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補完編その2 ロンド編の裏側
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「ロンドさんがお手紙をもらったと言っているのであれば、あの人はアルベール様の仲間。『王族の地位を使って脅されている』という可能性もありましたが、やはり違っていたようですね」
大勢の前で婚約を破棄されてから、5日後。ヘイゼル・ロンドさんの周辺を色々と調べた私は、家にある自分の部屋で状況を整理していました。
急に1人で下校をするようになり、その帰りに様々な高級品を買い漁るようになったロンドさん。どうやら彼は自らの意思でアルベール様に協力し、大金を得ていたようです。
アルベール様は、校舎内――従者の目がない場所で欲深そうな男子生徒を匿名の手紙で誘い、あの人は二つ返事で応じた。
ロンドさんは証拠隠滅のためにその手紙を細かく破ってゴミ箱に捨てていましたが、残念ですね。どんなに細かく破っても、繋げれば読めるようになるのですよ。
「さて。これでロンドさんは予想通り、黒だと確定しました。黒であるのならば、容赦は要りませんね」
時刻は午前1時8分。校舎やその周辺には人がいなくなっていて、安全に決行できる時間となりました。
なので私はお父様とお母様を起こさないよう慎重に動き、家をあとにしたのでした。
〇〇〇
下校前に一階の女子トイレの鍵を開けていた私は、そこを使って校舎に侵入。念のため校内を回って無人を確認し、自分のクラスである2年4組にやって来ました。
教室の後ろ側にある、鍵のかかった用具入れ。そこにあるロンドさん用の空間に、報酬こと大金が隠されているのです。
ちなみになぜここにあると分かったのかといいますと、それはロンドさんがいつも最後の1人になるまで教室に残っていたから。そのためおかしいと思い教室内にある掃除道具入れに潜んでいたら、開けてお金を取り出した、というわけです。
「ロンドさんがいちいちお金を取り出さないといけなくなったのは、真面目なお父様のおかげ。お父様には感謝をしないといけませんね」
私はロンド家がある北北西の方角に頭を下げ、ロンドさん用の用具入れの前でしゃがみ込みます。
この扉は、錠によって開けられないようになっていますからね。私が開けられるように、これから解錠します。
「しかし、驚きました。錠は、こんな身近なもので開けられるのですね」
鍵穴にヘアピンを2つ押し込みながら、私は数日間の読書を振り返ります。
こちらにある鍵を開けるために錠に関する本を大量に読み、構造などの知識を頭に叩き込みました。そうしたら『ヘアピンが2つあれば開けられるのでは?』という結論に至り、家で実際に試してみたらできてしまったのです。
「鍵の代わりになるものを用意すれば可能だとは思っていましたが、それよりも更に簡単でしたね。助かります」
カチャカチャ カチャカチャ カチャカチャ カチャリ
何度も練習したため1~1分半ほどで解錠に成功し、無事外れました。なので無断で開けさせていただき、中からお札の束を1つ取り出しました。
「これが、アルベール様からのお礼の品。そして、アルベール様がミスを犯してしまった品、ですね」
ロンドさんがお店で買い物をしている時に、使用しているお札を見ておかしいと思ったんです。
そのお札は、あまりにも綺麗。汚れどころか皺一つついておらず、どう見ても流通していないものでした。
「発行されたお札が、そのまま大量に貴族のもとに――個人のもとに届くことは、有り得ません。有り得ないのであればコレはアルベール様が特別に手配したもので、そうであるのなら依頼の証拠となります」
こんな真似ができるのは、王族だけですからね。動かぬ、しかも強力な証拠となります。
「アルベール様、油断していましたね。こんな細かな部分に注目する人間が、世の中にはいるのですよ」
束の中からお札を1枚抜き、束を元々あった位置に戻し、扉に鍵をかけて立ち上がります。
これでロンドさんに関する証拠は、確保できました。あとは……そうですね……。現在は、他の方の問題も進行中ですので……。明後日2人きりで話せる場を設けて、そこで発表するようにしましょう。
「はい、これでお1人は片が付きました。残りは今のところ、3人ですね」
レフィ・サネルさん。ライザ・レナルさん。アリス・ハルファさん。
皆さんなかなか巧みに悪事を働いていましたが、すでに尻尾は掴んでいます。
