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第8話 3人目へのお礼 リュシエンヌ視点(1)
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「……なぜ貴方がこんなものを……!? いつの間に集めたの……!?」
「内緒。アンタに教えられることは何もないわ」
すっかりお馴染みとなった、校舎裏。もらった証拠3点を提示されたパトリシアは目を見開き、あたしは肩を竦める。
もし教える気があっても、なにも教えられないのよね。だってあたしにも、プレゼントをした具体的な意図が分かっていないのだから。
「……ただの男爵令嬢ではなかった……はずは、ない……。力を隠していたのなら、何か月も唯々諾々と従わない……。どうなっているんですの……!?」
「だから、教えられることはないって言ったでしょ? 話を進めるわよ」
進めた先にあるのは、もちろん『従わないと証拠を敵対貴族に渡すぞ』。ヴァランティーヌとマチルドと同格の人間が、コレをどうこうできるはずがなくて――
「従う、従わない。どうする?」
「………………従い、ます……」
――2人と同じように、負けを認める。あたしが差し出した書類にサインを書き、拇印を捺した。
ここも同じく、2枚目についてよく知らないまま。
「……次は、なにをすればいいんですの――いいのですか……?」
「2つめの命令。それは、これからアンタが『わたし』にしたことをさせる。……パトリシア。アンタがわたしにしたことって、どんなことがあったっけ?」
「……ネックレスを、踏んづけて壊す……。こっ、こちらを差し出せばよろしいのですかっ!?」
「違うわよ。そんなものに興味はないわ」
慌てて外した、大粒のダイヤモンドが輝くペンダント。コレは単に好みのアイテムだから身につけていて、このペンダントが壊れても大したダメージはない。
それにこの女が悪いのであってそのペンダントに罪はないから、意味もなく壊さない。
「他にも、たくさんあるでしょ? わたしに何をやってきたのか、言ってみて」
「は、はい……。背中を突き飛ばして、転ばせてしまった……。水をかけた……。頭を叩いた……。ペンで背中にゴミと書いた……。遺書を書かせて嗤った……。い、今思えばとんでもないことを――」
「そんな言葉は要らない。他にはなにをした?」
「……胡椒を鼻から吸い込ませて、苦しむ姿を見て嗤った……。サルの真似をさせた……。押しすぎると身体に悪いというツボを何度も押した……。脛を蹴った……。その場で何十回も回転させて、目を回して動けなくした……。こんなことを、してしまいました……」
「他には?」
「ほ、他ですか……? 他は……。他は……。そ、それ以外は、していないかと、思います……。残りはヴァランティーヌさんとマチルドさんが行っていて……。わたくしが行ったものは、以上です……」
へぇ、そうなんだ。
これだけしか、やっていないのね。
「……はぁ。5つも忘れている上に、肝心のアレが出てこないだなんてね。これだから旗が立つのよ」
「5つ!? 肝心、ですか……!? 申し訳ございません! わたくしはっ、なにをしてしまったのでしょうか……!?」
「『肝心』はこれからやらせることだから、教えてあげる。アンタはね」
なにをしたのかというと――
「わたしに腐りかけの残飯を食べさせた。だからこれから、腐りかけの残飯を食べてもらうわよ」
「内緒。アンタに教えられることは何もないわ」
すっかりお馴染みとなった、校舎裏。もらった証拠3点を提示されたパトリシアは目を見開き、あたしは肩を竦める。
もし教える気があっても、なにも教えられないのよね。だってあたしにも、プレゼントをした具体的な意図が分かっていないのだから。
「……ただの男爵令嬢ではなかった……はずは、ない……。力を隠していたのなら、何か月も唯々諾々と従わない……。どうなっているんですの……!?」
「だから、教えられることはないって言ったでしょ? 話を進めるわよ」
進めた先にあるのは、もちろん『従わないと証拠を敵対貴族に渡すぞ』。ヴァランティーヌとマチルドと同格の人間が、コレをどうこうできるはずがなくて――
「従う、従わない。どうする?」
「………………従い、ます……」
――2人と同じように、負けを認める。あたしが差し出した書類にサインを書き、拇印を捺した。
ここも同じく、2枚目についてよく知らないまま。
「……次は、なにをすればいいんですの――いいのですか……?」
「2つめの命令。それは、これからアンタが『わたし』にしたことをさせる。……パトリシア。アンタがわたしにしたことって、どんなことがあったっけ?」
「……ネックレスを、踏んづけて壊す……。こっ、こちらを差し出せばよろしいのですかっ!?」
「違うわよ。そんなものに興味はないわ」
慌てて外した、大粒のダイヤモンドが輝くペンダント。コレは単に好みのアイテムだから身につけていて、このペンダントが壊れても大したダメージはない。
それにこの女が悪いのであってそのペンダントに罪はないから、意味もなく壊さない。
「他にも、たくさんあるでしょ? わたしに何をやってきたのか、言ってみて」
「は、はい……。背中を突き飛ばして、転ばせてしまった……。水をかけた……。頭を叩いた……。ペンで背中にゴミと書いた……。遺書を書かせて嗤った……。い、今思えばとんでもないことを――」
「そんな言葉は要らない。他にはなにをした?」
「……胡椒を鼻から吸い込ませて、苦しむ姿を見て嗤った……。サルの真似をさせた……。押しすぎると身体に悪いというツボを何度も押した……。脛を蹴った……。その場で何十回も回転させて、目を回して動けなくした……。こんなことを、してしまいました……」
「他には?」
「ほ、他ですか……? 他は……。他は……。そ、それ以外は、していないかと、思います……。残りはヴァランティーヌさんとマチルドさんが行っていて……。わたくしが行ったものは、以上です……」
へぇ、そうなんだ。
これだけしか、やっていないのね。
「……はぁ。5つも忘れている上に、肝心のアレが出てこないだなんてね。これだから旗が立つのよ」
「5つ!? 肝心、ですか……!? 申し訳ございません! わたくしはっ、なにをしてしまったのでしょうか……!?」
「『肝心』はこれからやらせることだから、教えてあげる。アンタはね」
なにをしたのかというと――
「わたしに腐りかけの残飯を食べさせた。だからこれから、腐りかけの残飯を食べてもらうわよ」
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