霊能師高校迷霊科~迷える霊を救う、たった一つの方法~

柚木ゆず

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2話(5)

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「私事な為、詳しくは言えないのですが…………僕は『正しい事をした者が損をする世の中ではない』、『悪い事をした者が得をする世の中ではない』と、証明したいのです。だから間違っている四空くんに立ち向かっている二人に、協力したいのですよ」
「…………俺らの件がハッピーエンドになったなら、その実例が生まれる。それで手を貸すんスね?」
「その通りで、彼を許せないという感情もあるのだけれど、結局は自身のため。お二人を、利用しています。だから僕はこうして、お願いさせて頂いているのですよ」

 先輩は俺達に申し訳なさと自責が宿った目線を送り、頭を下げる。テーブルに額が付くほど、深く下げる。

「この先、いつ再演――実例が必要になる時が訪れるか分からない。もしかすると、それは今日か明日かもしれない。だからどうか…………お二人の中には、四空君が遣したスパイ疑惑があるかもしれませんが……。信じていただいて、僕を加えてくれないでしょうか……?」
「んと、んとっ、頭をあげてください、だよっ。先輩さんはとってもいい人の感じがしてて、ジブンはとっても歓迎してるのっ」
「こっちも、右に同じっス。頭を上げてくださいよ」

 どちらも、即答。あまりに返事が早く困惑まじりで上がった顔に、俺は笑いかける。

「『利用』という内心を明かして、頼み込む。仮にスパイなら悪印象を抱かれる真似はしないんで、先輩は白で確定です。そんでもって――他意なしでそういうことをやれる人は、真っ直ぐだと相場が決まってますっスよ」

 上手く誤魔化せばいくらでも優位に立てるのに、嫌な印象を受けなくてすむのに、しっかりと言葉にする。そういう『会話での打算』がない人間は、心にも『悪』はないのだ。

「先輩さんは絶対に、とっても優しい人。そんな人がいてくれるととっても助かるから、こちらこそお願いしますだよ、です」
「…………花島くん土水さん、ありがとうございます。お二人の為にも、この身に宿る力を使わせてもらいますよ」

 先輩は若干目を潤ませ、力強く宣言して今一度お辞儀。俺らの目を見て何度も謝意を告げてくれて、早速スマホで申請を始めた。
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