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第7話 お芝居(ナディア・ソルラ視点)
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「今日は随分と、気合が入っているな。そんなにも俺に聞いて欲しかったんだな」
「はい、そうなのです。そのためにあれから毎日、いつも以上に練習してまいりました」
廊下を歩きながら、いつも通りにローラン様と言葉を交わします。
アンリエットさん。エミナさん。マリーさん。
皆さんのお声を聞くと緊張がスゥっと消えて、勇気が湧いてきました。
わたくしには、頼りになる仲間がいる。
そんな事実が、あらゆる不安を取り除いてくれます。
「愛用の楽器を運ぶため、わざわざ別の馬車を用意したんだ。前回と同じクオリティーで終わってくれるなよ?」
「ご安心を。過去最高の演奏を披露いたします」
演技の経験はありませんが、何度も練習しました。
皆さんの応援を、受けました。
心身の調子は、万全となりました。
だったら――。失敗する理由が、ありませんわ!
「ここまで迷いのない即答は、なかなかない。面白い時間となりそうだ――」
「ぁっ! ごほっ。ごほっ!」
突如咳き込み、右手で胸元を押さえながら座り込みます。そしてもっと騒ぎになるよう、すぐに蹲って苦悶の声を上げます。
「ぁ……。く……っ」
「なっ、ナディアっ!? どうしたんだ!?」
「ただ事ではありませんね……。至急医師を連れてまいります!」
流石のローラン様も戸惑いの声を上げ、アイナスさんが走り出しました。
(よかった。二人が予想以上に騒いでくださったおかげで、他の場所にいた方々も様子を見にきましたわ)
これなら、皆さんは忍び込める。一先ず作戦成功、ですわね。
(わたくしはここで暫く時間を稼ぎ、そのあとは演奏場で完璧に足止めをしてみせます。だから)
あとは、任せましたわ。
「はい、そうなのです。そのためにあれから毎日、いつも以上に練習してまいりました」
廊下を歩きながら、いつも通りにローラン様と言葉を交わします。
アンリエットさん。エミナさん。マリーさん。
皆さんのお声を聞くと緊張がスゥっと消えて、勇気が湧いてきました。
わたくしには、頼りになる仲間がいる。
そんな事実が、あらゆる不安を取り除いてくれます。
「愛用の楽器を運ぶため、わざわざ別の馬車を用意したんだ。前回と同じクオリティーで終わってくれるなよ?」
「ご安心を。過去最高の演奏を披露いたします」
演技の経験はありませんが、何度も練習しました。
皆さんの応援を、受けました。
心身の調子は、万全となりました。
だったら――。失敗する理由が、ありませんわ!
「ここまで迷いのない即答は、なかなかない。面白い時間となりそうだ――」
「ぁっ! ごほっ。ごほっ!」
突如咳き込み、右手で胸元を押さえながら座り込みます。そしてもっと騒ぎになるよう、すぐに蹲って苦悶の声を上げます。
「ぁ……。く……っ」
「なっ、ナディアっ!? どうしたんだ!?」
「ただ事ではありませんね……。至急医師を連れてまいります!」
流石のローラン様も戸惑いの声を上げ、アイナスさんが走り出しました。
(よかった。二人が予想以上に騒いでくださったおかげで、他の場所にいた方々も様子を見にきましたわ)
これなら、皆さんは忍び込める。一先ず作戦成功、ですわね。
(わたくしはここで暫く時間を稼ぎ、そのあとは演奏場で完璧に足止めをしてみせます。だから)
あとは、任せましたわ。
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