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2 秘密のお手伝い(1)

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「クイーン、読書中にすみません。あやかし殿がまた、イタズラをしてしまったようなのですよ」

 中学校に入って初めての夏休みの、最初の日。
 なんだか初めてづくしの日。
 私がいつものように図書館で本を読んでいると、黒い髪を腰まで伸ばした大人の男の人がやって来た。
 この綺麗で執事っぽい人は、二森(ふたもり)レオンさん24歳。この私立図書館の管理人さんのお孫さんであり司書さんであり、私が本のあやかし関係のお手伝いをしている人なの。

 あっ。そうそう。
 ちなみに私の名前は本庄彩花(ほんじょうあやか)で、『クイーン』という名前じゃないの。

 どうしてこう呼ばれているかというと、私がこの図書館にある全ての本を――1万3345冊の本を、全て読んでいるからなんだ。

『彩花、もう遅いわよ。そろそろ本を読むのはやめなさい』
『彩花はいつも、本ばかり読むね。他にも趣味を見つけた方がいいよ?』

 私はママとパパに呆れられるくらい、小さな頃から読書が大好きだった。
 本は手で持てる大きさなのに、その中には広い広い世界が広がっていて、頭の中で色んな世界に行ける。
 それがすっごく楽しくって、幼稚園の頃から毎日5冊以上は読んだ。
 近所にあるこの図書館に毎日通って、ずっとずっと読んでたの。
 そしたら先月ついに全部の本を読んじゃって、そしたらそしたら…………『ここにある本を全部読んだ子どもがいるんだって』って、本のあやかしさんの間で有名になっちゃって……。
 あやかしさん達が、

『この図書館の本を全部読んだ人は、今までいなかったよね?』
『うん、いなかった。この子は本の王様だよ!』
『ちょっと、その子は女の子でしょ? 王さまじゃないわよ』
『あ、そっか。だったら女王様で、「本の女王(クイーン)」だね』

 というお話をして、こうなったみたい。
 そしてレオンさんは、人間と本のあやかしさんのハーフ――昔からあやかしさんと仲良しだったから、レオンさんもそう呼ぶようになってるの。

「せっかく本を読みに来てくださっているのに、申し訳ございません。貴方の御力をお貸しください」
「はい、分かりました。任せてください」

 本のあやかしさんのイタズラを早く戻せるのは、私しかない。なのですぐに頷いて、読んでいた本を閉じてイスから立ち上がりました。
 今日のイタズラは、どんなものなのかな?



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