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第16話 4日後。対面の時 ニナ視点(2)

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「ナルテン様。こうしてこの時を過ごせているのは、貴方様のおかげです。ナルテン様は、命の恩人でございます……っ」

 室内が関係者のみに、なってすぐ。ソファーに着席していた私は立ち上がり、対面へと深く頭を下げた。
 毎日が平和になったのは。すっかり自然に笑えるようになったのは。全て、あの日の出会いがあったから。

「その時までは、毎日が真っ黒で……。絶望の海に沈んでいました」

 つらい。悲しい。嫌だ。
 そんなことばかりが浮かぶ、毎日でした。

「でも。ミルス様がお気にかけてくださり、光を手にした方の存在を知って。私も頑張ろう、負けない、そんな気持ちが湧いてきました」

 同じ境遇の方、だったから。自分も続こう、続きたい、そう思った――思うことが、できた。

「毎日が平和になったのは。すっかり自然に笑えるようになったのは。全て、あの日の出逢いがあったからです。ナルテン様、ありがとうございます……っ」
「ニナ様。俺の方こそ、ありがとう。動こうと思ってくれて、勝ってくれて、嬉しいよ」

 ナルテン様もわざわざ立ち上がってくださり、心からの笑みを作ってくださった。
 私が感謝をされて、もう一度「ありがとう」と仰ってくださる。それは予想外の出来事で、おもわず戸惑ってしまった。

「ああ、ごめんね、ビックリしてしまうよね? 俺が君に感謝をしているのは、それが俺の願いでもあるからなんだよ」
「願い……。ですか……?」
「似た境遇の人が苦しんでいる。理不尽な事が現在進行形で起きてしまっている事が、嫌なんだよ。助けたいんだよ。だから友人知人に機会があれば伝えるように頼んでいて、それが初めて成功したから嬉しい。願いが叶ったから、ありがとう、なんだよ」

 そう、だったのですね。そういった事を行ってくださっていたから、あの日私は救われたのですね。

「……幼少期に見た鳥が切っ掛けで始まった、笑顔の反撃劇場。アレが役に立って、本当によかった。ニナ様のおかげで、弱虫で単純な思考回路だった昔の自分を、少し好きになれたよ」
「ナルテン様、違いますっ。貴方様は弱虫などではありませんよっ!」

 無意識的に声量が増え、私は首を左右に振っていた。
 だって。なぜならっ。

「有益かもしれない方法を見つけ、それを実行しようと思った。実際に行動された。それらは、簡単にできることではありません。実際に、私は一度もできなかったのですから」

 こんな日々を少しでも変えたくって、色々考えていたことがあった。
 でも……。上手くいきそうなものが浮かんでも、

 無理。
 失敗したらどうしよう。
 もっとひどい目に遭ってしまいそう。
 駄目。
 できない。

 そういった後ろ向きな思考がやって来て……。一度も、行動に移せませんでした。

「そんな状況下で、大きな一歩を踏み出そうとする。それは単純だからではなく、心の奥には、確かな勇気があったからです……っ。私を導いてくださったのは、弱虫や単純といったものではありません……っ。ナルテン様の勇気が、導いてくださったのですよ……っ」

 改めて首を左右に振って、次は上下に動かす。
 私は、御機嫌取りで言ってはいない。事実だと思っている事を、言葉にした。

「お会いしたばかりの人間が、助けていただいた人間が、分かったような、生意気な内容を口にしてすみません。ですが、そう確信しておりますので。言葉にさせていただきました」
「………………そっか。そんな事を言ってもらえたのは、初めてだよ。……参ったな……」

 ポカンとされていたナルテン様は、口元を右手で覆われた。
 これは……。どうされたの……?

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