運命の人と出逢ったから婚約を白紙にしたい? 構いませんがその人は、貴方が前世で憎んでいた人ですよ

柚木ゆず

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第13話 現世でのその後は~ミシュリーヌの場合~ ミシュリーヌ視点(1)

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「……きっと、そうなのですよね……?」

 アルチュールとの婚約が白紙になった日から、およそ7か月後。わたしは大きな緊張に襲われていました。

 ――新たな婚約のお話をいただき、今日は初めてお相手の方とお会いする日――。

 ノーフォルアス子爵家の長男、フィリップ様。
 これまでは大半のことが前世と同じタイミングで起きていますが、『大半』。すべてではありません。

 ――もし、フィリップ様がステファン様でなかったらどうしよう――。
 ――フィリップ様がステファン様だったとしても、前世の記憶が蘇らなかったらどうしよう――。

 そんな不安が、わたしの鼓動を著しく速めているのです。

「…………………………そう。きっと、そう。大丈夫。フィリップ様はステファン様で、お会いしたら前世の記憶は蘇る。ジュリエットだと気付いてくだります」

 だって前世の記憶が蘇った時、本能的に理解したのです。
 前世の願いを叶えるために、生まれ変わったのだと。

「ですから、大丈夫。すべて、実現してくれます」

 そう自分に言い聞かせますが、やっぱり様々な感情が頭と心の中で飛び交います。
 そのため結局落ち着かぬまま時が流れていき、ついに、その時が訪れました。

((…………奇跡が、最後まで起きますように……))

 この国では初顔わせの際は、女性のもとに男性が行く、という伝統があります。ですのでわたしは応接室にて到着を待ち、心の中で念じていると、やがて応接室の扉が静かに開き――

「はじめまして。フィリップ・ノーフォルアスと申します」
「!!」

 ――わたしは、すぐに気が付きました。
 柔らかな微笑みを浮かべていらっしゃる、白馬の王子様然とした美男子。この方は、ステファン様なのだと。

((やっぱり、そうでした。フィリップ様は、ステファン様でした))

 最初の不安は綺麗に消えてくれて、でも、まだ安心できません。

 ――フィリップ様がステファン様だったとしても、前世の記憶が蘇らなかったらどうしよう――。

 こちらの不安が、残っているからです。

「……………………」
「? あ、あの……?」
「……………………お久しぶりです、ステファン様。ジュリエットでございます」

 どうしようか迷いましたが、結局、こちらを名乗ることにしました。

 どくん。どくん。どくん。どくん。どくん。

 ステファン様。
 わたしです。

『もし叶うなら……。来世では……今度こそ……。君と、夫婦に、なりたいよ……』

 あの時そんな風に言ってくださった、『君』なんです。
 ……分かり、ます、よね……?
 ……気付いて、くれます、よね……?
 わたしのことも。ご自身のことも。
 思い出して、くれますよね……?

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