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第11話 あの日から5年後~その時を待つ男~ オスカー視点

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「…………おかしい。どうなっているんだ……?」

 刑が確定してから5年後。自由の身となった日。5年ぶりに大地を踏んだ俺は、当惑していた。

「……どうして……。衰退が始まっていないんだ……?」

 世間では以前よりも多くのコンテストが実施されていたり、有志たちによるレベルの高いコンペや企画展が盛んに催されたりしていた。
 衰退するどころか……。あの頃よりも、遥かに盛り上がっていたのだ。

「アリスも引き続き作品を発表していて……。国外でも有名になっている……。王妃だからと持ち上げられているだけなのに……。そんなヤツが、第一線を走り牽引している有様なのに……。なぜこんな状態になっているんだ……!?」

 慣れ合い。贔屓。不正。それらは全体の実力を下げる愚行の中の愚行で、それが5年間も行われ続けているのに……。どうなっている……!?

「………………もしかして…………。俺の考えが、すべて間違っていた……?」

 アリスの高評価も受賞も、実力……? こちらにはスポットライトが当たらないのは、実力がなかったから……?
 なにもかも、俺の嫉妬によるもの……?

「ちっ、違う! そんなはずはない!! 俺は画家としての矜持を持つ者なのだからな!」

 なので、それはあり得ない。
 だとすると…………あれか。王太子妃であり王妃が誕生し、その人は絵を趣味としていた。それによって更に多くの人間が絵を描き始め、それによって盛況となっているのだろう。

「この活気は、参加人数の激増によるもの。数が多いから業界が盛り上がっているだけであって、実力であり質の低下は着々と進んでいる」

 つまり。人数的な最盛期を過ぎれば、一気に落ちてゆく。王族に関する要因が、衰退速度を遅くしていただけだったんだ!

「となれば、結局は予定通り。これから時間の経過に比例して、この国の文化は落ちぶれてゆく」

 例えるなら、前評判だけは高い新規店のようなものだ。時間と共に化けの皮が剥がれ、客足が減り、やがて無様に閉店となる。

「始まっていないことに苛立ちを覚えていたが、こうして外で変化を眺めていられるのは悪くはない。アリス、ジェイド。感謝するぞ……!」

 お前達のおかげで、衰退をじかに感じることができるようになった。
 ふふふふふ。これから、楽しみだな?

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