29 / 43
第13話 決行~涙の別れ~ 俯瞰視点(4)
しおりを挟む
「ぐあっ!? お前達!? なにをするっ!?」
『…………そう。けれど兄さん、それは不可能よ』。そう、クラハが発した直後のことでした。激昂していたファビアンは、突如として二人の使用人に組み伏せられてしまったのでした。
「ケヴィンっ、ニックっ、なにをやっている!! 離せ!! 離せ!!」
「「……………………」」
「ケヴィン! ニック! なぜ止めない!? なぜこんな真似をする!!」
「それは、兄上はもう当主ではなくなったからですよ」
反対や忠告に耳を傾けず、あげくこういった状況をもたらしたこと。そもそも以前から我が強い上にレベッカに甘く、何度も問題が起きていたこと。
それらによって我慢の限界となり、突然の当主交代は大なり小なりダメージがあるため躊躇っていましたが、ついに踏み切ったのです。
「数秒前にアランがザスワーズ家の当主になり、兄さんは『家に害をもたらすただの長男』になった。だから取り押さえてもらい、兄さんの指示に誰も従わないのよ」
「っ、私は父上から当主に任命されたのだぞ!! 父上の遺志を踏みにじる気か!!」
「踏みにじっているのは貴方の方だ!! ……と返しても、認めることも省みることもないだろう。なので、もう結構です」
「っ、なんだと――なっ!? なにをするっ!? どこへを連れていくつもりだ!?」
「兄さんは、居るだけで害悪となる人間だもの。表舞台から降りて、大人しくしていてもらうわ。一生ね」
できることなら二人も、極力穏便に済ませたかった。しかしながらファビアンは納得せず暴れ続けるため、領地北部にある別邸に放り込んでおく――いわゆる軟禁状態に置いておくと、決まっていたのです。
「ふざけるな!! やめろ!! 離せっ!! はなせええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
そのため彼は四肢をバタつかせながら引きずられてゆき、レベッカを乗せようとしていた馬車に投げ込まれ、
「くそぉぉぉぁ!! くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
そんな絶叫を残して、その場から消え去ってしまったのでした。
そして――
「ぁ、ぁぁ……。お父様……。い、いや……。わたくしは、いや……」
「すべては自業自得よ。さあ、ヴァレンタ伯爵邸に行きましょうか」
――残されたレベッカは逃走などを企てる可能性があったため、予定を早めて同棲を始めるよう話がついています。ですのでレベッカは叔父と叔母に脇を抱えられたまま馬車に乗せられてしまい、
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
耳を劈く大絶叫を残し、その場から消え去ってしまったのでした。
そうして結局、ロバンと過ごさなくてはならなくなったレベッカは――
『…………そう。けれど兄さん、それは不可能よ』。そう、クラハが発した直後のことでした。激昂していたファビアンは、突如として二人の使用人に組み伏せられてしまったのでした。
「ケヴィンっ、ニックっ、なにをやっている!! 離せ!! 離せ!!」
「「……………………」」
「ケヴィン! ニック! なぜ止めない!? なぜこんな真似をする!!」
「それは、兄上はもう当主ではなくなったからですよ」
反対や忠告に耳を傾けず、あげくこういった状況をもたらしたこと。そもそも以前から我が強い上にレベッカに甘く、何度も問題が起きていたこと。
それらによって我慢の限界となり、突然の当主交代は大なり小なりダメージがあるため躊躇っていましたが、ついに踏み切ったのです。
「数秒前にアランがザスワーズ家の当主になり、兄さんは『家に害をもたらすただの長男』になった。だから取り押さえてもらい、兄さんの指示に誰も従わないのよ」
「っ、私は父上から当主に任命されたのだぞ!! 父上の遺志を踏みにじる気か!!」
「踏みにじっているのは貴方の方だ!! ……と返しても、認めることも省みることもないだろう。なので、もう結構です」
「っ、なんだと――なっ!? なにをするっ!? どこへを連れていくつもりだ!?」
「兄さんは、居るだけで害悪となる人間だもの。表舞台から降りて、大人しくしていてもらうわ。一生ね」
できることなら二人も、極力穏便に済ませたかった。しかしながらファビアンは納得せず暴れ続けるため、領地北部にある別邸に放り込んでおく――いわゆる軟禁状態に置いておくと、決まっていたのです。
「ふざけるな!! やめろ!! 離せっ!! はなせええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
そのため彼は四肢をバタつかせながら引きずられてゆき、レベッカを乗せようとしていた馬車に投げ込まれ、
「くそぉぉぉぁ!! くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
そんな絶叫を残して、その場から消え去ってしまったのでした。
そして――
「ぁ、ぁぁ……。お父様……。い、いや……。わたくしは、いや……」
「すべては自業自得よ。さあ、ヴァレンタ伯爵邸に行きましょうか」
――残されたレベッカは逃走などを企てる可能性があったため、予定を早めて同棲を始めるよう話がついています。ですのでレベッカは叔父と叔母に脇を抱えられたまま馬車に乗せられてしまい、
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
耳を劈く大絶叫を残し、その場から消え去ってしまったのでした。
そうして結局、ロバンと過ごさなくてはならなくなったレベッカは――
12
あなたにおすすめの小説
『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします
卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。
ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。
泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。
「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」
グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。
敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。
二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。
これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。
(ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中)
もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!
婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~
ふわふわ
恋愛
侯爵令嬢アイシス・ヴァレンティンは、王太子レグナムの婚約者として厳しい妃教育に耐えてきた。しかし、王宮パーティーで突然婚約破棄を宣告される。理由は、レグナムの幼馴染で「聖女」と称されるエマが「アイシスにいじめられた」という濡れ衣。実際はすべてエマの策略だった。
絶望の底で、アイシスは前世の記憶を思い出す――この世界は乙女ゲームで、自分は「悪役令嬢」として破滅する運命だった。覚醒した氷魔法の力と前世知識を武器に、辺境のフロスト領へ追放されたアイシスは、自立の道を選ぶ。そこで出会ったのは、冷徹で「炎の公爵」と恐れられるエクウス・ドラゴン。彼はアイシスの魔法に興味を持ち、政略結婚を提案するが、実は一目惚れで彼女を溺愛し始める。
アイシスは氷魔法で領地を繁栄させ、騎士ルークスと魔導師セナの忠誠を得ながら、逆ハーレム的な甘い日常を過ごす。一方、王都ではエマの偽聖女の力が暴かれ、レグナムは後悔の涙を流す。最終決戦で、アイシスとエクウスの「氷炎魔法」が王国軍を撃破。偽りの聖女は転落し、王国は変わる。
**氷の令嬢は、炎の公爵に溺愛され、運命を逆転させる**。
婚約破棄の屈辱から始まる、爽快ザマアと胸キュン溺愛の物語。
本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。
しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。
そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。
このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。
しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。
妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。
それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。
それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。
彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。
だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。
そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。
婚約破棄? 国外追放?…ええ、全部知ってました。地球の記憶で。でも、元婚約者(あなた)との恋の結末だけは、私の知らない物語でした。
aozora
恋愛
クライフォルト公爵家の令嬢エリアーナは、なぜか「地球」と呼ばれる星の記憶を持っていた。そこでは「婚約破棄モノ」の物語が流行しており、自らの婚約者である第一王子アリステアに大勢の前で婚約破棄を告げられた時も、エリアーナは「ああ、これか」と奇妙な冷静さで受け止めていた。しかし、彼女に下された罰は予想を遥かに超え、この世界での記憶、そして心の支えであった「地球」の恋人の思い出までも根こそぎ奪う「忘却の罰」だった……
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
聖女の妹、『灰色女』の私
ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。
『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。
一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?
聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?
木山楽斗
恋愛
聖女であるアルメアは、無能な上司である第三王子に困っていた。
彼は、自分の評判を上げるために、部下に苛烈な業務を強いていたのである。
それを抗議しても、王子は「嫌ならやめてもらっていい。お前の代わりなどいくらでもいる」と言って、取り合ってくれない。
それなら、やめてしまおう。そう思ったアルメアは、王城を後にして、故郷に帰ることにした。
故郷に帰って来たアルメアに届いたのは、聖女の業務が崩壊したという知らせだった。
どうやら、後任の聖女は王子の要求に耐え切れず、そこから様々な業務に支障をきたしているらしい。
王子は、理解していなかったのだ。その無理な業務は、アルメアがいたからこなせていたということに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる