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第5話 もう一つの呪い ミリア視点
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「呪い……? 呪いって、あの呪い? 小説や絵本に出てくる?」
「はい、そうです。小説や絵本などに出てくる『呪い』は、本の作者様が考えた架空の存在ではありません。実在しているのですよ」
「……ミリア……? どうして、そんなことを知っているんだい……?」
「今朝その存在を呪いの使用者から聞かされて、この身で実際に体験――呪いを経験した。そちらが事由です」
コレガラール侯爵家のジュリア様によって、自分自身しか存在しない世界に閉じ込められていたこと。
呪いの源となっている『触媒』と呼ばれるものが壊れたら、この身体から『管』と同じ色をしたどす黒い光が飛び出したこと。
こちらに来る前にこの身に起きた出来事を、ひとつ残らずお伝えしました。
「あの時のものと形は違いますが、間違いなく色はおなじです。……こんなにもどす黒い『黒』は見たことがありませんし、なにより常識の範疇を越えた状態になっています。だとしたら考えられるのは、呪いです」
「……確かに、そうなるね。となると、僕にかけられた呪いはなんだ……? 一週間前とどこも変わっていなくて、体調が優れないこと以外に問題はな――まさか……。いや、それは考えすぎか……?」
「わたくしは、そちらが正解なのだと考えています。『体調が優れない』こそが、呪いだったのだと思います」
ある日突然身体が弱くなり、あっという間に肌にハリがなくなったり艶がなくなったりして、外はおろかお屋敷の中でさえも自由に出歩けなくなってしまう――。身体のどこにも悪い部分はなく、お医者様がいくら調べてもその原因は不明――。薬草など免疫力などを高めるものを摂取しても、ごく僅かでさえも症状が改善しない――。
異常なことだらけ。
そうである可能性は、ほぼ間違いないと思います。
「きっと、『一週間の間にロンド様が変わってしまった』のではなかったんです。今朝呪いの世界に閉じ込められたことで、わたくしが変わったのだと思います」
思い返せば、部屋で発生した出来事もそうです。
あれもほぼ間違いなく、空耳の類ではなく実際に起きていること。閉じ込められた際に何かしらがあって、わたくしは呪いを感知できるようになっているのでしょう。
「だとしたら…………この管が繋がっているのは、触媒のはず。管を辿った先にある物を壊せば、ロンド様は元気になります!」
『ここにあるのは呪いの源になってる『媒体』というもので、コレが壊れたら呪いは解ける』
ジュリア様は、そう言っていました。
効果は違うものの同じ呪いである以上、解呪方法も同じのはずです。
「ロンド様、待っていてください! 今から呪いの触媒を見つけて、破壊してきます!」
「待って、僕も一緒に行くよ。管が繋がっている人間が一緒に動いた方が何かと対処しやすいだろうし、なにより……。呪いなんてものを使う危険な人間のもとに、大切な人だけを向かわせるなんてできないよ」
護衛だけじゃなくて、きっと父上も同行されるだろう。すぐにふらついてしまう僕が一緒に居ても、大して役に立たないだろう。
でも、それでも、傍に居させて欲しい。
ロイド様はそう仰られ、歯を食いしばりながらベッドから降りられました。
「はぁ、はぁ、はぁ……。だい、じょうぶ……! 少なくとも、ミリアの足手まといにはならないようにするよ。お願いします。僕の我が儘を、聞いてください」
「…………分かりました。ロンド様、一緒に『管』を追いかけましょう」
そのお気持ちを知ったら、反対なんてできません。わたくしはロンド様を支えながら一階に降り、
「状況は理解した。あらゆる状況に対処できるよう、わたしも向かおう」
「わたくしは念のため、別方面の保険を用意して待機しているわ。気を付けてね」
「はいっ。行ってまいります!」
