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第5話 不吉な出来事と、嫌な人 アリア視点
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「きゃあっ!?」
夜。自室の窓から星空を眺めていたわたしは、おもわず悲鳴をあげてしまいました。
なぜなら突然、背後からパリンという音が響いて来たからです。
「お嬢様!? どうかなされましたか!?」
「ご、ごめんなさい、わたしは大丈夫よ。急に後ろで音がした――あそこに飾っている花瓶が突然割れて、その音に驚いてしまったの」
駆け付けてくれたエリネアに無事を報告したあと振り向いてみると、テーブルの上で花瓶が割れていました。あの『パリン』は、この音だったのですね。
「そうでしたか。すぐに片づけをいたします」
「ありがとう。お願いします」
花瓶は縦に大きくヒビが入っていて、そこから水が漏れてきています。エリネアがふきんで机上を拭いてくれて、勿体ないですが仕方がありません。花瓶を処分してもらいました。
「テーブル上に濡れて困るものがなかったのは、不幸中の幸いでした。……それにしても、妙ですね……」
花瓶があった場所へと安堵の息を吐いていたエリネアが、首を左斜めに傾けました。
「お嬢様。花瓶に物が強く当たる、といったことは……。ありませんよね?」
「ないわ。軽く当たってもいないわ」
「ですよね。お嬢様は人一倍物を大事になされる方ですから、そう思っておりました」
わたしの回答を聞いたエリネアの首の傾きが大きくなり、同時に整った眉が内側に寄りました。
「あの花瓶は、本日あちらに設置したばかりです。置く際には傷一つないと確認していますし、あの工房のものはどれも丈夫……。傷などがないのであれば、ゆうに100年はもつもので…………あのようなことになるはずが、ないのですが……」
「それはわたしも思っていたの。気温の急激な変化もなくて、不思議だわ」
「………………。あまり口にすべきではないのですが……。こういった異変が起きるのは……」
「不幸、不吉の前兆。そう言われているわね……」
服が突然破れる。植物が突然枯れる。靴紐が切れる、などなど。悪いことが起きる前触れの一つとされています。
「……お嬢様」
「今後、わたしの身……あるいは心身に、何かしらの悪いことがあるのかもしれないわね。これからいつも以上に、注意を払って行動するようにするわ」
もしもその予兆が『わたしの不注意によるもの』なら、回避することができる。そう信じ、その日から用心を重ねて生活をするようにして――いたのですが……。
その日からちょうど1か月後。
その努力は、まるで意味のないものだったのだと……。とある人の来訪によって、知ることになるのでした。
夜。自室の窓から星空を眺めていたわたしは、おもわず悲鳴をあげてしまいました。
なぜなら突然、背後からパリンという音が響いて来たからです。
「お嬢様!? どうかなされましたか!?」
「ご、ごめんなさい、わたしは大丈夫よ。急に後ろで音がした――あそこに飾っている花瓶が突然割れて、その音に驚いてしまったの」
駆け付けてくれたエリネアに無事を報告したあと振り向いてみると、テーブルの上で花瓶が割れていました。あの『パリン』は、この音だったのですね。
「そうでしたか。すぐに片づけをいたします」
「ありがとう。お願いします」
花瓶は縦に大きくヒビが入っていて、そこから水が漏れてきています。エリネアがふきんで机上を拭いてくれて、勿体ないですが仕方がありません。花瓶を処分してもらいました。
「テーブル上に濡れて困るものがなかったのは、不幸中の幸いでした。……それにしても、妙ですね……」
花瓶があった場所へと安堵の息を吐いていたエリネアが、首を左斜めに傾けました。
「お嬢様。花瓶に物が強く当たる、といったことは……。ありませんよね?」
「ないわ。軽く当たってもいないわ」
「ですよね。お嬢様は人一倍物を大事になされる方ですから、そう思っておりました」
わたしの回答を聞いたエリネアの首の傾きが大きくなり、同時に整った眉が内側に寄りました。
「あの花瓶は、本日あちらに設置したばかりです。置く際には傷一つないと確認していますし、あの工房のものはどれも丈夫……。傷などがないのであれば、ゆうに100年はもつもので…………あのようなことになるはずが、ないのですが……」
「それはわたしも思っていたの。気温の急激な変化もなくて、不思議だわ」
「………………。あまり口にすべきではないのですが……。こういった異変が起きるのは……」
「不幸、不吉の前兆。そう言われているわね……」
服が突然破れる。植物が突然枯れる。靴紐が切れる、などなど。悪いことが起きる前触れの一つとされています。
「……お嬢様」
「今後、わたしの身……あるいは心身に、何かしらの悪いことがあるのかもしれないわね。これからいつも以上に、注意を払って行動するようにするわ」
もしもその予兆が『わたしの不注意によるもの』なら、回避することができる。そう信じ、その日から用心を重ねて生活をするようにして――いたのですが……。
その日からちょうど1か月後。
その努力は、まるで意味のないものだったのだと……。とある人の来訪によって、知ることになるのでした。
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