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第14話 変わる、変わる心 パトリス視点(1)
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僕にとってヴァネッサ姉さんは、特別な人。もっとも尊敬する人生の『先生』でした。
「君さ、気持ち悪いね」
「パトリス君って落ち着きすぎ。気味が悪い」
僕は昔からやけに大人びていて、特に中身と雰囲気が子どもっぽくないと言われていた。
幼い頃の僕にとってそれはなによりのコンプレックスで、いつも気にしないフリをしていたけれど、実はずっと悩んでいて……。ある日――10歳の頃に参加したパーティーで侯爵家の令息たちに面と向かって嗤われてしまい、それによってついに心が限界を迎えてしまい……。お屋敷に戻ってすぐ、部屋に閉じこもってしまった。
「……もう嫌だ……。どうして僕はこんななの……? この顔も性格も、大嫌いだ……!」
あの時は、涙が涸れるまで泣いた。
自分ことが大嫌いになって、このまま死んで別の人間に生まれ変わりたいと思うようになっていて――。
でも。自ら命を絶つ時が、訪れることはなかった。
「あのねパトリスくん。わたしはそんなパトリスくんが大好きで、自慢の弟だよ」
自分への認識が変わり始めたのは、扉越しに聞こえてきた言葉――状況を知り駆け付けてくれた、ヴァネッサ姉さんの言葉が切っ掛けだった。
「自慢の……? 嘘だ……。どう、して…………そう思うん、ですか……?」
「どんなことにでも落ち着いて対応できてしまえる。そんな子どもって、どこにもいないんだよ。でね、パトリスくん。その『いない』というのは異常なことじゃないの。とってもすごいこと、誇れる長所なんだよ」
「え……。誇れる……?」
「だって周りの子ができないことを、自分だけができてしまえるんだよ? 自分だけがテストで100点満点を取れるようなことなんだよ? とってもすごいこと、だと思わない?」
「………………そ、そうですね……。思い、ます……」
「だから、パトリスくんは自慢の弟。見習いたいところが沢山ある、とっても素敵な男の子なんだよ」
それまで『自分だけ』は、マイナスなことだと思い込んでしまっていた。
でも姉さんがかけてくれた言葉によって、そうじゃないと気付けた。その日から自分に自信を持てるようになった。
なので僕にとってヴァネッサ姉さんは、『先生』。
あの頃も今もその先もずっと。そうであり続ける、と思っていたのだけど――
「君さ、気持ち悪いね」
「パトリス君って落ち着きすぎ。気味が悪い」
僕は昔からやけに大人びていて、特に中身と雰囲気が子どもっぽくないと言われていた。
幼い頃の僕にとってそれはなによりのコンプレックスで、いつも気にしないフリをしていたけれど、実はずっと悩んでいて……。ある日――10歳の頃に参加したパーティーで侯爵家の令息たちに面と向かって嗤われてしまい、それによってついに心が限界を迎えてしまい……。お屋敷に戻ってすぐ、部屋に閉じこもってしまった。
「……もう嫌だ……。どうして僕はこんななの……? この顔も性格も、大嫌いだ……!」
あの時は、涙が涸れるまで泣いた。
自分ことが大嫌いになって、このまま死んで別の人間に生まれ変わりたいと思うようになっていて――。
でも。自ら命を絶つ時が、訪れることはなかった。
「あのねパトリスくん。わたしはそんなパトリスくんが大好きで、自慢の弟だよ」
自分への認識が変わり始めたのは、扉越しに聞こえてきた言葉――状況を知り駆け付けてくれた、ヴァネッサ姉さんの言葉が切っ掛けだった。
「自慢の……? 嘘だ……。どう、して…………そう思うん、ですか……?」
「どんなことにでも落ち着いて対応できてしまえる。そんな子どもって、どこにもいないんだよ。でね、パトリスくん。その『いない』というのは異常なことじゃないの。とってもすごいこと、誇れる長所なんだよ」
「え……。誇れる……?」
「だって周りの子ができないことを、自分だけができてしまえるんだよ? 自分だけがテストで100点満点を取れるようなことなんだよ? とってもすごいこと、だと思わない?」
「………………そ、そうですね……。思い、ます……」
「だから、パトリスくんは自慢の弟。見習いたいところが沢山ある、とっても素敵な男の子なんだよ」
それまで『自分だけ』は、マイナスなことだと思い込んでしまっていた。
でも姉さんがかけてくれた言葉によって、そうじゃないと気付けた。その日から自分に自信を持てるようになった。
なので僕にとってヴァネッサ姉さんは、『先生』。
あの頃も今もその先もずっと。そうであり続ける、と思っていたのだけど――
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