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6話 繰り返し始めようとする、歴史
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「予想外の出来事が起きて、狼狽してしまいましたが。これは、両家再興のチャンスやもしれませんな」
時は深夜1時過ぎ。ミラやクロード達が眠りについた、あとのこと。ナズリの自室に、ベルバとレルアが――二人の親が、集まっていました。
「ええ、そうですね。エリス・ワルツの一族が護っていた、今なお存在しているという秘宝……」
「そんなものがあれば、生活は大きく変わりますわね。財力と権力がまとめて手に入りますわ」
あいにくと秘宝の詳細は知りませんが、相当の価値を持つ宝であることは明白です。
秘宝を売って金にすれば――。三人の頭にはそんな邪な企みがあり、示し合わせたかのように集合していたのです。
「息子のおかげで、エリス・ワルツは心を許すようになってきていますわ。いずれは掌握できる時が来て、保護するなどと嘯けば、簡単に我々のものとなりますわね」
「うむ、そうですな。しかし……。あのエリス・ワルツが、いつまで存在し続けるのかが気がかりですな」
エリスは、突然現れた存在です。同じく、突然消えてしまう可能性があります。
「あなたが言うように自然消滅もそうだけど、満足して人格が消滅する心配もあるわ。クロード殿は殊更他人想いの方だから、明日の消滅も有り得る話なのよね……」
「帰宅してからのミラさん――エリス・ワルツの雰囲気を見ていると……。高そうですわね」
花瓶を避けなかったこと。そして、独りで全員の墓を建てたこと。この二つを経て、エリスの心は大きく変化しつつあります。
この地域でも、満足=霊の消滅は通説。そのため三人の中では、『急がないと』という焦りが生まれました。
「……仕方ありませんわね。少々強引ですが明日、保護するという名目で場所について触れてみましょうか」
「ワタシ達夫婦は、フォーレル家とは無関係。『血』を敵視している性質を逆手に取れば、ころっと引っかかってくれるかもしれませんわ」
「ああ、そうだといいな。……お互いにとって、な」
ニヤリ。ベルバの頬が、邪悪に緩みます。
「もし失敗した時は、力ずくで吐かせましょう。100%成功するとは限りませんが、『過去』を使えば確率は高いはずですぞ」
「ベルバ殿。具体的には、なにを考えていらっしゃるのかしら?」
「捕縛したのち、拷問をするのですよ。…………エリス・ワルツは一度死んでおり、その際の痛みと燃える炎が強く心に刻まれていますからな。その状況を再現してやれば、簡単に折れてくれるに違いないのですよ」
目覚めたミラが証言したものを再現し、身体を剣で傷付け炎を近づける。そうすれば魂が怯え、すぐに服従するだろう。
彼は、そんな恐ろしい行動を考えていました。
「確かに、それなら吐きそうね。さすがあなただわ」
「かつては文勲で名を馳せた家の当主だ、このくらいは造作もないさ。ただ、これには少々問題がある」
「あの子――。クロード、ですわね」
クロード・フォーレルは、紳士然とした青年。そのような真似を許すはずがありません。
「クロード殿をエリス・ワルツから離せば、何とかなるのですがな。ナズリ殿、家のお役目など何かありませんかな?」
「運がワタシ達の味方をしてくれていて、ちゃんとありますわよ。明日は正午より、当主同士の会談がありますの」
その予定は一か月以上前から決まっていて、怪しまれる心配は全くない。しかも移動を含めると4~5時間は費やすため、作業時間はたっぷりと確保できます。
「捕縛でしたら、一切抵抗できないように睡眠薬を用意しましょう。あの子が出発した後で薬師に届けさせ、事に移る。完璧ですわ」
「ナズリ殿のおかげで、上手くまとまりましたな! それでは明日の成功を祈って、乾杯と致しましょう」
