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幕間 橋月夢兎(1)
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「ムダよムダっ。誰も通さないわっっ!」
正義が案じていた、東側にある来客者用の出入口。そこではすでに戦闘が始まっており、橋月夢兎は縦横無尽に動き回っていた。
「防ぐ、そう約束しちゃったからね! 全員倒してやるわ!」
「がっ! ぁ、ぁぁ…………」
迫りくる大きな拳を霊術で躱した夢兎は、その男の股を蹴り上げ撃沈させる。
正義と違い夢兎は、戦闘訓練も筋力トレーニングも行っていない。つまり攻撃が当たればアウトに等しく、防戦は不可能。よって隙を見て相手を倒すという、攻撃に重きを置いた戦法を取っていた。
「ふふっ、これであと11人になったわね。……虎クン。虎クンのおかげで、どうにか凌げてるよ」
一人沈めて距離を取った夢兎は、呼吸を整えつつ感謝の言葉を独りごちる。
この戦法を取れているのは、避ける面を考慮せずに済むから。自動回避があるからこそ、こうできている。
「さって、次は誰? どのバカが蹴られたいのかしら?」
「っっ、ガキが調子に乗りやがって……っ。おいっ寺松(てらまつ)!」
「オーケー佐竹(さたけ)、もう手加減はなしだ。多少のケガは覚悟してもらうとしよう」
角刈りの男・佐竹が声を荒らげ、長髪で長身の男・寺松と共に一歩前に出る。
先の言葉通り、容赦はなし。集団のナンバー1と2で『2対1』という構図を作り、確実に仕留めるようだ。
「ふーん、数を増やしたのね。けどあたしは、どんな攻撃でも避けられるわよ?」
「そうだな、確かに避けられる。だがその力には、欠点があんだよ」
「あらそう。そんなウソで自他を鼓舞しないといけないくらい、弱い連中だったのね」
夢兎はオーバーに鼻で笑い、密かに考える。
――ハッタリで動揺させにきた、って感じじゃないわね。虎クンの力に弱点があるとは思えないけど、もっと注意を払っていきましょうか……。
余裕綽々、厚顔不遜。そんな態度とは異なり、心中では本来の調子で用心に用心を重ねる。そして同時に『この作戦も、もう取れそうにないわね』とも思い、軽く舌打ちをする。
あたしは、とても弱い。他のメンバーとは違って、普通のやり方では対応できない。
そう自覚する夢兎は、相手を挑発させて短絡的な行動を引き起こさせることにした。これまで全て1対1だったのは『相手が少女』という面もあるのだが、コレも少なからず作用していたのだ。
正義が案じていた、東側にある来客者用の出入口。そこではすでに戦闘が始まっており、橋月夢兎は縦横無尽に動き回っていた。
「防ぐ、そう約束しちゃったからね! 全員倒してやるわ!」
「がっ! ぁ、ぁぁ…………」
迫りくる大きな拳を霊術で躱した夢兎は、その男の股を蹴り上げ撃沈させる。
正義と違い夢兎は、戦闘訓練も筋力トレーニングも行っていない。つまり攻撃が当たればアウトに等しく、防戦は不可能。よって隙を見て相手を倒すという、攻撃に重きを置いた戦法を取っていた。
「ふふっ、これであと11人になったわね。……虎クン。虎クンのおかげで、どうにか凌げてるよ」
一人沈めて距離を取った夢兎は、呼吸を整えつつ感謝の言葉を独りごちる。
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「さって、次は誰? どのバカが蹴られたいのかしら?」
「っっ、ガキが調子に乗りやがって……っ。おいっ寺松(てらまつ)!」
「オーケー佐竹(さたけ)、もう手加減はなしだ。多少のケガは覚悟してもらうとしよう」
角刈りの男・佐竹が声を荒らげ、長髪で長身の男・寺松と共に一歩前に出る。
先の言葉通り、容赦はなし。集団のナンバー1と2で『2対1』という構図を作り、確実に仕留めるようだ。
「ふーん、数を増やしたのね。けどあたしは、どんな攻撃でも避けられるわよ?」
「そうだな、確かに避けられる。だがその力には、欠点があんだよ」
「あらそう。そんなウソで自他を鼓舞しないといけないくらい、弱い連中だったのね」
夢兎はオーバーに鼻で笑い、密かに考える。
――ハッタリで動揺させにきた、って感じじゃないわね。虎クンの力に弱点があるとは思えないけど、もっと注意を払っていきましょうか……。
余裕綽々、厚顔不遜。そんな態度とは異なり、心中では本来の調子で用心に用心を重ねる。そして同時に『この作戦も、もう取れそうにないわね』とも思い、軽く舌打ちをする。
あたしは、とても弱い。他のメンバーとは違って、普通のやり方では対応できない。
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