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第4話 シュヴァリエ様は、お姉ちゃんには勿体ない ソフィー視点(2)

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「………………」

 頭の中がグルグル回って、わたしは何も反応できなくなっていた。
 シュヴァリエ様は別人のような冷たい顔をしていて、魅了を口にしてる。どうしてお姉ちゃんの言葉を信用してるの……? どうしてわたしを愛していないの……!?

((もしかしてっ。あの儀式って、意味のないものだったの……!?))

 違う、それはあり得ないっ。
 レーナ、だったっけ? 魅了を知っていた人は本物で、お母様は多くの実績があると言っていたものっ。お母様はちゃんと裏を取る人だから、ちゃんと効くはず。
 じゃあなんで、効いてないの……?

「君は、相当に醜い人間だった。そんな者に好意を抱くはずがないだろう?」
「………………な、なにを仰っているのですかっ? 魅了っ? それはジョークですよジョークっ。今日はエイプリルフールで、つい悪ふざけをしただけですっ。うっかり午後にしてしまったせいで、お姉ちゃんを勘違いさせてしまったみたいなんですっ」

 流石わたし。日付を思い出して咄嗟に利用し、上手い言い訳が出来上がった。

((お父様が生真面目に教育してくるから、お屋敷の内外で完璧な子を演じていた。お姉ちゃん如きに興味なかったから、邸内でお姉ちゃんの物を狙ったり傷つけたりしたことだってない。シュヴァリエ様への好意をだって、ずっと隠していた))

 お父様、お姉ちゃん、シュヴァリエ様。この3人はずっと、わたしにプラスの印象しか抱いていなかったんだもの。しっかりとした説得力があって、ちゃんと説明して謝っておけば信じてもらえる!

((ふふふっ。日頃の行いは、やっぱり頼もしいわね))

 以上の理由によって発覚する心配はなくって、このお話はお仕舞。こっちの悩みはなくなったから、もう一つの悩み――魅了の失敗について、考える。

((儀式は本物なんだから…………さっきは、何かのミスで失敗しただけみたいね。このあとお母様と一緒に原因を追究して、突き止めて再挑戦すれば問題なしね))

 こっちもパパッと決まって、考え事はすべて終了。なので意識を外へと戻し、ペコリと頭を下げた。

「ちょっとしたお遊びのつもりが、大騒ぎになってしまいました……。シュヴァリエ様、お姉ちゃん……。本当に、ごめんなさい……」
「…………よく考えてみたら、君はああいった心優しい人間だった。本当にエイプリルフールのようだね」
「そうなんです……っ。わたしにはこれっぽっちも、お姉ちゃん達の仲を邪魔するつもりはありません。邪魔者はもう消えますので、2人の時間を楽しんでくださいね……っ。ごゆっくりなさってください……っ」

 そうしてわたしはその場を去り、これも疑惑を失くす行動の一環。敢えてお父様に『迷惑をかけてしまった』と真っ先に告げ、そのあとお母様の部屋へと移動する。
 その後はもちろん、

「お母様、魅了は失敗したみたい。原因を考えよっ」
「ええ、そうね。まずは工程を、じっくり振り返ってみましょ」

 今度こそ魅了を成功させるべく、会議を始めたのだった。

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