35 / 54
第20話 絶望のなかで クリストフ視点(2)
しおりを挟む
「…………………………そうだ……その手があった……! 諦めなくていいんだ!」
太陽が再び昇って昼になっているから、恐らくはあれから12時間くらいが経った頃だった。ふと僕の中に、名案が降りてきたのだった。
「エリスと一緒に暮らせる方法が、あった……! アレの心をエリスにしてしまえばいいんだ……!!」
――洗脳と調教――。
それらを使って『アニエス・ローレラル』という人格を崩壊させ、一度頭の中を真っ白にさせる。その後エリスの思考、趣味嗜好を植え付けたら、アニエス・ローレラルは完全なるエリス・レイラマイルになるんだ!!
「見た目がエリスで、中身もエリス。だったらそれは、エリス本人だ!!」
エリスと異なる点が何一つないんだ。エリスに決まっている。
エリスである以外、あり得ない。
「ははは、ははは。どうして最初から気付かなかったんだ」
ウチに連れて来た時、すぐにそうしていたら傷付くことはなかったのに。きっと僕の中にある優しさが、その選択肢が浮かばないようにしていたんだろうな。
ふん、馬鹿な女だ。
余計な真似をしなければ、人並みの人生を送れていたのにな。
「確か方法は…………手足を縛り……目隠しと耳栓で視覚と聴覚を絶ちを……。心を徹底的に衰弱させて……。その状態で耳栓だけを外し、耳元で吹き込みたい情報を繰り返せばいいんだったな」
とあるパーティーに出席した際、自慢げに語っていたのを聞いたことがある。
その人間は、理想的な人形を作れたと笑っていた。成功例があるなら上手くいくはずだ。
「…………とはいえ、失敗してしまったら大変だ。悲劇を防ぐために、聞いた話を忠実に再現しよう」
手足を拘束する際には金属製の『手錠』を使用して、目隠しは黒い布を使用し、耳栓はコルク製のものを使用していたらしい。そこですぐさま街を目指して、
「………………これにしよう。店主、そこにあるものをもらおう」
金属製の手錠2つと、真っ黒な布と、コルク製の耳栓を購入。100パーセント同じ製品ではないだろうけど、素材が一緒なら問題ないはず。
僕は無事計画に必要な道具を揃え、
「ローレ! 急いで戻るぞ!! 飛ばせるだけ飛ばせ!!」
出せる限界の速さで馬車を走らせ、屋敷に帰って来た。
「っ! クリストフ! よく戻って来てくれた!」
「心配していたのよっ! よかったわぁ……! ゆっくり紅茶とケーキでも――クリストフ……? なにか良いことでもあったの……?」
「やあ父さん母さん、心配をさせてしまってごめん。そう、そうなんだよ。とっても良いことがあったんだ」
準備は整っている。
さあ、始めようか。
エリスの誕生を。理想郷の創造を。
太陽が再び昇って昼になっているから、恐らくはあれから12時間くらいが経った頃だった。ふと僕の中に、名案が降りてきたのだった。
「エリスと一緒に暮らせる方法が、あった……! アレの心をエリスにしてしまえばいいんだ……!!」
――洗脳と調教――。
それらを使って『アニエス・ローレラル』という人格を崩壊させ、一度頭の中を真っ白にさせる。その後エリスの思考、趣味嗜好を植え付けたら、アニエス・ローレラルは完全なるエリス・レイラマイルになるんだ!!
「見た目がエリスで、中身もエリス。だったらそれは、エリス本人だ!!」
エリスと異なる点が何一つないんだ。エリスに決まっている。
エリスである以外、あり得ない。
「ははは、ははは。どうして最初から気付かなかったんだ」
ウチに連れて来た時、すぐにそうしていたら傷付くことはなかったのに。きっと僕の中にある優しさが、その選択肢が浮かばないようにしていたんだろうな。
ふん、馬鹿な女だ。
余計な真似をしなければ、人並みの人生を送れていたのにな。
「確か方法は…………手足を縛り……目隠しと耳栓で視覚と聴覚を絶ちを……。心を徹底的に衰弱させて……。その状態で耳栓だけを外し、耳元で吹き込みたい情報を繰り返せばいいんだったな」
とあるパーティーに出席した際、自慢げに語っていたのを聞いたことがある。
その人間は、理想的な人形を作れたと笑っていた。成功例があるなら上手くいくはずだ。
「…………とはいえ、失敗してしまったら大変だ。悲劇を防ぐために、聞いた話を忠実に再現しよう」
手足を拘束する際には金属製の『手錠』を使用して、目隠しは黒い布を使用し、耳栓はコルク製のものを使用していたらしい。そこですぐさま街を目指して、
「………………これにしよう。店主、そこにあるものをもらおう」
金属製の手錠2つと、真っ黒な布と、コルク製の耳栓を購入。100パーセント同じ製品ではないだろうけど、素材が一緒なら問題ないはず。
僕は無事計画に必要な道具を揃え、
「ローレ! 急いで戻るぞ!! 飛ばせるだけ飛ばせ!!」
出せる限界の速さで馬車を走らせ、屋敷に帰って来た。
「っ! クリストフ! よく戻って来てくれた!」
「心配していたのよっ! よかったわぁ……! ゆっくり紅茶とケーキでも――クリストフ……? なにか良いことでもあったの……?」
「やあ父さん母さん、心配をさせてしまってごめん。そう、そうなんだよ。とっても良いことがあったんだ」
準備は整っている。
さあ、始めようか。
エリスの誕生を。理想郷の創造を。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
落ちぶれて捨てられた侯爵令嬢は辺境伯に求愛される~今からは俺の溺愛ターンだから覚悟して~
しましまにゃんこ
恋愛
年若い辺境伯であるアレクシスは、大嫌いな第三王子ダマスから、自分の代わりに婚約破棄したセシルと新たに婚約を結ぶように頼まれる。実はセシルはアレクシスが長年恋焦がれていた令嬢で。アレクシスは突然のことにとまどいつつも、この機会を逃してたまるかとセシルとの婚約を引き受けることに。
とんとん拍子に話はまとまり、二人はロイター辺境で甘く穏やかな日々を過ごす。少しずつ距離は縮まるものの、時折どこか悲し気な表情を見せるセシルの様子が気になるアレクシス。
「セシルは絶対に俺が幸せにしてみせる!」
だがそんなある日、ダマスからセシルに王都に戻るようにと伝令が来て。セシルは一人王都へ旅立ってしまうのだった。
追いかけるアレクシスと頑なな態度を崩さないセシル。二人の恋の行方は?
すれ違いからの溺愛ハッピーエンドストーリーです。
小説家になろう、他サイトでも掲載しています。
麗しすぎるイラストは汐の音様からいただきました!
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
王太子様お願いです。今はただの毒草オタク、過去の私は忘れて下さい
シンさん
恋愛
ミリオン侯爵の娘エリザベスには秘密がある。それは本当の侯爵令嬢ではないという事。
お花や薬草を売って生活していた、貧困階級の私を子供のいない侯爵が養子に迎えてくれた。
ずっと毒草と共に目立たず生きていくはずが、王太子の婚約者候補に…。
雑草メンタルの毒草オタク侯爵令嬢と
王太子の恋愛ストーリー
☆ストーリーに必要な部分で、残酷に感じる方もいるかと思います。ご注意下さい。
☆毒草名は作者が勝手につけたものです。
表紙 Bee様に描いていただきました
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。
ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」
書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。
今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、
5年経っても帰ってくることはなかった。
そして、10年後…
「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる