婚約者にも家族にも裏切られたので、小さな村でモフモフカフェを開くことにしました

柚木ゆず

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プロローグ オープン準備編その2

『『『『『『『『にゃ……。にゃ、ぁぁ……』』』』』』』』

 路地裏にいたのは、衰弱した猫達。三毛猫、サバトラ、茶トラ、キジトラ、グレー、サビ、白猫、黒猫。8匹のニャンコが、一か所に固まって震えていた。

『『『『『『『『にゃ……。にゃ、ぁ……』』』』』』』』
『……体は汚れてるし、声にも目にも力がない……。みんな、捨て猫なんだね……』

 生まれて数か月程度の大きさで、親猫がいた形跡はない。
 人に捨てられたのか、親猫に捨てられたのかは、分からない。けれど、全員が育児を放棄されていることは分かった。

『『『『『『『『にゃぁ……。にゃぁ……』』』』』』』』
『このままだと、近いうちに死んじゃう。誰かに、まとめて里親になってもらうのは……。この数だと、難しいよね……』

 一匹の猫が、この数を一度に産むとは思えない。だけどこの子達は震えながらもお互いを気遣っていて、きっと兄弟みたいな関係なんだと思う。
 離別の辛さを知ってる身としては、バラバラにはしたくない。

『………………。だったら……。あたしが、飼うしかないよね』

 改装などの準備費用が結構かかって、節制して暮らさないといけない状況だったりする。
 それでもやっぱり、放っておけないもんね。あたしは怖がらせないようにゆっくり近づいて、8匹のニャンコに手を差し伸べた。

『『『『『『『『にゃ? にゃぁ……?』』』』』』』』
『これも、何かの縁だもん。よかったら、ウチに来ませんか?』
『『『『『『『『にゃぁ……。にゃあっ! にゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』』』』』』』』

 表情と声に含まれる感情で、理解できたんだろうね。8匹が明るく鳴いて、一斉にすり寄ってきてくれた。

『『『『『『『うにゃぁ~。ごろごろごろごろ。ぅにゃ~ん』』』』』』』
『ふふふっ。よろしく、って言ってるのかな? こちらこそ、よろしくね。まずはミルクで、そのあと体を洗ってあげるね』

 そうしてあたしに、三毛猫のミケ♀、サバトラのサバ♀、茶トラのチャ♀、キジトラのキジ♀、グレーのグレ♂、サビのサビ♀、白猫のシロ♀、黒猫のクロ♂の、8匹の家族ができたのでした。

 そしてそれから、更に10日後。あたし達は開業届などを出したその足で街にあるライバル店のチェックを行っていて、とある店が切っ掛けで8匹から意外な提案を受けることになるのでした。

『『『『『『『『にゃっ! にゃにゃっ!? にゃにゃーにゃっ!』』』』』』』』
「お店の中にいる3匹のニャンコが、気になるんだね? あれは多分、看板猫だよ」
『『『『『『『『ぅにゃ? にゃぁ……?』』』』』』』』
『お店のマスコットキャラ的な存在で、主な使命はズバリ「来てくれてるお客さんを和ませる」。看板猫や看板犬を目当てに、訪れる人もいるんだよ』

 学院時代のクラスメイトにも無類の動物好きがいて、2日に1回はお忍びで通っていたっけ。そういえばその方の口癖は、『あの子達を触れるのなら、泥のようにマズイコーヒーだって何杯でも飲みますわ!』だったなぁ。

『『『『『『『『…………にゃあ。にゃあ……』』』』』』』』
『??? みんなで頷き合ってどうしたの?』
『『『『『『『にゃっ! にゃあっ! にゃにゃあっ!』』』』』』』

 3匹のニャンコを見て……。自分達を見て……。店から出たお客さんを見て……。チョコンと座って、可愛らしい鳴き声を上げる。
 これってっ。

『もしかしてっ! 看板猫になろうとしてくれてるのっ!?』
『『『『『『『『にゃ! にゃにゃ~っ!』』』』』』』』
『そんなのいいよいいよっ。みんなは、ゆっくり過ごしてくれたら――』
『『『『『『『『にゃ! にゃあ!』』』』』』』』

 仲良く首をブンブン振って、拒否を拒否。8匹の強くて思い遣りのある要望によって、ウチのカフェに看板猫が誕生したのでした。


 ◇◇◇


「ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。開店は、明日の午前9時から。一緒に頑張ろうねっ!」
「「「「「「「「にゃ~っ!!」」」」」」」」

 1階にあった4部屋を繋げてお洒落なテーブルや椅子を並べた、自慢の店内。その中央であたし達は右手を突き上げ、仲良く気合を入れたのでした。

 1人の女と8匹の猫がお出迎えする、カフェ猫の舌ラング・ド・シャ。まもなく開店ですっ。



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