婚約破棄をされるのですね? でしたらその代償を払っていただきます

柚木ゆず

文字の大きさ
2 / 26

第1話 異変 フルール視点(1)

しおりを挟む
「目撃されないと思い込み、不完全な形で呼び出してしまったこと。作成に夢中になるあまり、筆跡鑑定という存在をうっかり忘れて自ら脅迫状を書いてしまったこと。などなど。これらの『間抜け』によってお前は確証を複数生んでしまい、尻尾を掴まれてしまったんだ」

 クリストフ様。これから大変なことになるのは、私ではなく貴方様ですよ――。そんな風に思っていたら、今度はそのような言葉がやってきました。

((……やはり……。クリストフ様は、頭が切れる方ですね))

『筆跡鑑定の存在を忘れるはずがない』『これは偽装なのでは?』。筆跡の重要さを貴族はよく知っているため、周囲の方々はそう感じるようになります。ですが敢えてそういった形で先に言及することによって、皆様の中からそういった考えを消し去ってしまいました。
 学年トップ3の頭脳は、伊達ではありませんね。私が『保険』を用意していなければ、それらの捏造全てが事実となってしまっていました。

「フルール、これが俺が激しい憤りを覚えている理由だ。……まさかお前が、こんなにも心の汚い女だったとはな。そんな者を愛していた自分が情けない」
「……………………」
「もしも時の逆行が可能ならば、あの頃に戻って必死で自分自身を止めたい。『お前が愛している女は、見た目だけの女だ!』『中身は正反対で、醜悪な性質を隠し持っているんだぞ!』と叫んでな」

 まるで本当に心から悔やみ、大きな怒りを覚えているかのよう。事実を知っている私でさえも騙せてしまいそうなほど巧みにお芝居をされ、そうしていたら――漆黒の制服をお召になられた6人の男性が、カフェテリアに現れました。
 突然いらっしゃられたこの皆様は、この国の治安機関に属する方々。呼び出しはともかくとして脅迫状は罪となるため、クリストフ様が連絡を入れていたようですね。

「フルール。学院内で起きたことなら、大目に見てもらえると思っていたか? それは大きな間違いだ」
「……クリストフ様……。わたしは、怖いことさえなくなってくれれば幸せですので……。やっぱり、こういったことはおやめに――」
「駄目だ。そこにいるのは、君の優しさに応えられる女ではないのだからね」

 こちらは恐らく、ベル様を持ち上げるための小細工なのでしょう。うるうるとした上目遣いに向けて静かにかぶりを振り、治安機関の方々へと一礼を行いました。

「フルール・レファネッサルと話すことは、もうありません。この者の連行をお願い致します」
「「「「「はっ!」」」」」

 治安機関の方々は背筋を伸ばして返事を行われ、あっという間に私は取り囲まれてしまいます。そしてそのまま、連行が始まる――ことは、ありませんでした。
 なぜなら、


「待つんだ!! 彼女っ、フルールは無実だ!!」


 私が拘束される、その直前でした。張り詰めた空気が漂っていたカフェテリア内に、そんなクリストフ様の大声・・・・・・・・・が響き渡ったからです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

婚約お断り令嬢ですわ ~奇行で縁談を潰していたら本命騎士に再会しました~

鍛高譚
恋愛
婚約話? 結構ですわ。 私には――子供の頃に命を救ってくれた“黒髪の騎士”がいるのですから。 公爵令嬢アンネローゼ・フォン・グレイシアは、才色兼備の完璧令嬢……だった。 だが、ある日から突如“奇行”に走り始める。正座で舞踏会に参加? スープにストロー? 謎のポエム朗読? そう、それはすべて――望まぬ婚約をぶち壊すため! 王族、貴族、策略家、演技派……次々と舞い込む政略結婚の話。 アンネローゼはあの手この手で縁談をぶった斬り、恋も名誉も自由も手に入れる! すべての婚約破棄は、たった一人の人に出会うため―― 「破談のアンネローゼ様」が貫く、“本当の婚約”とは? 痛快!恋愛ざまぁ×ラブコメディ×ハッピーエンド! 破談上等のお嬢様が、本物の愛を掴むまでの逆転劇が今、始まりますわ!