おじ様、帯剣した護衛の方10名、ロンド様、わたくし。計13人が2台の馬車に分かれて乗り込み、どす黒い管の先を目指し動き出したのでした。
「はい、そうです。小説や絵本などに出てくる『呪い』は、本の作者様が考えた架空の存在ではありません。実在しているのですよ」
「……ミリア……? どうして、そんなことを知っているんだい……?」
「今朝その存在を呪いの使用者から聞かされて、この身で実際に体験――呪いを経験した。そちらが事由です」
コレガラール侯爵家のジュリア様によって、自分自身しか存在しない世界に閉じ込められていたこと。
呪いの源となっている『触媒』と呼ばれるものが壊れたら、この身体から『管』と同じ色をしたどす黒い光が飛び出したこと。
こちらに来る前にこの身に起きた出来事を、ひとつ残らずお伝えしました。
「あの時のものと形は違いますが、間違いなく色はおなじです。……こんなにもどす黒い『黒』は見たことがありませんし、なにより常識の範疇を越えた状態になっています。だとしたら考えられるのは、呪いです」
「……確かに、そうなるね。となると、僕にかけられた呪いはなんだ……? 一週間前とどこも変わっていなくて、体調が優れないこと以外に問題はな――まさか……。いや、それは考えすぎか……?」
「わたくしは、そちらが正解なのだと考えています。『体調が優れない』こそが、呪いだったのだと思います」
ある日突然身体が弱くなり、あっという間に肌にハリがなくなったり艶がなくなったりして、外はおろかお屋敷の中でさえも自由に出歩けなくなってしまう――。身体のどこにも悪い部分はなく、お医者様がいくら調べてもその原因は不明――。薬草など免疫力などを高めるものを摂取しても、ごく僅かでさえも症状が改善しない――。
異常なことだらけ。
そうである可能性は、ほぼ間違いないと思います。
「きっと、『一週間の間にロンド様が変わってしまった』のではなかったんです。今朝呪いの世界に閉じ込められたことで、わたくしが変わったのだと思います」
思い返せば、部屋で発生した出来事もそうです。
あれもほぼ間違いなく、空耳の類ではなく実際に起きていること。閉じ込められた際に何かしらがあって、わたくしは呪いを感知できるようになっているのでしょう。
「だとしたら…………この管が繋がっているのは、触媒のはず。管を辿った先にある物を壊せば、ロンド様は元気になります!」
『ここにあるのは呪いの源になってる『媒体』というもので、コレが壊れたら呪いは解ける』
ジュリア様は、そう言っていました。
効果は違うものの同じ呪いである以上、解呪方法も同じのはずです。
「ロンド様、待っていてください! 今から呪いの触媒を見つけて、破壊してきます!」
「待って、僕も一緒に行くよ。管が繋がっている人間が一緒に動いた方が何かと対処しやすいだろうし、なにより……。呪いなんてものを使う危険な人間のもとに、大切な人だけを向かわせるなんてできないよ」
護衛だけじゃなくて、きっと父上も同行されるだろう。すぐにふらついてしまう僕が一緒に居ても、大して役に立たないだろう。
でも、それでも、傍に居させて欲しい。
ロイド様はそう仰られ、歯を食いしばりながらベッドから降りられました。
「はぁ、はぁ、はぁ……。だい、じょうぶ……! 少なくとも、ミリアの足手まといにはならないようにするよ。お願いします。僕の我が儘を、聞いてください」
「…………分かりました。ロンド様、一緒に『管』を追いかけましょう」
そのお気持ちを知ったら、反対なんてできません。わたくしはロンド様を支えながら一階に降り、
「状況は理解した。あらゆる状況に対処できるよう、わたしも向かおう」
「わたくしは念のため、別方面の保険を用意して待機しているわ。気を付けてね」
「はいっ。行ってまいります!」
おじ様、帯剣した護衛の方10名、ロンド様、わたくし。計13人が2台の馬車に分かれて乗り込み、どす黒い管の先を目指し動き出したのでした。
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