい。挽回のチャンスがございますよ」
! なんだって!?
「そんな方法があるんですか!? タイムリミットまであと2日しかないのに!? ヴァネッサとの婚約を解消してヨランドと婚約できるようになるんですか!?」
「そう、天国への道はまだ残っておりますのじゃ。なあに、その方法はとてもシンプル。お父上の性質を逆手に取りますのじゃ」
「ち、父上の性質を、逆手……? ど、どうすればいいんですかっ!? ぐっ、具体的に教えてください!!」
水晶を置いている台に手をつき、身を乗り出して顔を覗き込む。そうすると占い師は、皺のある唇をニヤッと開き――
「『ヨランド・サレティスのことは本当に嫌いだった』。明後日が来るまでにヨランド・サレティスに対してそう映るような振る舞いをして、お父上に迷いを生ませたらいいのですじゃ」
――自信たっぷりに、そう言ったのだった。
だって……。俺は一度も、父上の前で――母上、パトリス、従者、使用人、友人、誰の前でも本心は出してないんだ! 最大級の注意を払っていて、そういった『臭い』すら出していないんだぞ!
なのに、どうやって知れるんだ……?
「わ、分かりません……。しんじ、られません……。なぜ、そんなことに……?」
「…………ふぉっふぉっふぉ。シメオン様に質問ですぞ。ヨランド・サレティスに好意を抱き始めた切っ掛けは、ご自身ではありませんな? ヨランド・サレティスの行動、発言によって、『とても幸せな気持ち』になり、始まったものですな?」
「え、ええ、そうです。……彼女は、彼女だけは俺の実力に気が付き、更には本心で称えてくれた。そこから、気持ちに変化が起きました」
「ではもう一つ。ヨランド・サレティスと二人きりで過ごす機会も、何度もありましたな? その際は、非常に大きな幸せを感じておりましたな?」
「は、はい。家の都合で、あくまで幼馴染として会う機会は何度もありました。その際には、いつも感じておりました」
最愛の人と、誰にも邪魔をされずに過ごせるんだ。そう感じないはずがない。
「原因は、そこですな。貴方様は隠しているつもりでも、喜びを隠しきれていなかった。それによりお父上は、『ヴァネッサ大好きは嘘』――この振る舞いはヨランドと婚約できるようにするための芝居だと、思われていたみたいですなぁ」
「いっ、いやいやっ、それはあり得ない! 計画の露見は失敗に直結しますでしょうっ? 最悪の事態を防ぐべく、必死になって漏れないようにしていた――…………。それが……できて、いなかったのか……」
完璧に隠していたという自負がある。だが、この方の力は本物。ここだけ間違っているはずがないし、それなら納得がいく。
それが、真実……。
「なんてことだ……。ずっと、勘違いをしていた……。俺は手のひらの上で踊らせていたんじゃなくて……。一年間、父上の手のひらの上で踊らされていたのか……」
「残念ながら、そうなってしまいますなあ。ふぉっふぉっふぉ、ですが貴方様は運がよろしい。挽回のチャンスがございますよ」
! なんだって!?
「そんな方法があるんですか!? タイムリミットまであと2日しかないのに!? ヴァネッサとの婚約を解消してヨランドと婚約できるようになるんですか!?」
「そう、天国への道はまだ残っておりますのじゃ。なあに、その方法はとてもシンプル。お父上の性質を逆手に取りますのじゃ」
「ち、父上の性質を、逆手……? ど、どうすればいいんですかっ!? ぐっ、具体的に教えてください!!」
水晶を置いている台に手をつき、身を乗り出して顔を覗き込む。そうすると占い師は、皺のある唇をニヤッと開き――
「『ヨランド・サレティスのことは本当に嫌いだった』。明後日が来るまでにヨランド・サレティスに対してそう映るような振る舞いをして、お父上に迷いを生ませたらいいのですじゃ」
――自信たっぷりに、そう言ったのだった。
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