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第20話 決行される時 俯瞰視点(1)
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(………………お前ら。準備はいいな?)
(ええ。できていますよ)
(こっちも問題ありません)
(あっしも――他も、おなじく問題なし。全員、OKっスよ)
すっかり闇が支配した、漆黒の空の下。同色の服に身を包んだ男7人が、暗闇の中で佇んでいました。
彼らは一般市民ではなく、先日アルノーが雇った裏世界の住人たち。もう間もなくこの場に現れる、エリュエール伯爵家の馬車を――ターゲットであるエレーヌ・エリュエールが乗った馬車を襲撃するため、こうして闇に紛れて待ち構えていたのです。
(ボス。過去最大レベルで、入念に準備を整えてますよ)
(なにせ今回のターゲットは、貴族のご令嬢様。エレーヌ・エリュエール様なんですからねぇ)
(相手が相手で、しかも――。あんなオマケつき)
(気合の入り方も段違いですよ)
予想以上の大金、いつも以上の報酬をもらえる。そちらも魅力ではありましたが、ソレが一瞬で霞んでしまう『要望』がこの作戦には存在していました。
数日前にアルノーが、従者や御者の反対を押し切ったあとのこと。彼がこの件を7人にオーダーした際に、
――標的ことエレーヌを、好きにしても構わない――。
――殺す以外なら、どんなことをしても構わない――。
――むしろ、推奨する――。
――遠慮なく、思う存分本能に従ってくれ――。
そんな嬉しい嬉しいオプションがつけられていたため、彼らはいつも以上にやる気になっていたのです。
(噂には聞いていたが、実際に見てみるとそれ以上だったよなぁ。エリュレールお嬢様は)
(顔も良し、スタイルも良し。そんな貴族令嬢様を、好きなだけ…………へへへへへ。想像しただけでヨダレが出ちまいますぜ)
(…………おい、ドニアック、ギャヴィン。お前ら、もしや――)
(いえいえ、まさか。そんなつもりは微塵もありませんよ)
(ははっ、ちゃんと分かってますって。まずは兄貴からって、分かってますっスよ)
(なら、いい。…………さぁて、おいしい獲物が来たようだな。お前ら、いくぞ!)
下劣な目をして笑い合っていた彼らのソレが鋭利になり、周囲の空気が一瞬にして冷たくなります。
こう見えても彼らは全員が、その道のプロフェッショナル。成功率100%の超凄腕であり、これまで逃した獲物はありません。
そんな恐ろしい……伯爵家が相手でも完遂させてしまえる集団が、エリュエール家の馬車をロックオン。一様に舌なめずりをしたあと、7つの『黒』が音もなく動き始めて――
「こんな暗がりに人がいるなんて、驚いたな。君達は、そこで何をしているんだい?」
――7人全員が、鋭く静かな一歩を踏み出した刹那でした。彼らの後方から不意に、中性的な声音が一つ聞こえてきたのでした。
(ええ。できていますよ)
(こっちも問題ありません)
(あっしも――他も、おなじく問題なし。全員、OKっスよ)
すっかり闇が支配した、漆黒の空の下。同色の服に身を包んだ男7人が、暗闇の中で佇んでいました。
彼らは一般市民ではなく、先日アルノーが雇った裏世界の住人たち。もう間もなくこの場に現れる、エリュエール伯爵家の馬車を――ターゲットであるエレーヌ・エリュエールが乗った馬車を襲撃するため、こうして闇に紛れて待ち構えていたのです。
(ボス。過去最大レベルで、入念に準備を整えてますよ)
(なにせ今回のターゲットは、貴族のご令嬢様。エレーヌ・エリュエール様なんですからねぇ)
(相手が相手で、しかも――。あんなオマケつき)
(気合の入り方も段違いですよ)
予想以上の大金、いつも以上の報酬をもらえる。そちらも魅力ではありましたが、ソレが一瞬で霞んでしまう『要望』がこの作戦には存在していました。
数日前にアルノーが、従者や御者の反対を押し切ったあとのこと。彼がこの件を7人にオーダーした際に、
――標的ことエレーヌを、好きにしても構わない――。
――殺す以外なら、どんなことをしても構わない――。
――むしろ、推奨する――。
――遠慮なく、思う存分本能に従ってくれ――。
そんな嬉しい嬉しいオプションがつけられていたため、彼らはいつも以上にやる気になっていたのです。
(噂には聞いていたが、実際に見てみるとそれ以上だったよなぁ。エリュレールお嬢様は)
(顔も良し、スタイルも良し。そんな貴族令嬢様を、好きなだけ…………へへへへへ。想像しただけでヨダレが出ちまいますぜ)
(…………おい、ドニアック、ギャヴィン。お前ら、もしや――)
(いえいえ、まさか。そんなつもりは微塵もありませんよ)
(ははっ、ちゃんと分かってますって。まずは兄貴からって、分かってますっスよ)
(なら、いい。…………さぁて、おいしい獲物が来たようだな。お前ら、いくぞ!)
下劣な目をして笑い合っていた彼らのソレが鋭利になり、周囲の空気が一瞬にして冷たくなります。
こう見えても彼らは全員が、その道のプロフェッショナル。成功率100%の超凄腕であり、これまで逃した獲物はありません。
そんな恐ろしい……伯爵家が相手でも完遂させてしまえる集団が、エリュエール家の馬車をロックオン。一様に舌なめずりをしたあと、7つの『黒』が音もなく動き始めて――
「こんな暗がりに人がいるなんて、驚いたな。君達は、そこで何をしているんだい?」
――7人全員が、鋭く静かな一歩を踏み出した刹那でした。彼らの後方から不意に、中性的な声音が一つ聞こえてきたのでした。
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