怪しまれないよう――夜の談笑と偽るため持ってきていたグラスにワインを注ぎ、3人はにこやかに乾杯。こうしてこの世に再び、ワルツ一族の秘宝を狙う者が出現してしまったのでした。
時は深夜1時過ぎ。ミラやクロード達が眠りについた、あとのこと。ナズリの自室に、ベルバとレルアが――二人の親が、集まっていました。
「ええ、そうですね。エリス・ワルツの一族が護っていた、今なお存在しているという秘宝……」
「そんなものがあれば、生活は大きく変わりますわね。財力と権力がまとめて手に入りますわ」
あいにくと秘宝の詳細は知りませんが、相当の価値を持つ宝であることは明白です。
秘宝を売って金にすれば――。三人の頭にはそんな邪な企みがあり、示し合わせたかのように集合していたのです。
「息子のおかげで、エリス・ワルツは心を許すようになってきていますわ。いずれは掌握できる時が来て、保護するなどと嘯けば、簡単に我々のものとなりますわね」
「うむ、そうですな。しかし……。あのエリス・ワルツが、いつまで存在し続けるのかが気がかりですな」
エリスは、突然現れた存在です。同じく、突然消えてしまう可能性があります。
「あなたが言うように自然消滅もそうだけど、満足して人格が消滅する心配もあるわ。クロード殿は殊更他人想いの方だから、明日の消滅も有り得る話なのよね……」
「帰宅してからのミラさん――エリス・ワルツの雰囲気を見ていると……。高そうですわね」
花瓶を避けなかったこと。そして、独りで全員の墓を建てたこと。この二つを経て、エリスの心は大きく変化しつつあります。
この地域でも、満足=霊の消滅は通説。そのため三人の中では、『急がないと』という焦りが生まれました。
「……仕方ありませんわね。少々強引ですが明日、保護するという名目で場所について触れてみましょうか」
「ワタシ達夫婦は、フォーレル家とは無関係。『血』を敵視している性質を逆手に取れば、ころっと引っかかってくれるかもしれませんわ」
「ああ、そうだといいな。……お互いにとって、な」
ニヤリ。ベルバの頬が、邪悪に緩みます。
「もし失敗した時は、力ずくで吐かせましょう。100%成功するとは限りませんが、『過去』を使えば確率は高いはずですぞ」
「ベルバ殿。具体的には、なにを考えていらっしゃるのかしら?」
「捕縛したのち、拷問をするのですよ。…………エリス・ワルツは一度死んでおり、その際の痛みと燃える炎が強く心に刻まれていますからな。その状況を再現してやれば、簡単に折れてくれるに違いないのですよ」
目覚めたミラが証言したものを再現し、身体を剣で傷付け炎を近づける。そうすれば魂が怯え、すぐに服従するだろう。
彼は、そんな恐ろしい行動を考えていました。
「確かに、それなら吐きそうね。さすがあなただわ」
「かつては文勲で名を馳せた家の当主だ、このくらいは造作もないさ。ただ、これには少々問題がある」
「あの子――。クロード、ですわね」
クロード・フォーレルは、紳士然とした青年。そのような真似を許すはずがありません。
「クロード殿をエリス・ワルツから離せば、何とかなるのですがな。ナズリ殿、家のお役目など何かありませんかな?」
「運がワタシ達の味方をしてくれていて、ちゃんとありますわよ。明日は正午より、当主同士の会談がありますの」
その予定は一か月以上前から決まっていて、怪しまれる心配は全くない。しかも移動を含めると4~5時間は費やすため、作業時間はたっぷりと確保できます。
「捕縛でしたら、一切抵抗できないように睡眠薬を用意しましょう。あの子が出発した後で薬師に届けさせ、事に移る。完璧ですわ」
「ナズリ殿のおかげで、上手くまとまりましたな! それでは明日の成功を祈って、乾杯と致しましょう」
怪しまれないよう――夜の談笑と偽るため持ってきていたグラスにワインを注ぎ、3人はにこやかに乾杯。こうしてこの世に再び、ワルツ一族の秘宝を狙う者が出現してしまったのでした。
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