俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず

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第17話 1年後~クラリスSide~ クラリス視点

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「どうも彼らとは、不思議な縁があるようですね。どうやら本日より、ジェラールとマリエットの同棲が始まったようですよ」

 あの日からおよそ1年後の、朝。セレスタン様と共に、建物に・・・入ろうとしていた時のこと。オルヴァス家の方から報告が入り、セレスタン様は微苦笑を浮かべられました。

 転落死を装い蒸発していた、かつてジェラール・クレランズだった人。彼は新たな身分を手に入れて生活をしていたらしく、ついに発見されてしまった。
 その行動にまつわるものによってあちらの2人はルアール家を追放されてしまっていて、大した余力はない。そこで彼の拠点で生活することとなり、一生涯、彼が面倒を見ていくようになったみたい。

「先代の当主だった、アドン。彼はとにかく娘を溺愛していて、追い付かれるのは時間の問題だと確信していましたが――。あちらも今日、新たなスタートを切るなんて。おめでたいことが重なりましたね」
「ええ、そうですね。あちらとこちらでは性質が大きく違いますが、重なりましたね」

 6月12日。今日は、わたし達にとっても新たな一歩を踏み出す日。わたし達の結婚式が行われる日なんです。


『その真っすぐな瞳、真っすぐな心に惹かれております。どうか僕に、貴方の隣に立つ栄誉をお与えください』


 商談のご縁が切っ掛けとなってわたし達は恋人となり、およそ1年前――あの人が再び命令をしようとしてきた2日前に、わたし達は婚約者となりました。
 わたしもセレスタン様もできるだけ早く式を上げたかったのだけれど、セレスタン様は家督継承の準備などで、わたしは次期会頭の任命準備などで慌ただしく、結局今日になってしまったのです。

 ――大好きな人となかなか家族になれないのは、もどかしかった――。

 でもわたしはその間に更に成長することができて、単なる世襲ではなく、実力が伴った継承と認知されることができた。
 今はオルヴァス家の当主となったセレスタン様の隣に、堂々と立てるようになった。
 なので悪いことばかりではなく、ちょっぴり矛盾してしまうのだけれど――。大切な人により、恥をかかせない人間となれたことが、嬉しくもあるのです。

「あちらは新たな不幸への入り口を開けましたが、こちらが開けるのは新たな幸せへの入り口です。……クラリス・・・・。まいりましょう」
「はいっ。セレスタン様、参りましょう」

 わたし達は手を取り合って再び進み始め、そのあとは一旦のお別れ。それぞれの控え室に入って支度を行い、そうして――。
 わたし達にとって非常に大きなイベントが、始まりを告げたのでした。

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