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第3話 ラング・ド・シャの弱点?(1)
「心を込めて作った物には魂が宿る。耳にしたことくらいはあるだろう? これは、ソレに酷似したケースだ」
単刀直入に告げてくれたお客様は、テーブルの上にある空のお皿を一瞥する。
「貴様は食べる相手を想い調理する故、その想いが料理にしかと載る。そしてそれを食(は)めば必然的に、料理と共に入り込む。体内が、貴様の優しさや思い遣りで満たされるのだ」
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
「したがって体も心も非常に満足し、満足とは満ち足りていること。満ち足りているのであれば、充実し心地よい余韻がある故に即必要とはならぬ。昨夜貴様を絶賛した者達は、その満足度がある程度減った頃――明日にはそれこそ『すぐ』、料理を求めて訪れるだろうな」
「そ、そうなのですね……」
「「「「「「「「にゃ、にゃぁ……」」」」」」」」
魂が宿るって、おとぎ話的なものじゃないの? あたしは知らず知らず、そんなものを載せてたの?
語れた内容があまりに予想外で、あたし達は呆然としつつ相槌を打つのが精一杯だった。
「荒唐無稽だろう? されど、これは事実だ。母から教わったというのであれば、貴様も感じているはずだぞ? その母と他者の作った物の、違いをな」
「ぁっ。そうですっ! そうでしたっっ!」
お母様が作ってくれた料理は、どれも本当に美味しかった。年期も技術もシェフに及ばないはずなのに、なぜか家で一番美味しかった。
「人は俺とは違い、その手のものを明確に認識できはしない。だが、ソレを感じることくらいはできる。……それなりには理解できたようだな」
「はいっ、おかげ様で理解ができましたっ。皆さん社交辞令じゃなくって、後日来てくださるんだ……っ。よかったです……っ」
「「「「「「「「うにゃぁ~」」」」」」」」
「うむ、そうだな。試食をした者は全員訪れる故、近々軌道に乗るだろう」
足にスリスリしたサビ達をしゃがんで撫で、「ところで店主よ」。立ち上がると再度、あたしに目が向いた。
は、はいっ。なんでしょうっ?
「貴様が拵えた料理は非常に満足度が高く、それ故に客足が減る。つまりそれが、どういうことを表すか分かるな? 経営者よ」
「…………はい。適度に手を抜けば満足度が低くなって、もっと短いスパンで来てくれるようになる。ですよね?」
見ているとなぜか、心が揺れるように感じる漆黒の光彩――。どういうわけか少しも目を離せなくなったお客様の両目を直視しつつ、お返事をした。
現状の理由が、それなのだから。そういうことになる。
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