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第1話 突然の宣告 アリア視点(3)
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「いくらレイオンが好きだと言っても、貴女が拒めば成立しないわ。拒絶とバーダおじ様とルーナおば様の協力があれば、上手くやり過ごせるのよ」
レイオン様のご両親である、リベイル当主ご夫妻。おふたりは約束をするにはしましたが、『金賞受賞』の事実があればもっと上の貴族とパイプを作れると思うようになった。
子爵家の娘如きと婚約結婚させるのは、勿体ないと感じていて……。秘密裏にオルネラ様と手を組まれているそうです……。
「貴女は子爵家の人間でわたくしは伯爵家の人間、貴女と違ってよく釣り合っている。釣り合っているからレイオンを一番幸せにできるのもわたくしで、わたくしとの関係はレイオンにとっても様々な意味でプラスになるの。レイオンを愛しているのなら、むしろ喜んで身を引くべきなのよね」
「……………………」
「はぁ、その様子なら理解できない――子爵令嬢程度のオツムでは理解できないみたいね。まあ理解できてもできなくても諦めきれなくても理解しようとしなくても、どっちでもいいわ。どうであれ貴女には、わたくしに従う、以外の選択肢はないのだから」
もしもわたしが拒んだりレイオン様にコッソリ助けを求めようとしたら――。ミータイス伯爵家とリベール伯爵家が協力して、ウチに攻撃を仕掛けるそうです……。
それも、徹底的に。
あの手この手で、ウチが致命傷を負うまで続けるそうです……。
「そんなことになったら嫌でしょう? 自分のせいで家族や親族たちに迷惑をかけるのは嫌でしょう?」
「……………………」
「あら、返事は? 聞いているのに答えることもできないの?」
「…………嫌、です……。困り、ます……」
お父様、お母様たちだけではありません。この家を築き守り続けてきたご先祖様たちにも、顔向けができなくなってしまいます。
「だったら答えは決まっているわね? 従う、従わない、どちら?」
「……………………」
「いちいちイライラするわね。聞かれたらすぐに答えなさいよ。どっちなのよ」
「……従い、ます……」
これは言葉だけの脅しではない。この方なら――この方々ならやるという、嫌な確信があります。
そう、答えるしかありませんでした……。
「そうね、それが賢明な判断。じゃあ、そうね。どうせ、次に会う約束はしているんでしょ?」
「……はい……。5日後にお会いすると、お約束をしております……」
きっと、最後の仕上げをされていたのでしょう。先週はお会いできなかったため、来週こそ会いたい、とお手紙をいただいていたのです。
「だったら会えないという返事を――そうするより、直接ハッキリ伝えた方があとあと都合がいいわね。アリア・ニーラック、最後に1回だけレイオンに会えるチャンスを与えてあげるわ。5日後に会った際に『もう会えない』ということを自然に伝えて、縁をぷつんと切りなさい」
「…………承知、いたしました……」
レイオン様のこんな形で会えなくなるなんて、嫌です。でも拒めば、あのような目に遭ってしまう。
それ以外のお返事は、できません……。
「もしも約束を破ったら、その時は覚悟しなさいよ。泣いても許してあげないから」
オルネラ様は最後にもう一度釘を刺し、その後は一切目を合わすことなく――挨拶すらもなく、嘲笑を浮かべながら立ち去られました。
「…………………………こんなことに、なるだなんて……」
そうしてわたしは何の前触れもなく、幸せな時間にピリオドを打つことになってしまって――
レイオン様のご両親である、リベイル当主ご夫妻。おふたりは約束をするにはしましたが、『金賞受賞』の事実があればもっと上の貴族とパイプを作れると思うようになった。
子爵家の娘如きと婚約結婚させるのは、勿体ないと感じていて……。秘密裏にオルネラ様と手を組まれているそうです……。
「貴女は子爵家の人間でわたくしは伯爵家の人間、貴女と違ってよく釣り合っている。釣り合っているからレイオンを一番幸せにできるのもわたくしで、わたくしとの関係はレイオンにとっても様々な意味でプラスになるの。レイオンを愛しているのなら、むしろ喜んで身を引くべきなのよね」
「……………………」
「はぁ、その様子なら理解できない――子爵令嬢程度のオツムでは理解できないみたいね。まあ理解できてもできなくても諦めきれなくても理解しようとしなくても、どっちでもいいわ。どうであれ貴女には、わたくしに従う、以外の選択肢はないのだから」
もしもわたしが拒んだりレイオン様にコッソリ助けを求めようとしたら――。ミータイス伯爵家とリベール伯爵家が協力して、ウチに攻撃を仕掛けるそうです……。
それも、徹底的に。
あの手この手で、ウチが致命傷を負うまで続けるそうです……。
「そんなことになったら嫌でしょう? 自分のせいで家族や親族たちに迷惑をかけるのは嫌でしょう?」
「……………………」
「あら、返事は? 聞いているのに答えることもできないの?」
「…………嫌、です……。困り、ます……」
お父様、お母様たちだけではありません。この家を築き守り続けてきたご先祖様たちにも、顔向けができなくなってしまいます。
「だったら答えは決まっているわね? 従う、従わない、どちら?」
「……………………」
「いちいちイライラするわね。聞かれたらすぐに答えなさいよ。どっちなのよ」
「……従い、ます……」
これは言葉だけの脅しではない。この方なら――この方々ならやるという、嫌な確信があります。
そう、答えるしかありませんでした……。
「そうね、それが賢明な判断。じゃあ、そうね。どうせ、次に会う約束はしているんでしょ?」
「……はい……。5日後にお会いすると、お約束をしております……」
きっと、最後の仕上げをされていたのでしょう。先週はお会いできなかったため、来週こそ会いたい、とお手紙をいただいていたのです。
「だったら会えないという返事を――そうするより、直接ハッキリ伝えた方があとあと都合がいいわね。アリア・ニーラック、最後に1回だけレイオンに会えるチャンスを与えてあげるわ。5日後に会った際に『もう会えない』ということを自然に伝えて、縁をぷつんと切りなさい」
「…………承知、いたしました……」
レイオン様のこんな形で会えなくなるなんて、嫌です。でも拒めば、あのような目に遭ってしまう。
それ以外のお返事は、できません……。
「もしも約束を破ったら、その時は覚悟しなさいよ。泣いても許してあげないから」
オルネラ様は最後にもう一度釘を刺し、その後は一切目を合わすことなく――挨拶すらもなく、嘲笑を浮かべながら立ち去られました。
「…………………………こんなことに、なるだなんて……」
そうしてわたしは何の前触れもなく、幸せな時間にピリオドを打つことになってしまって――
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