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1話 動き出す運命
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「そう……。前世の、記憶……」
「信じられないが…………侵攻以外は――恐らく秘匿されていた部分以外は、証言が歴史と一致している。ミラの言葉を信じざるを得ないな」
目が覚めると私は別室にあるベッドで仰向けになっていて、介抱してくれていたお父様とお母様が傍にいました。幸いクロードさん達は室内にいなかったので全てを伝え、そうしたら二人は愕然としながらも理解してくれました。
「…………ローランド卿は、もういらっしゃらない……。怒りの矛先が子孫に向くのは、致し方ない事だな……」
「……あなたの前世がどうであれ、あたし達の娘であることには変わりないわ。だから……復讐に協力してあげたいのだけれど、復讐できる唯一の相手はあなたが好きな人……。どちらを選んでも、悲劇が訪れてしまうのよね……」
私の中にあるエリスの感情が、クロードさんを殺したいと訴えています。けれどミラとしての感情はクロードさんを愛していて、その逆。
二律背反しているせいで、どうにもできなくなっています。
「ミラ。エリスさん、だったよな? 彼女の心を説得することは、できないのか?」
「クロード殿は血の繋がりはあるものの、ローランド卿から見て何代も後の存在。無関係な人。その事実を使って、どうにか諦めてもらえないのかしら?」
「……………それは、無理なようです。どんな形でもいいからフォーレル家に復讐をしたい、そう訴えています」
現代に蘇ったエリスの感情は、『血』を憎んでいます。クロードさんがこの家に生まれている以上、それらを切り離すことはできません。
「今はクロードさんを見ただけで手が出そうですし、このお屋敷にいるだけで怒りが湧いてきています。……私は、あの人が大好きなのに……。どうすればいいのでしょうか……?」
「「………………」」
お父様とお母様も一緒になって考えてくれていますが、この部屋に新たな声が発生することはありません。
更に1分、2分、3分と、時間が過ぎっていって……。5分くらいが過ぎた頃でしょうか。椅子に腰を掛けていたお父様が、静かに立ち上がりました。
「とりあえずクロード殿達に、現況をお伝えしてくるとしよう。皆さん心配してくださっているからな」
「……すみません。お願いします」
「お前の気持ちが不変な事もしっかりと報告をして、クロード殿達にも思案を協力してもらってくる。きっと上手くいくから、ミラはもう少し休んでいなさい」
自分で思っていたより、顔色が悪かったのでしょう。お父様は私の肩に手を置いたあと、扉を開けて部屋を出ていきました。
「ミラ、クロード殿は優しく聡明な方よ。きっと。きっと解決方法を見つけてくださるから、今はゆっくり休みなさい」
「…………はい。そうさせてもらいます」
頭の中で二つの感情がぶつかり合うのは未体験で、頭がズキズキしてもいます。なのでお言葉に甘えて再びベッドに身体を沈め、ゆっくりと瞼を降ろしました。
そうしたら驚くくらいすぐに眠気が襲ってきて、その際に――。ふとこんな言葉が、頭の中に浮かび上がってきたのでした。
『世の中には、どうしても防げないことがある。けれど君が涙を流した時は、俺がその涙を拭い取るから。安心して、傍に居てくれ』
それは、祖父の葬儀での言葉。
真っすぐで力強さのある瞳と共に送られた、私にとって大事な言葉――。
「信じられないが…………侵攻以外は――恐らく秘匿されていた部分以外は、証言が歴史と一致している。ミラの言葉を信じざるを得ないな」
目が覚めると私は別室にあるベッドで仰向けになっていて、介抱してくれていたお父様とお母様が傍にいました。幸いクロードさん達は室内にいなかったので全てを伝え、そうしたら二人は愕然としながらも理解してくれました。
「…………ローランド卿は、もういらっしゃらない……。怒りの矛先が子孫に向くのは、致し方ない事だな……」
「……あなたの前世がどうであれ、あたし達の娘であることには変わりないわ。だから……復讐に協力してあげたいのだけれど、復讐できる唯一の相手はあなたが好きな人……。どちらを選んでも、悲劇が訪れてしまうのよね……」
私の中にあるエリスの感情が、クロードさんを殺したいと訴えています。けれどミラとしての感情はクロードさんを愛していて、その逆。
二律背反しているせいで、どうにもできなくなっています。
「ミラ。エリスさん、だったよな? 彼女の心を説得することは、できないのか?」
「クロード殿は血の繋がりはあるものの、ローランド卿から見て何代も後の存在。無関係な人。その事実を使って、どうにか諦めてもらえないのかしら?」
「……………それは、無理なようです。どんな形でもいいからフォーレル家に復讐をしたい、そう訴えています」
現代に蘇ったエリスの感情は、『血』を憎んでいます。クロードさんがこの家に生まれている以上、それらを切り離すことはできません。
「今はクロードさんを見ただけで手が出そうですし、このお屋敷にいるだけで怒りが湧いてきています。……私は、あの人が大好きなのに……。どうすればいいのでしょうか……?」
「「………………」」
お父様とお母様も一緒になって考えてくれていますが、この部屋に新たな声が発生することはありません。
更に1分、2分、3分と、時間が過ぎっていって……。5分くらいが過ぎた頃でしょうか。椅子に腰を掛けていたお父様が、静かに立ち上がりました。
「とりあえずクロード殿達に、現況をお伝えしてくるとしよう。皆さん心配してくださっているからな」
「……すみません。お願いします」
「お前の気持ちが不変な事もしっかりと報告をして、クロード殿達にも思案を協力してもらってくる。きっと上手くいくから、ミラはもう少し休んでいなさい」
自分で思っていたより、顔色が悪かったのでしょう。お父様は私の肩に手を置いたあと、扉を開けて部屋を出ていきました。
「ミラ、クロード殿は優しく聡明な方よ。きっと。きっと解決方法を見つけてくださるから、今はゆっくり休みなさい」
「…………はい。そうさせてもらいます」
頭の中で二つの感情がぶつかり合うのは未体験で、頭がズキズキしてもいます。なのでお言葉に甘えて再びベッドに身体を沈め、ゆっくりと瞼を降ろしました。
そうしたら驚くくらいすぐに眠気が襲ってきて、その際に――。ふとこんな言葉が、頭の中に浮かび上がってきたのでした。
『世の中には、どうしても防げないことがある。けれど君が涙を流した時は、俺がその涙を拭い取るから。安心して、傍に居てくれ』
それは、祖父の葬儀での言葉。
真っすぐで力強さのある瞳と共に送られた、私にとって大事な言葉――。
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