婚約者にも家族にも裏切られたので、小さな村でモフモフカフェを開くことにしました

柚木ゆず

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プロローグ オープン準備編その1

「ふぅ、やっと準備が整った。いよいよ明日オープンだね、みんなっ」
「「「「「「「「にゃ~っ!」」」」」」」」

 元侯爵令嬢、サーラ18歳。『わたくし』改め『あたし』は、8匹の猫家族と共に新たな人生のスタートを切ろうとしています!


   ◇◇◇


『サーラ・ブランっ、お前の所業は全て把握しているぞ! リンナ・チュエズの靴を隠したり根も葉もない悪評を流したり、果ては階段から突き落とそうとしたり。彼女に随分と、陰湿な真似をしていたようだな』

 今から27日前のこと。あたしは通っていた『オーフィル学院』の中庭で、婚約者であるニオズ・レイオン王太子殿下から婚約破棄をされた。
 破棄の理由は、同級生こと侯爵令嬢リンナ・チュエズへのいじめ。なのだけど、それらは全て捏造。
 殿下は強引に婚約を迫ってきたのに、やがては『思い描いていた毎日とは違う』とあたしに飽き始めてしまって……。そのタイミングで誘惑をされて好きになったリンナと、互いの体裁を気にせず結婚するためにでっち上げたものなのです。

『同じ侯爵令嬢で、しかしながら自分よりも成績がよく評判も良い彼女が疎ましかったのだろう? ……そんな心の醜い人間と、繋がりを維持するつもりはない。お前との婚約はなかったことにする』
『に、ニオズ殿下……! きっと、私にも問題はあったと思うんですっ。そこまでお怒りにならなくても――』
『リンナ、君は優しい子だね。でも、それは聞き入れられないよ。悪いことをした者には、相応の罰を与えないといけないのだから』

 共犯者のリンナはウルウル目でプルプルと首を振って、周りにいた生徒は「「「「「流石チュエズ様、出来た方だ……っ!」」」」」と拍手を送る。
 リンナはコッソリあたしに向けてニヤリとしていて、殿下はそんな姿を見て微笑んでいるんだけどね。
 あたしの言い分なんて全く受け入れてもらえず、あたしは元婚約者であり最低人間のレッテルを貼られた。
 そしてその後、

『お前みたいな人間が家族にいると、ミントの将来に大きな悪影響を及ぼす! したがってお前との関係を絶つと決め、この瞬間を以って親子の縁を切る! 3日以内にこの屋敷を出て、二度と我々の前に現れるんじゃないぞ!!』
『まぁあなたっ、ワタシ達のお願いを聞いてくれてありがとう! 嬉しいわっ! 大好きよっ!』
『お姉ちゃん――じゃなくって、もうサーラさんになるんだったね。サーラさん、あと3日でバイバイだね~』

 あたしを邪魔者扱いしていた継母と義妹によってお屋敷を追い出され、今は亡きリーフィラお母様が結婚前から使用していたアトリエがある『ドゥタス村』で――。このお屋敷から馬車で2日ほどの場所にある村で、独り暮らしをすることになったのでした。

『元お姉ちゃんのサーラさん、独り暮らしは大変そうだね? いきなり無一文になっちゃうけど、どーするのかなぁ~?』
『あ、ご心配なく。実はお母様が亡くなる前に、何かあった時の保険お金を渡してくれているの。それをもとにしてアトリエを改装して、甘いものをメインにしたカフェを開こうと思ってるのよ』
『へ、へぇ~……。でっ、でもでもっ! 美味しいメニューがないと、お客さんは来てくれないよ~? そんなもの、作れるのかな~?』
『アナタはあたしに全く興味がないから、知らないみたいね。こう見えてあたし、料理はウチのシェフより上手いから』

 元々お母様とよく作っていたし、亡くなってからはお父様は継母と義妹にベッタリ。あたしは8年間、いつも独りぼっち。その間にお母様が遺してくれたレシピを使って色々と作っていて、料理の腕にはかなり自信がある。
 そのためこの機会に、お母様の小さなの頃の夢を実現することにしたのでした。

『髪をバッサリ切って色を変えて、伊達メガネをかけるから正体がバレる心配もない。視力が良くて、スーパーロングヘアでよかったわ』
『ぐ、ぐぐぐ……っ。ぐぐぐぐぐ……っ』
『ああ、そうそう。レイアウトを練ったり工事の手配をしたり、値段の設定や食材の仕入れルートの研究とかで、忙しいの。3日以内って言われたけど、部屋で髪を切ったらすぐ出て行くからね。バイバイ』

 幸か不幸か。人生の半分近く陰湿な嫌がらせを受け続けた影響で、ちょっとやそっとじゃ動じない性格になっていたあたし。
 そのためさっさと荷物をまとめて、オープンの準備をスタートさせる。まずはドゥタス村の隣街・『ペイオ』に移動しながら1階部分の改装プランを練って、工事を依頼した後は現地のお店を物色。その際にお店に合いそうなクロスやカーテン、カップやソーサーなどを買い、同時に食材の価格やカフェ他店の値段をチェック。
 そうしてその日から朝昼晩と休まず働き、それから9日後。あたしは偶然通りかかった路地裏で、家族でありスタッフでもある子達と出会うことになるのでした――。



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