婚約者にも家族にも裏切られたので、小さな村でモフモフカフェを開くことにしました

柚木ゆず

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第8話 号泣(2)



「『サーラの母リーフィラも、イジメによりグレン侯爵夫妻の地位を手に入れていた。かつてリーフィラは卑劣な手を使ってライバルを蹴落とし、そのライバルこそが現在のミカナ夫人。ミカナ夫人とグレン卿はパートナーの死去により、運命的な再会を果たし結ばれた』。そんな噂も広まっていまして、その……」
「自業自得なバカ女! 血は争えないって事になってんらよ! よくも俺らを裏切りやがったなぁこのヤロー!!」

 酔い潰れた男性が割り込んできて、ラウネさんが慌てて遠ざけてくれる。
 そして、あたしは――。足腰から力が抜けて、へたり込んでしまった。

「…………あたしの、せいだ……」

 あたしのせいで、お母様まで攻撃されてしまった。

 人違いだと説明できるから、1つ目の噂は消し飛ばせる。
 でもそれじゃあ、2つめの噂はどうもできない。1つ目と違って、明確な証拠を示せないから……。広まってしまったこの疑惑を、どうやっても消せない。

 お母様は決して曲がったことをしない、清廉潔白な人だったのに……。一面識もない人にまで、罵詈雑言を浴びせられ続けてしまう……。

 自業自得なんかじゃないのに。
 真面目に生きて、誰かを傷付けることなんて一度もしてないのに。
 病気になってもあたしのために辛い顔一つしなくって、一生懸命頑張って生きてくれたのに。

 こんなことを言われるなんて……。

((……………………。……………………))

 ――カフェを、開かなければよかった――。
 ――全てを受け入れ、大人しくヒッソリと暮らしていればよかった――。

 ごめんなさい。
 ごめんなさいっ。
 ごめんなさいっっ。
 ごめんなさいっっ!


 お母様、ごめんなさい……!!


 頭の中は、謝罪と後悔で一杯。
 視界はハッキリしているはずなのに、グルグル回っているようで。体と心が、闇に沈んでいくみたい。

「「「「「「「「にゃあっ! にゃあっっ! にゃあっ!」」」」」」」
「み、んな……」
「「「「「「「「にゃあっ! にゃあっっ! にゃあっっっ!」」」」」」」」

 ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。いつの間にかみんなが傍にいて、不安げにスリスリ頬ずりをしてくれている。

 ……………………そうだ。そうだよね。

 あたしはみんなの家族で、ママ。こんな顔して、心配させちゃいけないよね。

「「「「「「「「にゃあっ! にゃあっっ! にゃあっっっ!」」」」」」」」
「………………ありがとう。もう、大丈夫だよ」

 溢れてくる絶望を抑えて、ゆっくりと立ち上がる。
 こういう感情は、よく伝播しちゃうもんね。みんなの前では、しちゃ駄目だ。

「「「「「「「「にゃっ! にゃっっ! にゃあっっっ! にゃあああっ!」」」」」」」」
「うん、分かってるよ。平気だから。もう、平気だから。励ましてくれて、どうもありがとうね――」

「馬鹿者。貴様は何も分かっていないではないか」

 不意に背後から聞こえてきた、聞き覚えのある声。やけに落ち着いていて、冷たい印象を受けるソレ。
 この声音の持ち主は、カーチスさんだ。












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