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第10話 エリス エリス クリストフ視点(1)
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一目惚れ――。そんなことはあるはずがないと思っていた。
だって一目惚れは『一目』、相手について何も知らないんだ。そんな状態で他者を好きなるはずがないじゃないか。
それは一種のご都合主義。
まともなストーリーが浮かばなかった脚本家や作家が、物語の登場人物の恋を楽に進めるために用意した感情だと考えていた。
あの時までは――。
ふたつ隣にある国フェレッセオの伯爵令嬢エリス。
そこにどういった事情があったかは分からない。その人は僕が3回生となった年の春、1年だけの留学生として僕のクラスに現れたのだった。
優しげで少しだけ垂れた、宝石のようなブルーの瞳が印象的な目。品を感じる小さめの鼻。花びらのような、ピンク色の唇。金糸のようなブロンド。
挙げろと言われたらいくらでも挙げることのできる、美点の塊。彼女は地上に降り立った美の女神と言っても過言ではない美しさを持っていて、一目で目と心を奪われた。
そう。
僕はあの日、彼女に一目惚れをしてしまったのだった。
((素敵だ……! この人と将来を共にしたい……!!))
エリス・レイラマイルは、何に変えても手に入れたい女性。だから僕はすぐさま動き出した。
『僕も貴方と同じ外国の留学生なんですよ。困ったことがあれば何でも言ってくださいね』
『他国の人間特有の悩みがあるかと思います。同じ境遇の者にしか分からないこともありますし、いつでも相談してくださいね』
などなど。
僕は『留学生』という武器を最大限に活かし、着実に彼我の距離を詰めていった。
他人が友人になり、やがて親友に近しい存在となって。ここからもう1ランク上の存在である、『恋人』への到達も夢ではない――
と思っていた矢先、事件は起きてしまったのだった……。
『え……!? 婚約、した……!?』
だって一目惚れは『一目』、相手について何も知らないんだ。そんな状態で他者を好きなるはずがないじゃないか。
それは一種のご都合主義。
まともなストーリーが浮かばなかった脚本家や作家が、物語の登場人物の恋を楽に進めるために用意した感情だと考えていた。
あの時までは――。
ふたつ隣にある国フェレッセオの伯爵令嬢エリス。
そこにどういった事情があったかは分からない。その人は僕が3回生となった年の春、1年だけの留学生として僕のクラスに現れたのだった。
優しげで少しだけ垂れた、宝石のようなブルーの瞳が印象的な目。品を感じる小さめの鼻。花びらのような、ピンク色の唇。金糸のようなブロンド。
挙げろと言われたらいくらでも挙げることのできる、美点の塊。彼女は地上に降り立った美の女神と言っても過言ではない美しさを持っていて、一目で目と心を奪われた。
そう。
僕はあの日、彼女に一目惚れをしてしまったのだった。
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エリス・レイラマイルは、何に変えても手に入れたい女性。だから僕はすぐさま動き出した。
『僕も貴方と同じ外国の留学生なんですよ。困ったことがあれば何でも言ってくださいね』
『他国の人間特有の悩みがあるかと思います。同じ境遇の者にしか分からないこともありますし、いつでも相談してくださいね』
などなど。
僕は『留学生』という武器を最大限に活かし、着実に彼我の距離を詰めていった。
他人が友人になり、やがて親友に近しい存在となって。ここからもう1ランク上の存在である、『恋人』への到達も夢ではない――
と思っていた矢先、事件は起きてしまったのだった……。
『え……!? 婚約、した……!?』
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