私のせいで婚約破棄ですか？ 思い当たることがないのですが？ 番外編

補完編その３ 少女３人編の裏側

（やはり、おかしいですね。私への攻撃が、不自然な形で発生しています）

　大勢の前で婚約破棄をされてから、４日後のお昼休み。つい数分前にトイレの個室で頭から水をかけられた私は、女子用更衣室で体操服に着替えながら考え事をしています。

『無視』と『悪口』から始まり、２日目に『教科書を破く』など、３日目に『机に花瓶』などが追加され、今日はついに肉体への攻撃が行われました。

　このエスカレート具合は、明らかに異常です。

　私が何をされても平然としている。相手は王太子で、リコ・フェリアを敵視しておけば印象アップに繋がる。という要素があるにはあるですが――。それでも、この速度は普通有り得ません。もしも実際に起こるのであれば、もっと時間をかけてなだらかに発生してゆくはずなのです。

　なぜなら所謂イジメをしているのは、周りの生徒。自分達には何一つ害が及んでいない人達だからです。

（どんなに不愉快でも、自身に悪影響がないのであれば怒りの大きさはある程度のもの。少なくとも当分は、無視や悪口だけのはずです）

　不満に思い、その感情をぶつける。けれど張本人がケロっとしているため余計に腹が立ち、怒りを抑え切れなくなって過激なことに踏み切る。
　通常はこのような流れになるはずなのに、今回は翌日には一段階、翌々日にはもう一段階と、酷さが増しています。有り得ない速度で、着実に、増加していっています。

（だとしたら、そうですね。これは、人為的。誰か、扇動している方がいらっしゃいますね）

　人は『誰かがやっていたら自分もやっていい』と思ってしまう節がある、生き物ですからね。何者かが率先して行い、学内にそういう雰囲気を作ろうとしているのでしょう。
　恐らくはアルベール様が、私こと邪魔者を精神的に追い詰めるために。

（……私が水をかけられた際、去っていく足音は３つありました。２日前に破られた本は、３冊でした。となると犯人は３人組、それも親しい３人組ですね）

　先ほど走り去る靴の音は均一で、無意識的に歩幅を合わせているようでした。もし面識のない協力者がやっているのであればそうはなりませんし、そもそも――。リスクを考えると、見ず知らずの３人よりも３人全員が知り合いの方が都合がいいですよね。

（つまりこの校舎内にいる３人組が、犯人でありアルベール様の協力者ということ。アルベール様と手を組んでいるのならば、容赦は要りませんね）

　着替え終えた私はもう一度タオルで髪の毛を拭き、更衣室を出発。犯人探しを始めたのでした――。