「あとは引きずるだけ、ですね。……さて、こちらはいつ頃仕掛けましょうか」
そんなことを呟きながら、私は暗い教室を去ったのでした――。
大勢の前で婚約を破棄されてから、5日後。ヘイゼル・ロンドさんの周辺を色々と調べた私は、家にある自分の部屋で状況を整理していました。
急に1人で下校をするようになり、その帰りに様々な高級品を買い漁るようになったロンドさん。どうやら彼は自らの意思でアルベール様に協力し、大金を得ていたようです。
アルベール様は、校舎内――従者の目がない場所で欲深そうな男子生徒を匿名の手紙で誘い、あの人は二つ返事で応じた。
ロンドさんは証拠隠滅のためにその手紙を細かく破ってゴミ箱に捨てていましたが、残念ですね。どんなに細かく破っても、繋げれば読めるようになるのですよ。
「さて。これでロンドさんは予想通り、黒だと確定しました。黒であるのならば、容赦は要りませんね」
時刻は午前1時8分。校舎やその周辺には人がいなくなっていて、安全に決行できる時間となりました。
なので私はお父様とお母様を起こさないよう慎重に動き、家をあとにしたのでした。
〇〇〇
下校前に一階の女子トイレの鍵を開けていた私は、そこを使って校舎に侵入。念のため校内を回って無人を確認し、自分のクラスである2年4組にやって来ました。
教室の後ろ側にある、鍵のかかった用具入れ。そこにあるロンドさん用の空間に、報酬こと大金が隠されているのです。
ちなみになぜここにあると分かったのかといいますと、それはロンドさんがいつも最後の1人になるまで教室に残っていたから。そのためおかしいと思い教室内にある掃除道具入れに潜んでいたら、開けてお金を取り出した、というわけです。
「ロンドさんがいちいちお金を取り出さないといけなくなったのは、真面目なお父様のおかげ。お父様には感謝をしないといけませんね」
私はロンド家がある北北西の方角に頭を下げ、ロンドさん用の用具入れの前でしゃがみ込みます。
この扉は、錠によって開けられないようになっていますからね。私が開けられるように、これから解錠します。
「しかし、驚きました。錠は、こんな身近なもので開けられるのですね」
鍵穴にヘアピンを2つ押し込みながら、私は数日間の読書を振り返ります。
こちらにある鍵を開けるために錠に関する本を大量に読み、構造などの知識を頭に叩き込みました。そうしたら『ヘアピンが2つあれば開けられるのでは?』という結論に至り、家で実際に試してみたらできてしまったのです。
「鍵の代わりになるものを用意すれば可能だとは思っていましたが、それよりも更に簡単でしたね。助かります」
カチャカチャ カチャカチャ カチャカチャ カチャリ
何度も練習したため1~1分半ほどで解錠に成功し、無事外れました。なので無断で開けさせていただき、中からお札の束を1つ取り出しました。
「これが、アルベール様からのお礼の品。そして、アルベール様がミスを犯してしまった品、ですね」
ロンドさんがお店で買い物をしている時に、使用しているお札を見ておかしいと思ったんです。
そのお札は、あまりにも綺麗。汚れどころか皺一つついておらず、どう見ても流通していないものでした。
「発行されたお札が、そのまま大量に貴族のもとに――個人のもとに届くことは、有り得ません。有り得ないのであればコレはアルベール様が特別に手配したもので、そうであるのなら依頼の証拠となります」
こんな真似ができるのは、王族だけですからね。動かぬ、しかも強力な証拠となります。
「アルベール様、油断していましたね。こんな細かな部分に注目する人間が、世の中にはいるのですよ」
束の中からお札を1枚抜き、束を元々あった位置に戻し、扉に鍵をかけて立ち上がります。
これでロンドさんに関する証拠は、確保できました。あとは……そうですね……。現在は、他の方の問題も進行中ですので……。明後日2人きりで話せる場を設けて、そこで発表するようにしましょう。
「はい、これでお1人は片が付きました。残りは今のところ、3人ですね」
レフィ・サネルさん。ライザ・レナルさん。アリス・ハルファさん。
皆さんなかなか巧みに悪事を働いていましたが、すでに尻尾は掴んでいます。
「あとは引きずるだけ、ですね。……さて、こちらはいつ頃仕掛けましょうか」
そんなことを呟きながら、私は暗い教室を去ったのでした――。
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