偽りの婚約者だった私を捨てた公爵様が、今さら泣きついてきてももう遅いです

exdonuts
恋愛
かつて政略で婚約した公爵令息・レオンハルトに、一方的に婚約破棄を言い渡された令嬢クラリス。彼は別の令嬢に夢中になり、クラリスを冷たく切り捨てた。 だが、国外赴任で彼の目が届かなくなった数年後、クラリスは実家を離れて自らの力で商会を立ち上げ、華やかに再び社交界へと舞い戻る。 彼女の隣には、かつて一途に彼女を支え続けた騎士がいた――。 自分の過ちを悟った元婚約者が戻ってきても、もう遅い。 これは、冷遇された令嬢が愛と誇りを取り戻す“ざまぁ”と“溺愛”の物語。

「偽物の聖女は要らない」と追放された私、隣国で本物の奇跡を起こしたら元の国が滅びかけていた件

歩人
ファンタジー
聖女リーゼロッテは、王太子カールに「お前の加護は偽物だ」と断じられ、 婚約を破棄された。代わりに聖女の座に就いたのは、愛らしく微笑む男爵令嬢エルゼ。 追放されたリーゼロッテが隣国に辿り着いたとき、その地は疫病に苦しんでいた。 彼女が祈ると、枯れた泉が蘇り、病は癒え、荒野に花が咲いた。 ——本物の聖女の力が、ようやく枷を外されて目覚めたのだ。 一方、リーゼロッテを失った王国では結界が綻び始め、魔物が溢れ出す。 カールは今さら「戻ってくれ」と使者を送るが、リーゼロッテの隣には、 彼女の力を最初から信じていた隣国の若き王がいた。 「あの国に戻る理由が、もう一つもないのです」

わたしに冗談なんて通じません。だから二度と婚約者面なんてしないでくださいね

うさこ
恋愛
特殊な騎士の家で育った私には婚約者がいた。 今思えば、彼は私に好きになれと強要していた。 そんな私は婚約破棄を言い渡されーー ※ざまぁです

悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)

ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」  王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。  ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。

地味令嬢を馬鹿にした婚約者が、私の正体を知って土下座してきました

ほーみ
恋愛
 王都の社交界で、ひとつの事件が起こった。  貴族令嬢たちが集う華やかな夜会の最中、私――セシリア・エヴァンストンは、婚約者であるエドワード・グラハム侯爵に、皆の前で婚約破棄を告げられたのだ。 「セシリア、お前との婚約は破棄する。お前のような地味でつまらない女と結婚するのはごめんだ」  会場がざわめく。貴族たちは興味深そうにこちらを見ていた。私が普段から控えめな性格だったせいか、同情する者は少ない。むしろ、面白がっている者ばかりだった。

「お前とは結婚できない」って言ったのはそっちでしょ?なのに今さら嫉妬しないで

ほーみ
恋愛
王都ベルセリオ、冬の終わり。 辺境領主の娘であるリリアーナ・クロフォードは、煌びやかな社交界の片隅で、ひとり静かにグラスを傾けていた。 この社交界に参加するのは久しぶり。3年前に婚約破棄された時、彼女は王都から姿を消したのだ。今日こうして戻ってきたのは、王女の誕生祝賀パーティに招かれたからに過ぎない。 「リリアーナ……本当に、君なのか」 ――来た。 その声を聞いた瞬間、胸の奥が冷たく凍るようだった。 振り向けば、金髪碧眼の男――エリオット・レインハルト。かつての婚約者であり、王家の血を引く名家レインハルト公爵家の嫡男。 「……お久しぶりですね、エリオット様」

処理中です...