わたしから婚約者を奪った幼馴染が、顔を真っ赤にして怒鳴り込んで来た

柚木ゆず

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第13話 決行~涙の別れ~ 俯瞰視点(4)

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「ぐあっ!? お前達!? なにをするっ!?」

『…………そう。けれど兄さん、それは不可能よ』。そう、クラハが発した直後のことでした。激昂していたファビアンは、突如として二人の使用人に組み伏せられてしまったのでした。

「ケヴィンっ、ニックっ、なにをやっている!! 離せ!! 離せ!!」
「「……………………」」
「ケヴィン! ニック! なぜ止めない!? なぜこんな真似をする!!」
「それは、兄上はもう当主ではなくなったからですよ」

 反対や忠告に耳を傾けず、あげくこういった状況をもたらしたこと。そもそも以前から我が強い上にレベッカに甘く、何度も問題が起きていたこと。
 それらによって我慢の限界となり、突然の当主交代は大なり小なりダメージがあるため躊躇っていましたが、ついに踏み切ったのです。

「数秒前にアランがザスワーズ家の当主になり、兄さんは『家に害をもたらすただの長男』になった。だから取り押さえてもらい、兄さんの指示に誰も従わないのよ」
「っ、私は父上から当主に任命されたのだぞ!! 父上の遺志を踏みにじる気か!!」
「踏みにじっているのは貴方の方だ!! ……と返しても、認めることも省みることもないだろう。なので、もう結構です」
「っ、なんだと――なっ!? なにをするっ!? どこへを連れていくつもりだ!?」
「兄さんは、居るだけで害悪となる人間だもの。表舞台から降りて、大人しくしていてもらうわ。一生ね」

 できることなら二人も、極力穏便に済ませたかった。しかしながらファビアンは納得せず暴れ続けるため、領地北部にある別邸に放り込んでおく――いわゆる軟禁状態に置いておくと、決まっていたのです。

「ふざけるな!! やめろ!! 離せっ!! はなせええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 そのため彼は四肢をバタつかせながら引きずられてゆき、レベッカを乗せようとしていた馬車に投げ込まれ、

「くそぉぉぉぁ!! くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」

 そんな絶叫を残して、その場から消え去ってしまったのでした。
 そして――

「ぁ、ぁぁ……。お父様……。い、いや……。わたくしは、いや……」
「すべては自業自得よ。さあ、ヴァレンタ伯爵邸に行きましょうか」

 ――残されたレベッカは逃走などを企てる可能性があったため、予定を早めて同棲を始めるよう話がついています。ですのでレベッカは叔父と叔母に脇を抱えられたまま馬車に乗せられてしまい、

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 耳を劈く大絶叫を残し、その場から消え去ってしまったのでした。


 そうして結局、ロバンと過ごさなくてはならなくなったレベッカは――
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