心を失ってしまった令嬢は、心優しい精霊王に愛される

柚木ゆず

文字の大きさ
17 / 52

第7話 同時刻 ターザッカル邸内では 俯瞰視点(3)

しおりを挟む
「へっ、減った!! ほらっ、減ってるんだ!! 数え間違いじゃない!! 我々が気付かない間に減って――違う!! そうだったが今は違うっ!! いっ、今! 今ぁぁ!! 札束が一つ消えたぁあぁああああああああああ!!」

 セゼールが頭を抱えながら、沢山の札束を凝視していた時でした。突然フッと、100万ギルースの束が消えてしまったのでした。

「みっ、見ただろう!? 見たよな!? お前達も見ただろう!?」
「わ、わたくしは、それを見てはいないけれど……。…………たった今、見たわ。わたくしの目の前にある札束が…………2つ、消える瞬間を……」
「……わたしも、見ちゃった……。手の傍にあった札束3つが、急に消えた……」

 2人もまたこれまで以上に身体を震わせ、そうしている間にも――6つの札束が消え去り、消失の連鎖はまだ止まりません。

「「「あ、ああ……。あああ…………」」」

 3つ。2つ。3つ。2つ。4つ。3つ。5つ。数は不規則ですが確実に札束は減ってゆき、彼らが異変を認識してから僅か4分後でした。食卓に所狭しと並んでいた100の札束は、ひとつ残らず消えてしまったのでした。

「な、なんということだ……!? なんということだ……!!」
「1億ギールスが、なくなってしまうだなんて……。これは、夢なの……!? 悪夢なの……!?」
「ち、違う、夢なんかじゃない。だって……。頬っぺたを抓ったら、痛みがあるもの……」

 まずは自身の右を頬を抓り、次にセゼールとエミリの頬を抓ります。そうしたことで2人も『ここは現実だ』と認識をし、それによってますます3人の顔色は悪くなりました。

「現実だなんて……。じゃあっ、ここが現実であるのなら!! 何がどうなってこうなっているんだ!?」
「こんな現象っ、聞いたことがないわ!! 何が起きているの!?」
「お、おかしい、おかしいよこんなのっ!! こ、怖いっ! とっ、とにかく離れよ!! 一旦食堂から出ようよ!!」
「あっ、ああっ、そうだな!! とっ、とにかく離れよう!! ここから出て一度冷静になろ――しまっ!?」

 慌てて動いたことによって肘がグラスを押してしまい、床へと落下。それによって愛用していたグラスが割れ、入っていた赤ワインが絨毯に広がってしまいました。
 そしてそんな出来事が、3人に更なる――これまでとの比にならない、夥しい量の恐怖を生むことになるのでした。

「ま、まあいいっ、放っておこう! そんなことより、今は――………………。ぎゃ、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 走り出そうとしていたセゼールが固まり、大絶叫をあげた理由。それは、気が付くと零れたワインが――

《この家の妹は妹じゃない 姉だ》

 ――まるで血文字のようなものを、絨毯に描いていたからでした。

しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

叶えられた前世の願い

レクフル
ファンタジー
 「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

処理中です...