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第12話 現世での末路は~ヴィルジニーの場合~ 俯瞰視点(2)
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「ヴィルジニー……。まさか君が、こんなことをするだなんて思わなかったよ……」
夫側の親族や屋敷の人間を順番に買収していき、『家』を乗っ取ろうとしていたんだね――。
屋敷に戻ると夫であるザックスがこんなことを言い出し、身柄を拘束されてしまった。そんなことが起きたため、ヴィルジニーの顔から笑顔が消え去っていたのです。
「な、なにを仰っていますの……? そんなことしておりませんわ……」
「いいや、しているよ。君が用事で1日離れている間に、偶然……。その証拠が見つかったんだよ」
ヴィルジニーから贈られたとされる、ヴィルジニーの指紋がたっぷりと付着した『物』や札束。『協力してくれたお礼に、乗っ取ったあと良いポジションを与える』という内容の誓約書。などなど。
複数の証拠が提示され、ますますヴィルジニーは戸惑い始めます。
「なんですの、これは……!? こんなの知りませんわよ……!!」
その言葉は、事実。ヴィルジニーは自分に一目惚れした夫を巧みに操ろうと思ってはいましたが、伯爵家の乗っ取りなど考えてはいませんでした。
これらはすべて、夫ザックスの――ザックスの『ベルザット伯爵家』の罠。
――多額の慰謝料を支払わせつつ、ザストール家を弱体化させる――。
ザストール家は子爵家でありながら、伯爵家並みの財力を持つ家。ザックスはザストール家が持つ『金』に目をつけ、更には同時にザストール家を敵対視している子爵家を味方に引き込むために、一目惚れをしたと偽りヴィルジニーに近づいていたのです。
「違う! 誰かの仕業ですわ! ザックス様! 信じてくださいまし!!」
「……こんなに証拠があるんだ。信じることなんてできないよ」
「ですからそれはっ、偽装っ、捏造されたもの! 詳しく調べたら分かりますわ!!」
「……こんなに指紋がついているのに、かい? 下手な言い訳はやめてくれ」
「ちがっ! それはなにかの切っ掛けで――もしかしたら!! ワインを飲み過ぎて眠ってしまったことがありましたわ!! その隙に――」
「これ以上話す意味は、ないらしいな。……この女を連れ出してくれ」
ザックスこそが犯人なため、なにを言っても無意味。巧妙な手口によって無実の罪を着せられてしまい、その結果――
現当主である父親と共に、追放されてしまう。
心優しい夫の温情によって収監などはなかったものの、愚かな野心によって多額の慰謝料を支払う羽目になってしまった。それによって全親族が激怒し、2人は追い出されてしまったのです。
「…………どうしてこんなことに……」
「…………どうしてこんなことに……」
ドザベルド家当主の買収などなど娘の言うことを全て聞いていた親バカな父と、それらを嬉々として行わせていたヴィルジニー。居場所を失った2人は1か月後、とある路地裏で呆然と天を仰いでいました。
「……どうして、こんなことになってしまったんだ……。なにが、いけなかった、というんだ……?」
「…………せっかく、やり直せたのに……。今度こそ、幸せな人生を歩めるはずだったのに……。これじゃあ……。あの頃とおんなじじゃないのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
頭を抱える父親の隣でヴィルジニーは怒り狂いますが、いくら怒ってもどうにもなりません。
――前世からの怨敵を倒し、前世とは正反対の幸せな人生を手に入れた――。
それは、大間違い。
ヴィルジニーは――ミレーユは今回もまた。路頭に迷い、憐れな最期を迎えることとなるのでした――。
夫側の親族や屋敷の人間を順番に買収していき、『家』を乗っ取ろうとしていたんだね――。
屋敷に戻ると夫であるザックスがこんなことを言い出し、身柄を拘束されてしまった。そんなことが起きたため、ヴィルジニーの顔から笑顔が消え去っていたのです。
「な、なにを仰っていますの……? そんなことしておりませんわ……」
「いいや、しているよ。君が用事で1日離れている間に、偶然……。その証拠が見つかったんだよ」
ヴィルジニーから贈られたとされる、ヴィルジニーの指紋がたっぷりと付着した『物』や札束。『協力してくれたお礼に、乗っ取ったあと良いポジションを与える』という内容の誓約書。などなど。
複数の証拠が提示され、ますますヴィルジニーは戸惑い始めます。
「なんですの、これは……!? こんなの知りませんわよ……!!」
その言葉は、事実。ヴィルジニーは自分に一目惚れした夫を巧みに操ろうと思ってはいましたが、伯爵家の乗っ取りなど考えてはいませんでした。
これらはすべて、夫ザックスの――ザックスの『ベルザット伯爵家』の罠。
――多額の慰謝料を支払わせつつ、ザストール家を弱体化させる――。
ザストール家は子爵家でありながら、伯爵家並みの財力を持つ家。ザックスはザストール家が持つ『金』に目をつけ、更には同時にザストール家を敵対視している子爵家を味方に引き込むために、一目惚れをしたと偽りヴィルジニーに近づいていたのです。
「違う! 誰かの仕業ですわ! ザックス様! 信じてくださいまし!!」
「……こんなに証拠があるんだ。信じることなんてできないよ」
「ですからそれはっ、偽装っ、捏造されたもの! 詳しく調べたら分かりますわ!!」
「……こんなに指紋がついているのに、かい? 下手な言い訳はやめてくれ」
「ちがっ! それはなにかの切っ掛けで――もしかしたら!! ワインを飲み過ぎて眠ってしまったことがありましたわ!! その隙に――」
「これ以上話す意味は、ないらしいな。……この女を連れ出してくれ」
ザックスこそが犯人なため、なにを言っても無意味。巧妙な手口によって無実の罪を着せられてしまい、その結果――
現当主である父親と共に、追放されてしまう。
心優しい夫の温情によって収監などはなかったものの、愚かな野心によって多額の慰謝料を支払う羽目になってしまった。それによって全親族が激怒し、2人は追い出されてしまったのです。
「…………どうしてこんなことに……」
「…………どうしてこんなことに……」
ドザベルド家当主の買収などなど娘の言うことを全て聞いていた親バカな父と、それらを嬉々として行わせていたヴィルジニー。居場所を失った2人は1か月後、とある路地裏で呆然と天を仰いでいました。
「……どうして、こんなことになってしまったんだ……。なにが、いけなかった、というんだ……?」
「…………せっかく、やり直せたのに……。今度こそ、幸せな人生を歩めるはずだったのに……。これじゃあ……。あの頃とおんなじじゃないのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
頭を抱える父親の隣でヴィルジニーは怒り狂いますが、いくら怒ってもどうにもなりません。
――前世からの怨敵を倒し、前世とは正反対の幸せな人生を手に入れた――。
それは、大間違い。
ヴィルジニーは――ミレーユは今回もまた。路頭に迷い、憐れな最期を迎えることとなるのでした――。
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