上 下
80 / 94

5話(4)

しおりを挟む
「…………等分した状態で使うのだから、○○の攻撃は、などの限定条件がついているのは確か。つけ込む隙があるとすれば、間違いなくソコだ」

 限定条件なのだから、それを満たさなければ攻撃は通る――体内にある負を打ち消せる。狙いはこれだ。

「そのためには………………情報。正確な情報がいるな」

 何につけても、ソレ。最低でも、推測できる量が必要だ。

「しかし……」
「こ、ワい……。イタい、のイヤ……。イヤイヤイヤイヤいヤイやイヤイヤいやいやイヤ……っ」

 今の育美は、会話不可能だ。どうやって、その情報を集める……?

「ソト、も、こわイ……。コワいおと、きコえる……! ヤダぁああああああぁぁぁぁあぁあああアあああああぁあァああああああ……っ」

 S級相当だけあって援軍の到着は早く、各所で争っている音がしている。100超を数人でずっと抑えられるはずがないので、予想以上に残り時間は少なそうだ。

「落ち着ける状況だけど、あまりのんびりしてられない。……どうやれば、正確な情報を掴める……?」

 焦る気持ちを懸命に鎮め、冷静さを保って思考回路を扱き使う。
 言葉を交わせない相手の情報を得るのは、どうすればいい? どうしたら可能だ?

「…………。育美の力と俺の力は、元々一つ」

 つまり、共有している。だとしたら、強く意識をすれば『何を発動してるか』も共有できるのではないだろうか?

「物は試し。やってみるか」

 意識を集中して、情報の共有を試みる。その結果は………………………………………………駄目だ。何も感じられない。

「そう、都合よくはいかないか。次だ次っ」

 瞬時に頭を切り替え、再度思考を巡らせる。
 …………俺にも、加工する力はあるんだ。これを上手く活かせば、相手が教えてくれなくてもどうにかなるはず。

「どうすれば……。どうすればいい……」

 何をどう加工すれば。目的を達成できる?

「教えてくれない相手を知るには、こちら側が干渉しないといけない。そのためには…………――そうか! その手があったっ」

 方法は、ある。見つかった。
 けれど……。こんなに簡単に進むと、大抵――

「やめろ。マイナス思考になるな、俺」

 大抵、どこかで躓く。それは、全部が全部そうではない。
 その中には成功例だってあるのだから、恐れず行おう。
しおりを挟む

処理中です...