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第5話 ようやく理解する親子 ジェラール視点
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「アドン……! 貴様……‼」
「俺達を嵌めたな……!?」
上手くできすぎている書類。悪魔のような笑み。それらによって大よそを理解し、父上と共にヤツを睨みつけた。
すべては、こういった時のための保険……っ。俺達は切羽詰まっていたし、あちらは婚約者の父親。焦りと信頼によって、細部をさして意識せず進めてしまって……っ。マリエットを追い出せない状況へと、誘導されていたんだ……!
「父上に事業を持ち掛けたのは、善意ではなく他意があったから! そうなんだろう!?」
「そんな、滅相もございません。娘の夫であり義父となってくださる方々に、更に上へとのぼっていただきたい。その一心で、アドバイスを行わせていただいたのございます」
「ふざけるな!! 何がアドバイスだ!! 貴様の口車に乗って事業を立ち上げたせいでっ、借金まみれとなったんだぞ!!」
「その手の行動は、時の運も絡みます故。わたくしは精一杯行動させていただきましたが、タイミングが悪かったようですね……」
ヤツはわざとらしく顔を歪めてため息を吐き、っっ! 「ですので責任を感じ、あのように無金利無期限で支援をさせていただいていたのですよ」と続けやがった……!
「とはいえそのご支援は、ジェラール様と娘の関係があってこそ――両家の信頼関係があるからこそのものでございます。過去がどうであれ、ご縁がなくなった以上ビジネス的なご関係となってしまいますので。大変恐縮なのですが、契約に従って頂かざるを得ないのですよ」
「恐縮だとっ!? ならばルールを変更すればいいだけだろうが!! お前にはそれが可能なはずだっ!!」
「残念ですがこういった契約は、法律によって以後の変更および白紙化は不可能なのでございます。ジェラール様、クレランズ卿。法は思いのほか融通の利かない、困ったものなのですよ」
心底申し訳なさげに微苦笑を浮かべ、そのあと小さくクスリと笑った。
やられた……っ。コイツは、ここまで想定していたんだ……っ。
「以上の理由で、わたくしはこうしております。ジェラール様、クレランズ卿、改めてお伺いします。どちらを選択なさいますか?」
「……………………」
「……………………」
俺とも父上も、すぐに答えることができない。
1億用意する。用意しない。そのどちらにも、大きな大きな問題が存在しているのだから……。
「ジェラール様、クレランズ卿。いかがなさいますか?」
「………………父上」
「う、うむ。アドン、これはこの場で決められる選択ではない。時間をくれ……」
「承知いたしました。ではそうですね、明日の同じ時刻に伺います。よいお返事を期待しておりますよ」
「ジェラール様っ。わたくしは反省しております……っ。絶対に損はさせませんから、よろしくお願い致しますわ……!」
そうして忌々しい2匹は去り、俺達はすぐさま動き出す。
期限は明日、たった24時間しかない。早く、考えないと……!
「俺達を嵌めたな……!?」
上手くできすぎている書類。悪魔のような笑み。それらによって大よそを理解し、父上と共にヤツを睨みつけた。
すべては、こういった時のための保険……っ。俺達は切羽詰まっていたし、あちらは婚約者の父親。焦りと信頼によって、細部をさして意識せず進めてしまって……っ。マリエットを追い出せない状況へと、誘導されていたんだ……!
「父上に事業を持ち掛けたのは、善意ではなく他意があったから! そうなんだろう!?」
「そんな、滅相もございません。娘の夫であり義父となってくださる方々に、更に上へとのぼっていただきたい。その一心で、アドバイスを行わせていただいたのございます」
「ふざけるな!! 何がアドバイスだ!! 貴様の口車に乗って事業を立ち上げたせいでっ、借金まみれとなったんだぞ!!」
「その手の行動は、時の運も絡みます故。わたくしは精一杯行動させていただきましたが、タイミングが悪かったようですね……」
ヤツはわざとらしく顔を歪めてため息を吐き、っっ! 「ですので責任を感じ、あのように無金利無期限で支援をさせていただいていたのですよ」と続けやがった……!
「とはいえそのご支援は、ジェラール様と娘の関係があってこそ――両家の信頼関係があるからこそのものでございます。過去がどうであれ、ご縁がなくなった以上ビジネス的なご関係となってしまいますので。大変恐縮なのですが、契約に従って頂かざるを得ないのですよ」
「恐縮だとっ!? ならばルールを変更すればいいだけだろうが!! お前にはそれが可能なはずだっ!!」
「残念ですがこういった契約は、法律によって以後の変更および白紙化は不可能なのでございます。ジェラール様、クレランズ卿。法は思いのほか融通の利かない、困ったものなのですよ」
心底申し訳なさげに微苦笑を浮かべ、そのあと小さくクスリと笑った。
やられた……っ。コイツは、ここまで想定していたんだ……っ。
「以上の理由で、わたくしはこうしております。ジェラール様、クレランズ卿、改めてお伺いします。どちらを選択なさいますか?」
「……………………」
「……………………」
俺とも父上も、すぐに答えることができない。
1億用意する。用意しない。そのどちらにも、大きな大きな問題が存在しているのだから……。
「ジェラール様、クレランズ卿。いかがなさいますか?」
「………………父上」
「う、うむ。アドン、これはこの場で決められる選択ではない。時間をくれ……」
「承知いたしました。ではそうですね、明日の同じ時刻に伺います。よいお返事を期待しておりますよ」
「ジェラール様っ。わたくしは反省しております……っ。絶対に損はさせませんから、よろしくお願い致しますわ……!」
そうして忌々しい2匹は去り、俺達はすぐさま動き出す。
期限は明日、たった24時間しかない。早く、考えないと……!
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