最愛の人が、元婚約者にしつこく復縁を迫られているらしい

柚木ゆず

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第5話 回想~2人の出会いと恋と、決意~ ベンジャミン視点(3)

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((俺は、好きになってるんだ。ルーシー様を、異性として))

 それは、関係を持ち始めてから2か月目のこと。いつものように彼女と過ごしている際に、心の中に芽生えた感情に気が付いた。

 あの日から現在まで毎日何かしらの形で一緒に過ごしていて、自死を思い留まってくれてからは、彼女に関することも沢山知れるようになったこと。
 それを通して、思いやりと優しさのある、可愛らしい人なのだと理解したこと。

 それらによって、わずか2か月という短期間で恋に落ちてしまったのだ。
 とはいえ――

((ルーシー様は、あのようなことがあったばかりだ。そういう感情は、伏せておいた方がいいな))

 ――ピエールの一件がある。そこでこの気持ちを打ち明けずにいようと決めていた、のだけれど。その一か月後、予想外の形で俺達は一歩踏み出すことになるのだった。

「…………べんじゃみ、さま……。だいすき、です…………」

 切っ掛けは、馬車の中での出来事。その日の俺達は少しばかり遠方でピクニックを行い、ルーシーは早起きをしてランチとおやつを作ってくれていたため、帰路で眠ってしまった。そのため用意していた毛布をかけていたら、そんな寝言が聞こえてきたのだ。

「……おつた、え……。たい、な……」

「…………で、も……。こわ、……な……」

 彼女は俺と同じように、一緒に過ごすうちに俺を意識してくれるようになっていた。しかしながら『自分は一度婚約して、捨てられたばかり』『こんな自分が想いを告げたら迷惑なのでは?』『もう会ってもらえなくなるのでは?』と感じ、言い出せずにいたのだった。

「…………そっか、そうだったんだね。だったら――」

 躊躇わなくてもいい。俺はその日に想いを告げ、そうしてひょんな形で交際が始まったのだった。
 そして俺達は両想いなので、すでに婚約結婚が頭にあったのだけれど……。俺には懸念材料があった。

『……どうか、止めないでください……。もう、生きているのが辛いんです……』
『……お願いします……。放っておいてください……。このまま、死なせてください……』

 我が家(いえ)には――俺には平均的な力しかなく、もしも大きな相手から何かを受けた場合は、防げない可能性が高い。またあのようにルーシーがボロボロになり、今度こそ死を選んでしまう可能性が大いにあった。

((そんなことは……。絶対に、あってはならない……!))

 そのため待たせるのは忍びなかったのだけれど、それを解決できるまでプロポーズはしない、と決める。そうして俺は、力を得る方法を探し始めて――

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