前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず

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第18話 その頃のアルノー~執務室内でのやり取りー 俯瞰視点

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「おいっ! あの件はどうなっているんだ! まだ見つからないのか……!?」

 メギテイズ侯爵邸内にある、執務室。そこでは父モリスが息子同様痺れを切らし、担当者の一人マランを呼び寄せていました。

「あれからもう一週間だぞ!? まだ一人も用意・・できないとはどういうことだ!? お前達は何をやっていたんだっ!? 探すふりをして遊び惚けていたんじゃないだろうなっ!?」
「めっ、滅相もございませんっ。わたくしどもは全員が、粉骨砕身で動いておりました。ただ……」
「ただ? なんだ?」

 激しい怒りを含んで聞き返した、モリス。そんな彼の表情は、すぐに一変することとなってしまいます。
 なぜならば――

「候補者に相応しい有能なご令嬢は、すでに十八名も見つかっているのですが……。その方々は等しく、『アルノー様の候補者になるつもりはない」と即答されたのでございます……」

 こういった返事が、やって来たからです。
『また土壇場で大問題が起きてしまったら、可愛い息子が傷ついてしまう』、『それは看過できない!』。そんな理由でモリスは、調査の際に『アルノーと婚約したいと強く思っているのか?』『何があってもその意思を貫くのか?』という主旨の確認を行うよう注文をつけていたのです。

「な、なんだと……? 婚約する相手は息子、あのアルノーなのだぞ……? 我がメギテイズ侯爵家の次期当主で、メギテイズ家有史以来の美形で、強烈かつ圧倒的なカリスマ性を持つ男なのだぞ……? 実際に5人もの伯爵令嬢を虜にしていた、かつてそんな5人を即答で頷かせた、とてつもなく稀有な美男なのだぞ……? それが、即答で否定だって……!?」
「……申し上げにくいのですが……。等しく、即答でございました……」
「………………なっ、なぜだ!? なぜそうなる!? 十八人全員はっ、異常だろう!? どうなっているんだっ!? もちろんっ、そう返事をした理由の調査をっ、解明を行っているのだろうなっ!?」
「実を言いますと本日把握が完了し、こたびの招集がなくとも報告に上がる所存でございました。…………くだんの十八名が、アルノー様を拒否される理由。そちらは、コレット様、イザベル様、エステル様、ゾエ様による、一斉辞退が大きく関わっておりました」

 トラブルが原因のエレーヌ様はともかくとして、あんなにも夢中になられていた4人が突然身を引くのはおかしい――。
 あんなにも犬猿の仲だった4人が、あんな風に仲良くしているのはおかしい――。
 きっと、辞退したくなるような何か問題があったんだ――。

 アルノーが暴飲によって寝込んでいる間に、社交界でそんな噂が広まっていたのです。
 そのため彼を求めるものはもう一人もおらず、そのため――


「なんてことだ……!」

「どうしても、無理だというのか……!?」

「頷く者は、どこにもいないというのか……!?」


 父モリスは先ほど、このように激しく動揺していたのでした。
 そして、そのあとすぐ――。


((父上と…………これは…………。新たな候補者の…………調査担当者のひとりが、話しをしているのか……? …………そこで、なんの話をしているんだ……?))


 扉のすぐそばで聞き耳を立て始めたことにより、やがて、アルノーはその詳細を把握してしまい――

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