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第13話 現世でのその後は~ミシュリーヌの場合~ ミシュリーヌ視点(2)
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「ろ、ローメラズ卿……。これは、一体……? ふぃ、フィリップ。もしや、面識があったのか……?」
別人の名を呼び、名乗りながら、微笑む。傍からすれば、奇行に映ります。
ですので同行されていた当主様は、戸惑いながら隣へと顔を向け――
「……………………………………………………。ジュリエット。ジュリエットなんだね……!」
っっ!
目を丸くしていたステファン様はハッと息を呑み、丸くなった目はあっという間に潤むようになりました……!
「じゅ、ジュリエット……? ふぃ、フィリップ……?」
「……父上。僕はかつてフィリップという名で、ジュリエットという名前だった彼女と婚約をしていたのですよ」
政略的な結婚だったものの、やがて想い合うようになったこと。
ジュリエットを心から愛し、夫婦になりたいと強く思っていたこと。
けれど婚約を発表した直後に、ブリュノに刺されて死んでしまったこと。
死の間際に、来世でジュリエットと夫婦になりたいと願ったこと。
それらをスラスラと、口にされました。
「『ステファン様』、『ジュリエット』。微笑み。それらを聞いて、見た瞬間、全部蘇ってきたんだ。……ジュリエット。待っていてくれたんだね」
「はい……! ずっとお待ちしておりました……! お会いしたかったです……!!」
「僕もだよ。会いたかった……!!」
この名前、この身分、この身体で会うのは初めてですが、わたし達は初対面ではありません。
ですのでわたし達は無意識的に互いに走り寄り、強く優しく、抱き締め合いました。
「待たせてごめんっ。先に死んでしまってごめんっ。寂しい思いをさせてしまってごめんっ」
「思い出してくれてありがとうございますっ。暴走を止められなくてごめんなさいっ。罪悪感を抱かせてしまい、ごめんなさいっ」
あの時――死の際は、ちゃんと話す余裕なんてありませんでした。
ずっと、相手に伝えたかったこと。
わたし達はまず、そちらを口にしました。
「もう、会えないと、思っていた……」
「わたしも……。思っていました……」
「でも、ここにいる。目の前に、ジュリエットがいる……!」
「はいっ。はいっ! ここにいます。いますし、いてくれていますっ。目の前に、ステファン様がいます……!」
「こうなっているのは、きっと、想いが一つだったからだ。想ってくれて、ありがとう。ありがとう……! ありがとうございます……!」
「こちらこそです……! 想ってくださり、ありがとうございます。ありがとうございます……! ありがとうございます……!!」
そのあとに伝えるのは、喜びと感謝。
再び、言葉を交わせて温もりを感じられる。その奇跡的な幸せを言葉に乗せて感じ合い、実感し合います。
「ジュリエット……! ジュリエット……! ジュリエット……! ジュリエット……!」
「はいっ。はいっ。はいっ! はい!」
「ステファン様……! ステファン様……! ステファン様……! ステファン様……!」
「うんっ。うん! うん! うん!!」
最愛の人の名を呼べる。名前を読んだら、答えてくれる。
最愛の人に名前を読んでもらえる。呼んでもらえて、答えられる。
当たり前のことのようで、当たり前ではないこと。
わたし達にとっては特別なことを、わたし達は何度も何度も行って。
そうしていたら、そうなってしまいますよね。
「……ジュリエット」
「……ステファン様」
抱き合っていたわたし達は、少しだけ距離を取って。でも、お互いの顔はゆっくりと近づいていって――
キス。
――婚約を発表した日に行って。これからも何度もできると思っていたけれど、二度とできなくなってしまったこと。
大切で大事、掛け替えのないことを、行ったのでした――。
別人の名を呼び、名乗りながら、微笑む。傍からすれば、奇行に映ります。
ですので同行されていた当主様は、戸惑いながら隣へと顔を向け――
「……………………………………………………。ジュリエット。ジュリエットなんだね……!」
っっ!
目を丸くしていたステファン様はハッと息を呑み、丸くなった目はあっという間に潤むようになりました……!
「じゅ、ジュリエット……? ふぃ、フィリップ……?」
「……父上。僕はかつてフィリップという名で、ジュリエットという名前だった彼女と婚約をしていたのですよ」
政略的な結婚だったものの、やがて想い合うようになったこと。
ジュリエットを心から愛し、夫婦になりたいと強く思っていたこと。
けれど婚約を発表した直後に、ブリュノに刺されて死んでしまったこと。
死の間際に、来世でジュリエットと夫婦になりたいと願ったこと。
それらをスラスラと、口にされました。
「『ステファン様』、『ジュリエット』。微笑み。それらを聞いて、見た瞬間、全部蘇ってきたんだ。……ジュリエット。待っていてくれたんだね」
「はい……! ずっとお待ちしておりました……! お会いしたかったです……!!」
「僕もだよ。会いたかった……!!」
この名前、この身分、この身体で会うのは初めてですが、わたし達は初対面ではありません。
ですのでわたし達は無意識的に互いに走り寄り、強く優しく、抱き締め合いました。
「待たせてごめんっ。先に死んでしまってごめんっ。寂しい思いをさせてしまってごめんっ」
「思い出してくれてありがとうございますっ。暴走を止められなくてごめんなさいっ。罪悪感を抱かせてしまい、ごめんなさいっ」
あの時――死の際は、ちゃんと話す余裕なんてありませんでした。
ずっと、相手に伝えたかったこと。
わたし達はまず、そちらを口にしました。
「もう、会えないと、思っていた……」
「わたしも……。思っていました……」
「でも、ここにいる。目の前に、ジュリエットがいる……!」
「はいっ。はいっ! ここにいます。いますし、いてくれていますっ。目の前に、ステファン様がいます……!」
「こうなっているのは、きっと、想いが一つだったからだ。想ってくれて、ありがとう。ありがとう……! ありがとうございます……!」
「こちらこそです……! 想ってくださり、ありがとうございます。ありがとうございます……! ありがとうございます……!!」
そのあとに伝えるのは、喜びと感謝。
再び、言葉を交わせて温もりを感じられる。その奇跡的な幸せを言葉に乗せて感じ合い、実感し合います。
「ジュリエット……! ジュリエット……! ジュリエット……! ジュリエット……!」
「はいっ。はいっ。はいっ! はい!」
「ステファン様……! ステファン様……! ステファン様……! ステファン様……!」
「うんっ。うん! うん! うん!!」
最愛の人の名を呼べる。名前を読んだら、答えてくれる。
最愛の人に名前を読んでもらえる。呼んでもらえて、答えられる。
当たり前のことのようで、当たり前ではないこと。
わたし達にとっては特別なことを、わたし達は何度も何度も行って。
そうしていたら、そうなってしまいますよね。
「……ジュリエット」
「……ステファン様」
抱き合っていたわたし達は、少しだけ距離を取って。でも、お互いの顔はゆっくりと近づいていって――
キス。
――婚約を発表した日に行って。これからも何度もできると思っていたけれど、二度とできなくなってしまったこと。
大切で大事、掛け替えのないことを、行ったのでした――。
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