姉の婚約者を奪おうとする妹は、魅了が失敗する理由にまだ気付かない

柚木ゆず

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第2話 ソフィーを嫌悪する理由 レアンドル視点

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 僕がこの世で最も素敵だと思う女性、ルロア。そんな人の妹、ソフィー。彼女の印象は、婚約前後で大きく変化することとなった。

 婚約前の印象。それは、評判通りの人間。
 礼儀正しく、思いやりがある、心優しい女性。社交界での評価は正当なものであり、ルロアの妹君らしい人だと思っていた。

 婚約後の印象。それは、怪しい人間。
 婚約者となったことでルロアの家ローレンス伯爵家の方々と会う機会が飛躍的に増え、それによって接する時間も増えた。
 そうしているうちに、あることに気が付いたのだ。

((ソフィーは……。あまりにも完璧すぎる))

『この時はこうしてもらえたら嬉しい』、『こういった時はこんな風に言ってもらえたら嬉しい』、などなど。彼女はどんな時でも、誰に対しても――全てにおいて、これ以上はないタイミングで、理想通りの行動であり返事をしていたのだ。

((ソフィーはルロアが絶賛するくらいに、優しい人間。だから思い遣りの気持ちで……素で、行っている可能性を否定はできないが――。やはりおかしい))

 人である以上、大なり小なり欠点などがある。だか彼女にはそういった部分が僅かもなく、いくら探しても見つからなかった。
 ……それによって、僕は確信をしたのだった。これは意図的に作った人格、所謂キャラクターなのだと。

((ソフィー・ローレンスは、清らかな羊の皮を被った狡猾なオオカミ。高評価を得て動きやすくしたり、いま目の前でそうしているように――。欲しいものを容易に手に入れたりするための偽装か))

 そう確信したものの、別にそれ自体は悪いことではない。少なくとも今は誰にも迷惑をかけていないこと、そしてなにより、家族が気が付いていないこと。
 それをわざわざ口にするのはナンセンスだと感じ、この件は心に留めておくようにした。以後も何も知らないフリをして、ソフィーに接するようにした。

 ……のは、いいのだけれど――。そう認識してしまうと、僕の中で新たな感情が生まれてきてしまった。

「お姉ちゃんは、自慢のお姉ちゃんなんです」

「わたしは、お姉ちゃんの背中を見て育ちました。今のわたしがあるのは、ルロアお姉ちゃんのおかげです……っ」

「ルロアお姉ちゃん、だ~いすきっ」

 などなど。彼女は『姉を慕う妹』を積極的に演じてもいて、評判の上昇に姉を使っていた。

((……こういうものは、面白くないね))

 僕は大切な人が絡むと、思っていた以上に心が狭くなってしまうらしい。
 姉への尊敬は、真っ赤なウソ。それもまた、害がないもの――とはいえ、大切な人を利用されていい気分はしない。
 そのためソフィー・ローレンスと接触するたび、新たな評判を耳にするたびに、評価は下降。ついには、嫌悪を覚えるようになっていたのだった。

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