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プロローグ 理不尽な王太子と、違和感のある聖女 (2)

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「アークス殿下。ちなみに『手抜き』『怠けている』と考えていらっしゃるのは、王家で貴方様のみなのですか? それとも複数人なのでしょうか?」

 心を入れ替えろ。いいな? そんな問いかけは一旦放置をさせてもらい、殿下に対し首を傾けてみました。

「お前の怠けを見抜いているのは、全員だ。父上も母上も弟達2人も、俺と同意見だ」
「なるほど。そうでしたか」

 この王宮の住人、全員。それなら、そこまで細かなコントロールは要りませんね。


 殿下。明日から貴方がた5人を、庇護から外します。


 最近の異変は偶然不幸が重なったのだと、目に見える形で証明してみせましょう。
 聖女が本当に祈りを怠れば、どうなるのか?
 御自身の御体で、確認してみてください。

「聖女エリーナ、先に答えてやったのだぞ。先の問いに答えろ」
「気を抜いた自覚はございませんが、承知いたしました。明日からは更に、気持ちを込めて祈ります」
「…………気を抜いた自覚はない、か。非を認めぬものは、どうにも信用ならない。当分の間、監視をつけさせてもらうぞ」

 殿下は「当然拒否権はない」と続け、御自身の従者を呼んでアレコレ指示を出し始めました。
 監視、ですか。庇護から外したことは本人以外は把握できないので、影響はありませんね。

「聖女エリーナ。もう一つ、お前に理解させておこう」
「はい。なんでしょうか?」
「この国に聖女が誕生したのは、いつだ?」
「285年前、ですね。邪神討伐直後に誕生しました」

 邪神が死に際に呪いをばら撒き、それに対抗する存在として生まれたのが聖女。そう言い伝えられています。

「その時から常に、この国には聖女が存在している。聖女が不在になった事は、一瞬たりともないのだ」
「はい。そうですね」
「つまりだ。次の聖女は現聖女が死ぬ間際に、覚醒するようになっている。即ちお前は、我々とは異なり、代わりある存在なのだ」

 殿下は誇らしげに自分の体を見下ろし、幾分見下した目線を私へと注ぎます。

「改善が見られないようなら、近々次の聖女が誕生することになるかもしれない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。そこを肝に銘じておくのだぞ?」
「……畏まりました。殿下、それでは失礼致しますね」

 そうですか。そうなのですか。
 自分達が納得いく状況にならなければ、私を殺すのですね?

 分かりました。
 それならば、予定を少しばかり変更しなければなりませんね。

 殿下は――恐らく殿下達全員が、想像以上にねじ曲がっておられます。
 正しくご理解して頂けたら満足だったのですが、こんな方々でしたら、はい。国と国民の未来のために、更にお灸をすえなければなりません。

 庇護から外れた者は毎日じわじわと『ある変化』が起きるようになり、その日から6日後には完全なものとなります。

 当初は2~3日程度で止めようと思っていましたが、延長です。最後まで体験していただいて、理不尽を振り撒けばどうなるのかを理解していただきましょう。
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