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第10話 それは不意に アリア視点(1)
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「お父様。お返事は、まだ到着しないのでしょうか……?」
お屋敷に戻ってから3日後の、夕方のことでした。念のため部屋で仮眠を取っていたわたしは、お父様がいらっしゃる執務室を尋ねました。
「ああ、アリアか。……うむ……。それがな、まだ返って来てはおらんのだよ」
わたしは一昨日リベイル伯爵家宛に、訪問に関するお手紙を送らせていただきました。
ぶり返す様子もなかった――眠っているレイオン様にお風邪がうつる可能性がなくなったので、様子を確認したいとご連絡をしたのですが……。2日経っても、お返事がないそうです。
「……話が話だ。読んだらすぐ返事を出すはずだが…………う~む……。実に不思議だ」
「そういえばずっと、リベイル伯爵家から連絡がありません。対応できなくなるほどにお忙しいことが、起きているのでしょうか……?」
わたしが別荘で回復に努めている間に、『30日のお祈りが成功した』という連絡がウチとリベイル伯爵家に伝わり、その日のうちにバーダ様とルーナ様はお父様を訪ねられたそうです。
『アリア殿が戻られたらすぐ、改めて感謝を伝えさせていただきたい』
と仰られていたそうなのに、連絡もありませんし。そうなのかもしれません。
「仮にそうだとしても、何かしらの返事くらいはできるはずなのだがな。………………」
お父様は顎に手を当て、お顔が少しばかり俯きました。その状態が30秒ほど続き、やや下を向いていたお顔が上がりました。
「さっき言ったように話が話、これは特殊かつ特別なケースだ。明日、リベイル伯爵家を訪ねてみよう」
連絡なしに――特に格下が格上のお屋敷を訪ねることは、大きなマナー違反とされています。
ですがお父様が仰られているように、この場合は正当な事情があります。無礼と承知で行わせていただきましょう。
「特にアリアには、その資格がある。日が昇ったらすぐ向かおう」
「はいお父様。よろしくお願いいたします」
急遽わたしとお父様に明日の予定が加わり、次の日の午前7時過ぎに出発。今回はウチに馬車で道を進み、やがて目的地であるリベイル伯爵邸に到着しました。
「ゲインさん、お久しぶりでございます。別荘ではお世話になりました」
「アリア様!? ………………」
その日はちょうど別荘で親しくなった方のひとりが門番を務められていたので、馬車から降りてご挨拶をさせてもらったのですが――。そんなゲインさんは、わたしを見るや急に様子がおかしくなりました。
額には玉の汗が浮かび、黒目は忙しなく上下左右に動く。
どう、されたのでしょうか……?
「あ、あ、あ……。あ……。あ……。あ……。あ……」
「? ゲインさん? どうなさったのでしょうか……? そちらに、何かあるので――…………。え………………?」
挙動不審なゲインさんがチラッと見た、後方。わたしから見て2時の方向にある、敷地の中。
ゲインさんの視線につられてそちらを眺めてみると、そこには信じられない光景があったのです。
「……………………レイオン、さま……?」
お屋敷に戻ってから3日後の、夕方のことでした。念のため部屋で仮眠を取っていたわたしは、お父様がいらっしゃる執務室を尋ねました。
「ああ、アリアか。……うむ……。それがな、まだ返って来てはおらんのだよ」
わたしは一昨日リベイル伯爵家宛に、訪問に関するお手紙を送らせていただきました。
ぶり返す様子もなかった――眠っているレイオン様にお風邪がうつる可能性がなくなったので、様子を確認したいとご連絡をしたのですが……。2日経っても、お返事がないそうです。
「……話が話だ。読んだらすぐ返事を出すはずだが…………う~む……。実に不思議だ」
「そういえばずっと、リベイル伯爵家から連絡がありません。対応できなくなるほどにお忙しいことが、起きているのでしょうか……?」
わたしが別荘で回復に努めている間に、『30日のお祈りが成功した』という連絡がウチとリベイル伯爵家に伝わり、その日のうちにバーダ様とルーナ様はお父様を訪ねられたそうです。
『アリア殿が戻られたらすぐ、改めて感謝を伝えさせていただきたい』
と仰られていたそうなのに、連絡もありませんし。そうなのかもしれません。
「仮にそうだとしても、何かしらの返事くらいはできるはずなのだがな。………………」
お父様は顎に手を当て、お顔が少しばかり俯きました。その状態が30秒ほど続き、やや下を向いていたお顔が上がりました。
「さっき言ったように話が話、これは特殊かつ特別なケースだ。明日、リベイル伯爵家を訪ねてみよう」
連絡なしに――特に格下が格上のお屋敷を訪ねることは、大きなマナー違反とされています。
ですがお父様が仰られているように、この場合は正当な事情があります。無礼と承知で行わせていただきましょう。
「特にアリアには、その資格がある。日が昇ったらすぐ向かおう」
「はいお父様。よろしくお願いいたします」
急遽わたしとお父様に明日の予定が加わり、次の日の午前7時過ぎに出発。今回はウチに馬車で道を進み、やがて目的地であるリベイル伯爵邸に到着しました。
「ゲインさん、お久しぶりでございます。別荘ではお世話になりました」
「アリア様!? ………………」
その日はちょうど別荘で親しくなった方のひとりが門番を務められていたので、馬車から降りてご挨拶をさせてもらったのですが――。そんなゲインさんは、わたしを見るや急に様子がおかしくなりました。
額には玉の汗が浮かび、黒目は忙しなく上下左右に動く。
どう、されたのでしょうか……?
「あ、あ、あ……。あ……。あ……。あ……。あ……」
「? ゲインさん? どうなさったのでしょうか……? そちらに、何かあるので――…………。え………………?」
挙動不審なゲインさんがチラッと見た、後方。わたしから見て2時の方向にある、敷地の中。
ゲインさんの視線につられてそちらを眺めてみると、そこには信じられない光景があったのです。
「……………………レイオン、さま……?」
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