わたしから婚約者を奪った幼馴染が、顔を真っ赤にして怒鳴り込んで来た

柚木ゆず

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第15話 遅すぎた決断 俯瞰視点(4)

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「………………………………」
「? ロバン様?」
「………………………………れ、レベッカ。それは絶対なのかな? 本当に、何があっても書類にサインをするつもりはないのかな?」
「はい、ございません。『当時の心を取り戻し、ロバン・ヴァレンタ様の妻となる』。それが今現在のわたくしも夢ですから」
「………………………………そ、そうなんだ。はははは。そ、そうなんだね。すっ、すまない用事を思い出した! 失礼するよ!!」

 棒立ちになって口をパクパクとさせていたロバンは、引きつった笑みを返して退室。冷や汗でびっしょりになりながら廊下を走り、逃げるように自室に飛び込みました。

「………………マズイ。まずい……!! どうすればいいんだ……!?」

《この契約はいかなる理由があれ、両家の同意がない限り解消することはできない》
《契約が結ばれている限り両者は同じ場所で過ごし、行動を共にしなければならない》

 ロバン自身が組み込んだルールによって、両家――各当主、ロバン、レベッカのサインがないと撤回は不可能。今回その中の一人が拒否をしてしまったため、かつてないレベルの焦りに襲われていたのです。

「違う角度から説得してみれば、考えは変わるのか……!? ………………無理だ! どんな説得も無意味だ!!」

 さっきレベッカが見せた表情を思い出し、そのアイディアは即却下となりました。

「だったら…………っ。脅す……? 本心を明かして、サインをしないと殺すとでも言えばサインをするか……!? ………………こいつも駄目だ……」

 今の状況・・・・を鑑みると、その手の行動はあっという間に大問題に発展してしまいます。
 名案と思ったものもすぐに×となり、ロバンは頭を抱えます。

「どうしたらいいんだ……!? どうやれば今のアイツにサインをさせられるんだ……!?」

 いくら考えてもそれ以上アイディアが浮かばず、急いで自身の従者やその手を得意とする家令を呼び寄せ共に考えさせます。

「どうだっ!? なにか浮かんだか!?」
「………………申し訳ございません」
「………………わたくしめも、浮かんではおりません……」

 しかしながらレベッカの固い意思によって成果は出ず、そうしていると外からは馬車が停まる音が聞こえてきました。

「もうそんな時間になっていたのか……。…………父上の力を借りたら、どうにかなるかもしれない」

 エミルはザスワーズ伯爵邸に向かい、いくつかの見返りを渡してサインをもらってきた――現当主アランを味方につけている。ソレを使えば好転する可能性はある。
 そう考えながら部屋を出て、エントランスで待機――するつもりでしたが待ちきれず、停まっている馬車まで走ります。そして、下車をしているエミルのもとに駆け寄って――

「……………………。え……?」

 ――ロバンは再び、大きな大きな予想外に襲われることとなるのでした。

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