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第7話 同時刻 ターザッカル邸内では 俯瞰視点(5)
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《セレ様。我が儘を聞いてくださりありがとうございました。ボクのせいでお手間を取らせちゃって、ごめんなさい》
「俺にも、思うところがなかったわけじゃあない。礼も謝罪も不要だ」
セゼール達3人がヒソヒソ話を行い、的外れな行動を取り始めた頃。そんな彼らの近くでは、テレパシーを使ってセレスティンとゴーチェが会話をしていました。
『きっとヤツらは、今頃大喜びしてる。アイツらをギャフンと言わせてください!』
それが出発前、旧レウザート伯爵邸の中庭で行われたお願い。これを実現するべくセレスティンは3人が盛り上がっている食堂へ侵入し、今の彼らが最もダメージを受ける異変を起こしていたのでした。
「さっきも口にしたが――。他者のために本気で怒れる、それは素晴らしいことだ。そんな者が側近であることを、俺は嬉しく思っている」
《セレ様……っ。痛み入りますっ!》
ずずっと鼻を啜る音が聞こえ、そうしたゴーチェは再び『セレ様』と、主の名を呼びました。
《ボクは引き続き、ここから応援します。ラシェルちゃんを、お願いします!》
「ああ。俺が責任を持って、もう一歩前進させる」
頭の中に響いてきた声に揺るぎない調子のソレを返し、ラシェルを横抱きにした状態でセレスティンは食堂を出ます――扉をすり抜け、廊下へと出ます。
「記憶によると…………。ラシェル嬢の自室は、こちらか」
廊下には家令など使用人が複数人いますが、認識阻害が発動しているため2人に気付く者はひとりもいません。セレスティンは覗き見た記憶を頼りに廊下を左へと進み、階段をのぼって2階へとあがり、その階の4番目にある部屋の前で立ち止まりました。
「ここが、ラシェル嬢の自室だな。……許可なき入室、許してもらおう」
まずは抱いている部屋の主にお詫びを行い、再び扉をすり抜け室内に入ります。そうすれば彼の視界内には、白を基調とした、清潔感のある質素な内装が現れました。
「……確か姉リヴィアの部屋には、高価な家具が並んでいた。本人の性質もあるが、それでも、酷い姉妹格差だな」
記憶を振り返ったセレスティンは短く嘆息し、力で扉を開かないようにしたあと、入り口から見て1時の方向へと直進。そうして彼は、目的の場所――部屋の隅に設置されたデスクの前で立ち止まり、丁寧にラシェルを椅子へと座らせたのでした。そして、
「もう一度、許可なき行動を許してもらいたい」
セレスティンは精霊の力を使って引き出しのカギを開け、そこから合わせて5冊のノートを取り出したのでした。
「俺にも、思うところがなかったわけじゃあない。礼も謝罪も不要だ」
セゼール達3人がヒソヒソ話を行い、的外れな行動を取り始めた頃。そんな彼らの近くでは、テレパシーを使ってセレスティンとゴーチェが会話をしていました。
『きっとヤツらは、今頃大喜びしてる。アイツらをギャフンと言わせてください!』
それが出発前、旧レウザート伯爵邸の中庭で行われたお願い。これを実現するべくセレスティンは3人が盛り上がっている食堂へ侵入し、今の彼らが最もダメージを受ける異変を起こしていたのでした。
「さっきも口にしたが――。他者のために本気で怒れる、それは素晴らしいことだ。そんな者が側近であることを、俺は嬉しく思っている」
《セレ様……っ。痛み入りますっ!》
ずずっと鼻を啜る音が聞こえ、そうしたゴーチェは再び『セレ様』と、主の名を呼びました。
《ボクは引き続き、ここから応援します。ラシェルちゃんを、お願いします!》
「ああ。俺が責任を持って、もう一歩前進させる」
頭の中に響いてきた声に揺るぎない調子のソレを返し、ラシェルを横抱きにした状態でセレスティンは食堂を出ます――扉をすり抜け、廊下へと出ます。
「記憶によると…………。ラシェル嬢の自室は、こちらか」
廊下には家令など使用人が複数人いますが、認識阻害が発動しているため2人に気付く者はひとりもいません。セレスティンは覗き見た記憶を頼りに廊下を左へと進み、階段をのぼって2階へとあがり、その階の4番目にある部屋の前で立ち止まりました。
「ここが、ラシェル嬢の自室だな。……許可なき入室、許してもらおう」
まずは抱いている部屋の主にお詫びを行い、再び扉をすり抜け室内に入ります。そうすれば彼の視界内には、白を基調とした、清潔感のある質素な内装が現れました。
「……確か姉リヴィアの部屋には、高価な家具が並んでいた。本人の性質もあるが、それでも、酷い姉妹格差だな」
記憶を振り返ったセレスティンは短く嘆息し、力で扉を開かないようにしたあと、入り口から見て1時の方向へと直進。そうして彼は、目的の場所――部屋の隅に設置されたデスクの前で立ち止まり、丁寧にラシェルを椅子へと座らせたのでした。そして、
「もう一度、許可なき行動を許してもらいたい」
セレスティンは精霊の力を使って引き出しのカギを開け、そこから合わせて5冊のノートを取り出したのでした。
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