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第4話 もうひとつのやるべきこと
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《逢、負を前にするとどうもいかん。持ってきておくれ》
《承知致しました》
店の奥。負の記憶で満ちたカクテルグラスをマクのもとへと運び、ですが、まだ逢は渡しません。
《3分の1、いただきますね》
《そういう契約になっているからな。構いはしないさ》
人の負を感知して取り出すことができる力を持つ、逢。しかしながら負の記憶は人力で消し去ることはできず、放置すると『この世』に混ざって災いが起きてしまう。
負の記憶を喰らう力、人間の心の中に入り負の記憶を取り出すなどの力があるものの、長い時を生きた影響で弱まり後者はないに等しい。自力で負を手にすることができない。
そんな両者は互いのマイナス要素を補うために手を結び、新たな契約を結んで取り分を設けたのです。
《しかし、よくやる。お主も酔狂よな》
取り分を埋めるため、これまでよりも多く行動しないといけない――力の行使には体力を消耗するため、より睡眠を取る必要が出てくる。現在は休日のひとつである土曜日はまるまる眠り続けており、人生の貴重な時間を消費しているため、マクは嘆息しました。
《罪を犯した者に平穏があるのは納得できませんし、第二の被害者が出る懸念もあります。同時に2つも利点を達成できるのですから、わたくしは幸せ。悪くない日常だと思っていますよ》
《そこが、本に変わっておるのだ。つくづく珍しい性格の持ち主よの》
《そうですか?》
《そう言っているだろう。……まあいい。今回も、サービスで特定してやった。この場所に行くといい》
《感謝いたします》
どこからともなく、目の前にひらひらと落ちて来た四角形の紙。逢はソレを手に取り、紙面の内容に目を通しました。
《では、決行は明日にいたしましょうか。わたくしは翌日の準備がありますので、このあと失礼しますね》
《うむ。……ほほぉ、こいつはなかなかに上質だ》
あーんと口を開けたマクに、黒い液体こと陽介の負の記憶を飲ませたあと。逢はカクテルグラスに残った3分の1の負の記憶を彼謹製の瓶に詰め、手早く清掃を済ませてマクが創り出したテリトリーこと『BAR記憶堂』をあとにして――
《承知致しました》
店の奥。負の記憶で満ちたカクテルグラスをマクのもとへと運び、ですが、まだ逢は渡しません。
《3分の1、いただきますね》
《そういう契約になっているからな。構いはしないさ》
人の負を感知して取り出すことができる力を持つ、逢。しかしながら負の記憶は人力で消し去ることはできず、放置すると『この世』に混ざって災いが起きてしまう。
負の記憶を喰らう力、人間の心の中に入り負の記憶を取り出すなどの力があるものの、長い時を生きた影響で弱まり後者はないに等しい。自力で負を手にすることができない。
そんな両者は互いのマイナス要素を補うために手を結び、新たな契約を結んで取り分を設けたのです。
《しかし、よくやる。お主も酔狂よな》
取り分を埋めるため、これまでよりも多く行動しないといけない――力の行使には体力を消耗するため、より睡眠を取る必要が出てくる。現在は休日のひとつである土曜日はまるまる眠り続けており、人生の貴重な時間を消費しているため、マクは嘆息しました。
《罪を犯した者に平穏があるのは納得できませんし、第二の被害者が出る懸念もあります。同時に2つも利点を達成できるのですから、わたくしは幸せ。悪くない日常だと思っていますよ》
《そこが、本に変わっておるのだ。つくづく珍しい性格の持ち主よの》
《そうですか?》
《そう言っているだろう。……まあいい。今回も、サービスで特定してやった。この場所に行くといい》
《感謝いたします》
どこからともなく、目の前にひらひらと落ちて来た四角形の紙。逢はソレを手に取り、紙面の内容に目を通しました。
《では、決行は明日にいたしましょうか。わたくしは翌日の準備がありますので、このあと失礼しますね》
《うむ。……ほほぉ、こいつはなかなかに上質だ》
あーんと口を開けたマクに、黒い液体こと陽介の負の記憶を飲ませたあと。逢はカクテルグラスに残った3分の1の負の記憶を彼謹製の瓶に詰め、手早く清掃を済ませてマクが創り出したテリトリーこと『BAR記憶堂』をあとにして――
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