私のせいで婚約破棄ですか？ 思い当たることがないのですが？ 番外編

補完編その４ サゼール・ミレヤ校長編の裏側

（おや？　アルベール様が、どこかに向かわれていますね）

　大勢の前で婚約破棄をされてから、６日目の放課後。今日もアルベール様本人の周辺を探っていたら、お一人で廊下を歩き始めました。

　ここ数日はすぐに帰って一目惚れした女性のお家を目指していたのに、今日はまだ残っています。
　あの方は興味を持つとそこにしか目がいかなくなるため、この行動は変です。何か、あるようですね。

（ロンドさんやレフィ・サネルさん以外にも、協力者がいるかもしれません。むしろもう一つくらい用意している可能性が、高いです。つけてみましょう）

　最近私は、変装の勉強をしています。なので念のため髪型と歩き方を素早く変えて別人になりすまし、あちらにこちらの姿が見えない距離を保って追いかけます。

（アルベール様は廊下を真っすぐ進んで、階段をのぼるのですね。そのあとは…………２階で止まり、また廊下を進むのですね）

　そうしてアルベール様は校長室の前で止まり、「ミレヤ校長。生徒会の件で報告に参りました」とノックをして中に入りました。
　なるほど。生徒会関連の報告、だったのですね。
　流石は、文武両道なアルベール様。昼間は『報告の書類は今夜、家の者に書かせるか』と独りごちていらっしゃったのに、もう完成していたのですね。

（今のは、万が一に備えての保険。中では、大事な話をされているようですね）

　しかもその相手は、様々な方面にお顔が利く学校のトップ。これは、盗み聞きをさせていただくしかありません。

（これまでの方と違い、規模が大きな悪巧みになりそうです。一体どのような事を企んでいらっしゃるのでしょうか）

　まずは校長室の隣にある部屋の鍵を開け、そこにある壁に耳をくっつけます。これで盗聴の準備は完了で、私は目を閉じ聴覚を集中させたのでした。