婚約者にも家族にも裏切られたので、小さな村でモフモフカフェを開くことにしました

柚木ゆず

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第1話 満員御礼? と、不思議なお客様(1)

「「「「「「「「にゃぁ……」」」」」」」」
「うん、そうだね……。今日も、殆どお客様が来ないね……」

 記念すべきオープンの日から、早4日が経ちました。その間にいらっしゃったお客様の数は、14人でした。
 しかも――

『開店おめでとう! これ、開店祝いの野菜だよ!』

『この村初めてのカフェ、儂も応援しておるぞ。これが村の発展に繋がると嬉しいのぅ』

 その14人は全員が、村の人。
 街の住人は1人も来てくれず、これまでの来訪者はみんなご近所さん。激励や祝福を兼ねた来店で、そのためオーダーはコーヒー社交辞令×14のみとなっています。

「街で何日間も宣伝したし、クーポン券をつけたチラシもどっさり配ったんだけどなぁ。やっぱり、店の場所が一番のネックになってるよねぇ」

 人の流れが多いペイオからここまでは、馬車で20分~30分程度。おまけにドゥタス村は、人口が少なく農業が中心の村――名所や他のお店など、人が立ち寄る要素がなにもない。あるのは家と農地と、なぜか国から立ち入り禁止の命令が出ている山だけ。
 つまり店に来てくれるイーコル、『ラング・ド・シャのために来てくれる』で……。実績も評判もないウチに、そこまでしてくれる人はいないよね。

「世の中そんなに甘くない、か。でも! 理由が分かったのは収穫っ。実績と評判がないなら、作ればいいだけだよねっ!」

 お店の中央で大きく頷き、腕を組む。
 今はこの国のカフェタイム午後2時過ぎだけど、店の中にいるのはあたし達だけ。考える時間は、いつでも作れるのだ。

「お客様が来てくれない状況で、実績と評判を作るには……。んーと……」
「「「「「「「「ぅにゃ~ん……」」」」」」」」

 みんなも、あたしの足元で考えてくれる。
 ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。お手伝いありがとね。

「んーーと……。んーーと…………。んーーと………………」
「「「「「「「「にゃ~…………。にゃ~…………」」」」」」」」「にゃにゃっ!」

 シロの耳と尻尾が、不意にピンと立った。
 す、すごい。あたしより先に、何か閃いたみたい。

「にゃにゃ! にゃにゃにゃ~っ」

 えっと……。キッチンにあるフライパンを見て…………メニュー表を見て…………。街がある方向を見て…………お昼ご飯の残りを咥えて…………サビに渡して……。サビが………それを食べて…………すごく喜んで…………サビがウキウキしながら歩きだして、ワクワクしながら店内の席にチョコンと座った。

「つまり……。メニューにある食べ物を何か作って街で配って、皆に食べて気に入ってもらう。そうして後日お客様として来ていただく、ってことかな?」
「にゃにゃっ! にゃにゃにゃ~?」
「うんっ、すっごい名案だよっ! ただね、作っておいたものを配るのはあたし的にNGなんだ。そこはちょっとだけ、変えさせてもらうね」

 お母様から教わった料理の基本、それは『食べてくれる人を見て、想い、心を込めて作りましょう』。あたし自身それは素敵なことだと思うし、ここはお母様の夢を叶える場所でもある。
 なので母の教えそこだけは、どうしても譲れないんだよね。

「火の魔石とフライパンを持っていけば、街中でも調理できる。閉店したら準備をして、ペイオでパンケーキを食べてもらおっか」
「「「「「「「「にゃにゃっ!」」」」」」」」
「シロ、みんなも、協力してくれてありがとね。それじゃあこの隙に、粉とか卵の準備をして――」
「邪魔をする」

 カランコロン。そんな音色と共に、男性の声が聞こえてきた。
 こんな若い声の人は、村にはいないっ。ということは……。やったっ! 初めての、村外のお客様だっ!

「いらっしゃいませっ! 『ラング・ド・シャ』へようこそっ!」
「「「「「「「「にゃぁ~っ!」」」」」」」」

 あたし達は元気よく振り返り、ペコリと頭を下げる。そして、1、2、3。適切なタイミングでゆっくり顔を上げると、あたし達は思わず固まってしまいました。
 な、なぜなら――。

 その人の身体から、真っ黒い謎のオーラが出ていたのだから!!






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